あきらの入院してる病院までおみまいにいった。
おみまいのついでにあきらがおみまいでもらったおみやげを
もらいに来いってはとさんの手紙に書いてあったから。
言われた時間よりもちょっと遅刻したけど、部屋に行ったんだ。
窓のそばにあるパイプいすに座って、あきらの匂いが変わってた
ことに気付いた。
おべんとやのおにーさんが吸ってたたばこのにおいがしたから
変えたの?って訊いたら、吸おうと思って持ってたたばこは
そうまに預けてあったので、それが全部シガレットチョコに変えて
あったんだって。
・・・そうま。なかなかやるね・・・。
わたしがおみまいでいつも吸ってるたばこを1カートン持って
行ったらよろこんでくれた。
ちなみに入手先はいつも捨てる予定のおべんとをもらうコンビニの
店長さんから。
他にも何か持ってくのあるか?って訊かれたから、それを
もらったんだ。
・・・あきらが言った通りにわたしが吸うって思われないといいんだ
けどな・・・。
それを渡して、いたずらで変えられたシガレットチョコ1カートンを
受け取った。あきらに昨日ロワと話したことを伝えようとしたら、
右手で「ちょっと待った」って言いたそうに手を出されて止められた。
昨日の夜、留守電を入れたのは何でか訊かれた。
手紙送ったっていうのをわざわざ電話で言う必要ないし、
書き忘れたことがあるなら、また手紙を送ればいいはずだ。
それに、あの電話は何かがおかしかった。
何があったんだ、って。
・・・うーん。何があったと言われても。
何もなかったんだよね。ただ、変な人にあっただけな訳で。
説明しようか迷ってから、何でないから気にしないでって
ごまかそうとしたら、お前うそついてるだろってあっさり
見抜かれた。
・・・ヘンな所でかんがするどいよねぇ、あきらって。
仕方ないから、白状して。どんな奴かって特徴訊かれたから
思い出せること、全部伝えた。
前にも同じようにおかしかったことあったろ、って言われて。
同じ奴か?って訊かれたけど。
全然違う人だって答えた。
背も、声も、ふんいきもちがった。
・・・今回の方が、明らかにヤバかった。
お前も何かじえいする道具持ったほうがいいぞって言われた
けど、そんなものを持つつもりはないからいらないって言った。
持った方がねらわれるかくりつが上がるってのもあるけど、
「道具」を持ったら使いたくなるのがニンゲンだから。
だから、いらないんだ。
あきらは、いらない理由を聞いて、そりゃそうだけど…って
言った後、こんな胸ぺチャリンのガキをおそって何を
どうこうしようっていうのかねぇって言った。
・・・・・・ほう。あきらがそれを言うか。
っていうか!胸がないとか余計なおせわだー!!
ほっといてくれ!!ってブチきれそうになるのをこらえて
おそう奴の気持ちなんか分かりたくないっての!って
言っといた。
どうせ胸ないよ!色気もないよっ!
ムカついたついでに一昨日けいしに公園で言われた
秋刀魚とそうまの方が可愛いって言われた事も言ったら
さすがにさんまよりは可愛いだろって呆れた感じで言ってた。
あきらもそうまが色気があってかわいいっていうのは
認めるらしい。ふむ。そこは皆意見が一致するんだねー。
そんな話もしたけど、ロワのことも伝えて。
電話の使い方が分かってないかもしれないから、もう1回
教えてやってくれってたのまれた。
うむ。がんばる。
あきらがたばこが吸いたくなったって言って、1階にいっしょに
エレベーターで降りて、受付の近くにあるきつえんじょに
向かってたらそうまがきた。
わーい。うわさをすればかげがさす、だね。
受付のおねーさんにだれかを呼び出してもらってるそうまの
となりに行ったら、そうまの目が何だかすっごく泣いた後
みたいにはれてるのが目に入ってどうかしたの?って
訊いたの。
そしたら、がんかに行きなさい、とかはちにさされたからねーって
言ってはぐらかしたの。
・・・ほう・・・。はぐらかしますか。
はぐらかしてもネタは上がってるのよ、そうま・・・。
あおいはちにさされるとそんなにはれるんだーって言ったら
あのれいせいなそうまがぶってふきだして、顔がどんどん
赤くなっていったの。
おおう。よそういじょうの反応。
・・・そうまはからかうとおもしろい、ということが発覚しました。
これからネタがあったらいじめようと思います。んふふ。
いっつもはぐらかすんだもん。おかえしだもんねっ!
