仕事が雑用ばっかで、やたらとこき使われて疲れた帰り道。

昨日も寄った教会に足を運んだ。

マリアさんにちと愚痴りたかったのもあるのかもしれん。


煙草をふかしながら、マリアさんの右目がないことと、俺が殴られた

せいで右の口端が切れてるのが同じだって気付いて、同じだなーと

何か嬉しくなってたら、俺と大して背が変わらんにーちゃんが

やってきた。


俺が誰も来ないと思ったもんで、ぶちぶちと独り言言ってたのを

聞いて、驚かせちまったけど、真面目そうないい奴だった。

家出したっつーから、うちに泊まるか?と話していると、また扉が

開いて、俺が逢いたかった奴の顔が見えた。


嬉しくて、名前呼んだのに、アイツは凄い勢いで扉を閉めて逃げて

いっちまった。

そのままにしておけなくて、さっきまで泊まるか?と言ってたにーちゃんに

金を渡して俺も追いかけた。

俺んちに泊まれなかったけど、ホテルかどっかに泊まれつったんだけど

泊まったんかな。ちと心配だ。

また会える時があるなら、きちんと謝らんと。

迷惑かけたことに違いはないからな。


前にうっかり迷い込んだ暗いところで、そうまの携帯に連絡したけど

留守電になってて、メッセージを吹き込んだ。

それから、しばらくして、メールが返ってきたけど、それを見て余計に

心配になって、また走って探した。


気付いたら裸足になってて、そうまから電話がかかってきたから、

慌ててとった。

走ってたせいで、息が乱れて喋れんのが、かなり情けない。

酒はやめるつもりだったけど、煙草もやめた方がいいかもしれん、と

ちらっと思った。


耳に、不安そうに俺かどうかを確かめる声が聞こえて、ホッとした。

今どこにいるかを訊いたけど、俺もどこにいるか分からないから、

どう説明したらいいか分からない、と聞いて、それもそうだ、と思わず

笑っちまった。


何だか、そうまがいそうな小屋っぽいのを見つけて、扉越しに

色々話した。


これ、日本の昔話みてぇじゃねぇか。


太陽をつかさどってる女神さんが洞窟を岩で塞いで篭城しちまう話。

あれに似てるなって思った。


裸踊りも酒盛りも出来ねぇが、俺との話を続けてやっと扉を

開けてくれたそうまが、扉の死角にいるとは思わんかったな。


俺を好きになってもいいかって言うそうま。


・・・馬鹿だよなぁ。

答えなんて決まってるっつーの。


でも、ちと不安になって、ボケ倒しで鈍感な俺でもいいのかって

訊いたら、鈍感でも、ボケ倒しでも俺がいいって言ってくれた。


うん。俺は、その言葉だけですげぇ幸せ。

走ったのとか、一日作業させられた疲れとか、一気にすっ飛んだ。


自分が好きな奴が、俺のこと好きになってくれるって

すげぇことだよな。


ありがとう、そうま。


恥ずかしくなったのか、帰ろうって言い出したそうまに俺が

どっちの家にって訊いたら、お互いの家にです!って顔を赤くして

叫ぶから、俺は笑っちまった。


腕掴んだまま引き摺るみたいに歩き出したそうまを、きちんと

家まで送る俺。


地下鉄で俺が爆弾発言した時以上にそうまはしゃべんなかったけど

そんでも幸せだからいいんだ。


そうま、本当にありがとう。