前の日に約束した、きょうにみかんの缶詰とか、色々入れた
トートバッグを診療所に届けた。
紙袋だと、破けちゃいそうだったから、丈夫そうなトートバッグにした。
特徴を伝えたから、後はきょう本人が取りに来てくれるのを
待つだけ。取りに来てくれたらいいな。
雪山に移動して、歌を歌っていたら、白羽さんに会った。
またけがをしてーっておばちゃんみたいに言ってたら、どうやら
けがをさせたのは、安寿、なんじゃないかって気がついた。
欠食児童って聞いて、浮かぶのも、どうなんだろう…。
でも、わたしがごめんって謝るのも違うと思ったから、謝らなかった。
心当たりがあるのかって言いたそうに見つめられたから、
何となく見当はついてる、って言うだけに留めておいた。
名前は言わなくてもいいかなってちょっと思ったから。
その後も街の中でけがさせられそうになったら、みたいな話で
盛り上がって、そろそろ帰るっていう白羽さんとじゃーねーって
分かれた後、診療所に行った。
診療所の扉のところで、安寿が立ってたから、ビックリして
近づいてたら、聞き覚えのある声が2つもして。
安寿にあんまり無理しちゃだめだよーって言ってから、心当たりの
ある人の名前を言ったら、当たってた。
…きょうとシロ、いつの間に知り合いになったんだろ。
安寿の声を聞いたら、きょうの様子がおかしくなった。
前にもちらっと話したことが、安寿が少なからず、影響してる
気がして。心配になって、手を握る。
安寿の冷たい手が、ぎゅうってきつく握り返すから。
それだけで、ちょっと泣きそうになった。
あの場所に、シロがいてくれて、良かった。
そうじゃなかったら、どうなってたか分からない。
シロには、前に安寿の特徴だけ、話してたから。
安寿の髪の色を見て、分かった、みたいだった。
安寿に知り合い?って訊かれて、シロは待ってた人で、ちょっと
前に再会して、さよならを伝えた事、を簡単に話した。
ホントは、もっと前に、話したかったけど。
わたしがもたもたしてて、先送りしたから、こんなタイミングに
なっちゃった。
ごめん。って口でも謝って、心の中でも、謝って。
安寿は、シロに何で置いていったって、訊いて、シロは、
他に好きな人が出来たからだって、答えた。
・・・・・・・うそだって、すぐに分かった。
安寿は、それを聞いて、そうって答えてから、出来る限りの
笑顔で笑って。
マナは俺が守るからって、言ってくれた。
ありがとうってお礼を言いたかったのに、口を開いたら、
泣きそうで。何も言えなかった。
ただただ、黙ってるしか出来なかった。
そんな状況の中、きょうは、吐きそうになるのを一生懸命こらえて、
安寿の名前を呼んで、大事なトモダチだから、また名前を呼んで
って。言ってた。
とてもとても強くて、優しい子だって、思った。
そんなきょうが、とっても眩しくて。
わたしは、きょうみたいになりたいって、思った。
きょうは、疲れたから寝るってバラックに入っていったけど、
きっと、泣くために、バラックに入ったような気がする。
手を繋いだままの安寿に促されて、診療所に入って。
中に安寿が入った後、精一杯笑って、シロにありがとうと
おやすみと、またねを伝えた。
仲良くね、って。笑ってくれた。
安寿が、わたしを守るって、言ってくれたけど。
わたしに、そんな嬉しい事を言って貰える価値は、
あるんだろうか。