そうまから青い鳥さんのにおいがしたんだもんねって言ったら
何そのどうぶつてききゅうかくって言って呆れてた。
めいにもけいさつけんなみだねって言われたって言ったら、
けいさつ犬もはだしできゃんきゃんほえながらにげだすって
そうまは言ってきつえんじょに逃げそうになった。
けいさつけんは元々はだしだよって言ったら、そうまは耳まで
赤くなってしるかぁっ!って怒鳴ってたの。
くふふ。すごく楽しいです。
そうまはツンデレでがんこだって言ったら、わたしの方が上だって
言ってそうまはみとめようとしなかった。
認めない時点でがんこでツンデレだってばー!
もー。
話してたら、そうまが会いに来た人がやっと来たみたいで
きつえんじょのいすから立ち上がったそうまはその人に
つうちょうとカードを顔にべしっとたたきつけてたの。
・・・うーん。八つ当たりされたね。
そうま怒ってるねぇってわたしが呟いたら、あきらは
気付いてなかったみたいでそうか?なんて言ってた。
・・・何でこういう時はにぶいんだろ。この人。
ロワ帰ってきても何かやらかしそうで、思わずはぁ、と
ためいきをついちゃったよ・・・。
通帳をわたしたらようじはすんだ、って感じでそうまは
こっちに手をふって帰っていった。
受付のおねーさんがぶつけられたそれ何ですかー?って
そうまにぶつけられたおにーさんに訊いて、そのつうちょうの
お金はあきらの手術代と入院費で、それをそうまが出すって
言ったからここにあきらが入院できたことを話してた。
それが何となく聞こえてきて、何だ、わたしの方ががんこも
ツンデレも上だって言ってたけど、全然自分の方が上じゃんって
呟いちゃったよ。
まったく。何でここの大人たちはすなおじゃないんだろう。
そうまがいなくなって、わたしが言いたくないことを
訊かれそうな気がしたから、まだ帰りたくないけど、この場から
はなれたくなって。
ロビーを何気なく見渡したら、じどうはんばいきが見えたから、
何か飲む?って言って席をはなれようとしたら。
お前こそどうしたよ。最近けいしとはごぶさたか?
やけにいらいらしてるみてぇだけど…って、言われた。
・・・・・・・何でこういう時だけ、勘いいんだろ。あきらって。
さいきん、けいしと話せてなくてさみしいって言ったら、
あいつにはあいつの都合もあるからしょうがないだろ。お前も
好きにやっとけって。思い悩む分時間のむだだって言って。
ちょっと間があって。
あきらに、お前、重いよって言われた。
・・・・・・分かってるよ。そんなの。
自覚してるって言ったら、お前の思考は重すぎる!
寂しいって思ってるならあいつにそう直接言え。
想いっていうのは相手がいる場所で言われるより、いない場所で
言われたほうがよっぽど重いんだよ!って。
お前はけいしに自由でいてくれって思うなら、お前も自由で
いなきゃいけねぇんだよ。
お前は寂しい、もっと話したいって言わないだろうが、思ってるだけで
お前もあいつも自由じゃねぇんだよって、言われた。
言ってもいいなら、とっくに言ってる。
言ってもいいのか分からないから、言えないんだよ。
それを言って嫌われるのが嫌で。
けいしが離れてくのが嫌で。
言えないんだよ。
あきらはそんなの言わなきゃ分からねぇじゃねぇかって
怒った。
大体お前のぐちはねっちょりべっちょりしすぎるんだよ!
ああ暗ぇ!って言われた。
・・・ひどーい・・・。
そこまで言わなくたっていいじゃないの・・・。
どうせそう思ってることじたいが重いんだから、言った方が
ちょっとは軽くなるだろ。
お前が心の底から寂しくないって思わない限り重いまんま
なんだよ、って。
・・・うーん。
言ってることも一理あるけど、ちょっと引っかかった。
あきらは言われる側だったら、どう思うんだろうって、気になって
訊いてみた。
あきらだったら?
