けいしに出て行け、と言われた。
わたしがキライで、うざくて、とにかく離れて欲しいみたいだった。
けいしの基準で、わたしは不合格、らしい。
言われたとおりに動くなって言ってから、ずっと見てて。
不合格、という判定が出たらしい。
お前には俺を飼えないって、また言われた。
キライでも何でもいいからそばにいさせてって、
いっしょうけんめいお願いした。
けいしは、ずっと頼むから離れてくれって言ってたけど、
ゆずらなくて。ゆずるつもりがなくて。
ごめんね、けいし。
がんこなんだ、わたし。
けいしのそばにいたいって決めちゃったから。
ここだけは何があってもゆずりたくないから、ゆずらないよ。
けいしがわたしの事信じられなくても。
キライでも、好きじゃなくても、愛してなくても。
それでもいいから、そばにいたいんだ。
ワガママでごめんね。
けいしはスポーツ新聞で読んだ、というカミソリを入れて手紙を
送ってきたり、マンションにある防犯カメラの前で手首切ったり
するくせに、数年後には結婚しましたって葉書を送ってくるんだろ
って言ってきた。
そんなことしないよ。
ただ嫌われるだけで、何も得しない事をしてどうするのさ。
葉書を送りたくても送れないよ。
けいしのそばいるんだもん。
「相変わらずけいしのそばにいます」って誰かに送ることは
あるかもしんないけどさ。
そんなことしないよって言ったら、そんなこと言う女は余計
信じられないって言われた。
いいんだ。信じてもらえなくても。
それでもそばにいさせてもらえるなら。
けいしを好きでいていいなら。
けいしに信じてもらえないからって、自分の意思を曲げるつもりは
全くないし、そんなことをしないのは事実だから。
けいしは俺と一緒にいたらだめだと言った。
『嫌われ松○の一生』に出てくる床屋さんみたいな男を。
本当に愛してくれる男を探せと言った。
悪いけど、その意見は速攻で却下させてもらった。
松子は、いっしょうけんめい塀の中で罪を償って、床屋さんと
一緒に生きていくために美容師の資格を取ったのに。
床屋さんは、一度も会いに来てくれなかった。
松子が出てきた時には再婚してて2人も子どもを作ってるような
男なんて。
最低だと思う。
そんな男はこの世にいっぱいいるけど。
全く興味がない。
そんな無責任な男より、ワガママ言ってばっかりなわたしを
何度も許してくれた、本当に疲れた、しんどいと言って
わたしを遠ざけようとしたけいしのそばにいたい。
もう本当に疲れたよ。
俺はまるで八女川みたいにへたれなんだよ。
けいしは、そう言った。
けいしは見た目はちょっと似てるけど、中身は全然違うよ。
八女川は、松子にお金持ってこさせた。
自分の小説、上手くいかないから、松子に八つ当たりした。
そんな自分が嫌で、松子の目の前で死んじゃった。
一緒にしちゃだめだよ。
へたれっていうのがどういうのか良く分からないけど…。
へたれでもいいじゃん。だめなの?
ただそばにいるのもだめなの?って訊いたら。
けいしはルールを決めよう、と言った。
お互い、たった1つだけ。
それ以外は守らなくてもいいけど、それだけは絶対に、死んでも
守らないといけないルール。
何がいい?何でもいいよ。
その代わり、その他のことは何をしても文句を言わない、言えない。
わたしは、他の人と、セックスしないっていうのをけいしに
お願いした。
それじゃあいまいすぎるから、きちんと決めてくれ、と言われたので。
いっしょうけんめい考えて、抱きつくまでは良くて。
キス以降のセックスにつながる性的接触は禁止、ということにした。
けいしは、分かった。守るよって約束してくれた。
わたしは何を守ればいい?って訊いたら。
死なないことだよ。自ら死なないこと。それだけだよ。
そう、返事があった。
なんにしても、死なないこと。
生きることをやめないこと。
それが、けいしの守って欲しいことだった。
わたしも守るって約束した。
・・・いいのかな。
わたしが守らないといけないの、そんなことで。
ずいぶん、わたしと差があるような・・・。
・・・まあ、いっか・・・。
守るってけいし言ったし、何でもいいって言ったのもけいし
だもんね・・・。
けいしは何にしてもお前嫌いだよ。うっぜぇよ。
他人のちんぽ触るのは生きがいなんだよ、畜生。って
忌々しそうにぶつぶつ呟いてた。
わたしはのほほんと笑ってそれでもけいし好きだよ。
生きがいうばってごめんねーって言った。
家に帰って、のんびりと庭とかお墓を散歩してたら
お堂の中で音がしたから、のぞいてみた。
けいしがマルマルとラムちゃんと一緒に寝てた。
・・・疲れたんだろうな、きっと。
わたしもくつを脱いで、着替えてから寝た。
けいし、そばにいさせてくれて、ありがとう。
