着替える為に、隣町に行って。洋服を洗ってもらって。
しんりょうじょに戻って、寝て、起きたら。
耳が犬っぽく垂れて、くるんって丸まった尻尾が、生えてた。
・・・・・・。
・・・・・いやいやいや。
エイプリルフールだからって、これはないでしょ。
そう思って、触ったら。
本物だった。
触られた感じもするし、あったかいし。
自分の意思とは関係なく、ぱたぱた左右に動く尻尾も、
あったかかった。
思わず、だだーって走ってかまくらとバラックがある辺りまで
移動して。
冷静になって考えたけど、昨日浴びた光とか、街中で噂に
なってる不思議物体が浮かんでた話とか。
そういうのが原因としか考えられなかった。
これからどうなるんだろうって考えて、ちょっとため息が出て。
その時、一緒に光を浴びた安寿のことが気になった。
だって、鼻ちーんってしたら、桜の花びら出ちゃったし。
まともに昨日の光を見ちゃったから、わたしよりも影響が
強いんじゃってちょっと心配になって、慌ててしんりょうじょに
戻った。
扉を開けて、中に入ると診療所には…目がやたらとつりあがってる
上に、体が銀色のちっちゃい人が寝てる、ような気がしたけど。
見なかった事にした。
うん、気のせい。きっと気のせい。
昔、本で見た火星人みたいなにゅるにゅる動きそうな足が
いっぱい生えてる人もいた気がするけど、それも気のせい!
しんりょうじょの奥の方に行って、寝てる安寿に話しかけたけど、
ぐっすり寝てたみたいで、起きなかったから、ちょっとホッとした。
見える範囲には、変化はなかった。
飴を食べてたら、ぱたぱた揺れる尻尾をはいはいしてきた
赤ちゃんがぐいっと掴んでビックリさせられちゃったけど、可愛いし
急に泣いたりして、誰かにめいわくかけちゃうのも悪いから、
そのままにさせてた。
…泣き声で、さっき見なかった事にした人達が起きても困るし…。
……でも、宇宙人も、人って表現して、いいのかな。
そうするしかなさそうな気がするから、人って言ってるけど…。
ま、いいか…。
静かだったしんりょうじょに、誰かが走って来るみたいな足音が
聞こえてきたなぁって思ってたら、赤ちゃんは飽きたみたいで、
はいはいしながらどこかに歩いていっちゃった。
扉が急に開いて、りとるぐれいがーって叫ぶ女の人の声に
耳がきーんってなった。
機能まで、犬にならなくていいのに…!
痛い耳をフードの上から押さえて、女の人に近づいたら、何だか
アレックスに、似てた、ような。
・・・・・・あれー?おっかしいなぁ。気のせいかな。
双子のおねーさん?いもうと?
でも、そんな人いるって聞いた事ないし…。
そんなアレックスそっくりなおねーさんが外国語混じりに
話すのを聞いて、思わずトゥギャザーしようぜ、とか言いそうに
なったのは、内緒。
わたしが犬っぽくなってるから、おねーさんはオウってビックリ
してた。
そりゃ、そうだよねぇ。
わたしもビックリしたもの。
トモダチに似てるって言ったら、そのおねーさん、何だか何かが
引っかかったみたいな顔してた。
何がひっかかったんだろうって思いながら、話してたら、奥の
方から、誰かが起きたみたいな気配がした。
てっきり安寿が起きたと思って振り返ったら、体長が2メートル
位ありそうな、金色のおめめの虎さんがいた。
・・・・・・・もしかしなくても、安寿?
安寿なのって訊いたら、そうって言いたそうに鳴いたし、わたしを
見つけたら尻尾を猫みたいにピーンって立てて、こっち来てくれた
んだ。えへへ。
嬉しかったなー。
・・・おねーさんは、ビックリしてたけど。
それも、そうか。
わたしも安寿だって確証なかったら、ビックリして逃げてたかも。
おねーさんにトモダチって訊かれたから、今は虎になってるけど
ホントは人間で、恋人さんなんだよって紹介する。
そしたら、安寿が前足で鼻を隠すみたいに伏せちゃったんだよ。
…何か変な事、言ったっけ。
頭撫でてあげてたりしたら、おねーさんは体調悪くなっちゃった
みたいで、雑魚寝部屋で寝ていくって言ったから、手を振って
お見送り。
具合、良くなるといいな。
安寿が鼻を隠したままだったから、どしたのって顔をのぞき
こんだら、耳をべろってなめられちゃって、ビックリした。
あまがみって言うんだっけ。前歯で噛まれて恥ずかしいような
くすぐったいような。そんな気持ちになったよ。
尻尾も前足で挟んで、毛づくろいするみたいにかんだり、
歯でしごいたりしてくれたから、お礼に安寿の頭をいっぱい
両手で撫でてあげたんだ。
ふさふさでつやつやでふっかふかで気持ちよかったなぁ。
虎さんだからね、頭がいつもよりおっきいんだ。
なでるとごろごろってのどを鳴らしてくれたから、嬉しくて
いっぱいなでちゃった。えへへ。
尻尾を整え終わったから、ちゃんとお礼を言って。
安寿がいつも寝てるところに戻ろうって言いたそうに鳴いた
から、背中に乗せてもらったんだ。
のしのしって歩く、虎さんな安寿。
かっこよかったなぁ。
いつも寝てる場所に来たら、しゃがんでくれたから、降りて。
一緒に寝ていい?って訊いたら。
勿論、一緒に寝ようって言いたそうに目が笑って。
尻尾で体にくっついていいよっていいたそうに寄せてくれたんだ。
だから、いつもみたいにくっついた。
ふかふかでつやつやであったかい毛皮にすりすりしながら
寝たよ。
明日になったら、きっと夢だったのかなって思うかもしれないけど。
嬉しかった気持ちも、この感触も忘れないんだろうな。
忘れたくないから。
夢かもしれなくても、覚えてようって思ったよ。
えいぷりるふーるが見せてくれた、素敵な夢だもの。