寂しいから会いたいって、もっと話したいって言ってもらえたら
うれしい?って。
あきらは言葉につまってから、相手にもよるかも、って答えた。
たたみかけるみたいにして、相手にも、状況にも、その相手との
付き合いの長さとかにもよるでしょ?
こうしてあきらにぐちってるよりも「重い」って感じる人もいるかも
しれないし、「うれしい」って思う人もいるかもしれないし。
って言った。
だから、言えないんだ。
けいしがどっちなのか分からないから。
そのどっちでもないかもしれないけど。
結果がどう出るか分からないのに、自分の気持ちを伝えるのは
今の私には無理だった。
あきらはうなりながら、いっしょうけんめい考えてくれた。
その姿がちょっと可愛くて、思わず笑ったらにらまれちゃった。
ごめん。真剣に悩んでくれてるのに笑って、って謝ったら
ゆるしてくれたみたいで、ちょっとだけ安心した。
あきらはお前なぁって呟いてから、でもお前の言う通りでも
あるんだよなって言って。
しばらく1人で色々ブツブツ言ってたんだけど、まどろっこしく
なったみたい。
言いに行くぞ!って言い出した。
その時、はっちゃんが来たの。
病院の中から出てきたから、だれかのおみまいに来てたの
かもしれない。
えーと、あきら?って。あれマナちゃんもだ。こんばんはって
手を振ってくれたの。
あ、青いはちさんだって言ってわたしが手を振ったら、はっちゃんは
あれ、そんなことがすでにマナちゃんにまではきゅうしていた
とは…。はーい、ごうまんでさんまんな自称あおい鳥でーすって
言って笑ったの。
うーん。はっちゃん、惜しい。
わたしが言ったのは鳥じゃなくてはちさんなの。と思ってたら。
名前を呼ばれたあきらがどこのどいつだおれの名前を呼ぶのは
ってほえて。私のくびねっこをつかんでお前がいなきゃ
話にならないんだから行くぞ!ってどこかにつれていこうと
したの。
・・・けいしに会えるならどこにでもついてくけど・・・。
あきら、どこにいるか分かってるのかな・・・。
はっちゃんは、はっちゃんが来たから場所をうつそうとしてると
思ったみたいで、すぐに帰るからここにいていいよって言って
一歩さがったの。
そんなはっちゃんにさっきそうまがいた事と、目がはれてた事を
はちにさされたって言ったから、さっきわたしが青いはちだって
言ったんだよーってあきらにえりくびをつかまれて、猫みたいに
ぶらーんってなったじょうたいで説明したの。
はっちゃんは、そうまさんがいたんだ。はちか…ずいぶんな
例えだなあってつぶやいてた。
うん。わたしもそう思う。
そんな感じで話してたら、このまま病院を出ても、けいしが
どこにいるか分からない事に気付いたあきらが固まってた。
どこ行きゃアイツに会えるんだってつぶやいたあとに。
・・・分からないまま、どこかに行こうとしてたんだ・・・。
あきら、いいオチをありがとう・・・。
はっちゃんがあきらって…あきらって…って笑いながら
あきらの肩をたたいてたの。
うん。わたしも同じ立場だったらそうする。
首つかまれたまま、ちょうこくの森に行くと思うのーって
言ったら、ばかやろう!あんなさむいところにだれが行くか!って
怒った。
・・・ちえー。そんなにおこらなくてもいいじゃないの。
そうまにそうまががんこでツンデレだってはっちゃんに言ったのが
わたしだってバレませんように。
はっちゃんの心のメモに、わたしもがんこでツンデレだって
書かれたらしい。
私はちがう!って言いたかったけど、認めないのもがんこ
だって言われるので。
ツンデレだけは、みとめようと思います。
1,000歩ゆずって、そこだけは認めようと思います。
この後、あきらがかせんじきでのにのまいになりそうに
なったり、はっちゃんが意外とどSだってことが分かったり、
はっちゃんがすごいんだなーって思うこともあったの。
おさえるのと、がまんするのは良くないんだって。
その代わりに、言葉は良くないけど、こんなに
ほれさせられちゃったよこんにゃろう!って相手をほめると
いいんだって。
はっちゃんがわたしだったら、すごくじまんするんだって。
何よりも護りたい大事な人がけいしになったら、じぶんを
守りたいって思わなくなるからって、はっちゃん言ったの。
だれかにじまんするのかなって思ったから、前にあきらに
だれでもじまんすると良かったねって思ってくれる人も
いるかもしれないけど、その逆もあるかもしれないから
気をつけろって忠告してもらった事、話したの。
そしたら、はっちゃんはだれか、じゃなくて自分にじまん
するんだよ、って。こんなにけいしが好きなじぶんはじぶん
だって好きなはずでしょって教えてくれたの。
そっかー。そう考えれば良かったんだね。
会えなくてさみしいよーって思うんじゃなくて。
こんなにけいしの事すきになったじぶんってすごい
でしょーってじぶんにじまんすれば良かったんだね。
あとね、「愛」は返してもらおうと思っちゃだめなんだって。
はっちゃんが例えで、あきらが持ってたクッションをわたしに
移動させて、コレだけ渡したんだから、同じだけ返してくださいって
相手に言っても、相手が困るかもしれない。
わたしみたいに、2倍でも3倍でも返せる人もいれば、
そうじゃない人もいる。
だから、自分なりのクッションを返す、んじゃないかなって
言いながら、わたしに渡したクッションをあきらに返したの。
愛は与えるものであって、もらうものでもうばうものでも
ないと思うから、「好き」って気持ちを大事にしすぎて、
相手を見失わないようにね、って言ってくれたの。
・・・自分では気付いてなかっただけで、そうなってたんだね。きっと。
見失っちゃいそうになったら、周りを見渡す事。
自分を心配してくれる人がいること忘れない事。
鏡を見て、自分が今、どんな顔をしてるのか確認する事。
それが、大事なんだって。
忘れそうになったら、鏡を見ることにするね。
あきらが熱くなりすぎて、はっちゃんが触るなって言われたから
代わりに右肩だったかな…にがぶーってかみついたのは
ビックリしたけど。
はっちゃんは手を振って帰っていったの。
ありがとう。はっちゃん。
はっちゃんがかんだところから血が出てたから、しょうどくしながら
熱くなりすぎたあきらに、ちょっとおせっきょうしたの。
あきらはこぶしで分かる情って言うのもあるんだよって
言ったけど、この前ユウキさんがけがしたのは一方的すぎて
かわいそうでしょ!って。
ころさなかったとしても、そうやってなぐられたりしたココロの
きずは、なかなか治らないから、って。
あきらはそれで伝わるかもしれないけど、そうじゃない人も
いるんだから、なぐりたい位頭にきたとしても、相手を良く見て
そういう行動をしても大丈夫だって思うまでは手を出さないように
してって、お願いした。
あきらは、分かってるけど、自分でも自分をおさえられない
ときがあって。持病みたいなものだってあきらめかけてたけど
わたしがそう言うならかいぜんしてみるって、言った。
あきらが明日、こまくのしゅじゅつをすることを、今日知った。
一昨日手紙送ってくれた時に言ってくれれば、何か用意
出来たかもしれないのに。
そういう事は今度から早く言ってよね。
あきらが部屋に帰ろうとしてたから、そろそろ家に帰ろうかなって
思ってたの。
そしたら、なぁマナ、今からちょうこくの森に帰るのか?もう
朝なんだから、俺のベッドにこっそり入っていけよって言ってくれた。
うん、いいけどって言ったら、あきらはにパッて顔をかがやかせて
うれしそうに笑ったの。
・・・・・・この人もツンデレだよね・・・・・・。ぜったい。
朝食も上手くやればだいじょうぶって言ったの。
・・・うーん。あきらも大分けいしみたいになってきたね・・・。
病院のご飯、けっこう好きなんだって言ったら、あきらに
変わってるな、お前って言われた。
あきらは自分で作ったご飯の方が何倍も美味しくて好きなんだって。
・・・そりゃ、ご飯作るの上手ければ、そうでしょうよ・・・。
ご飯、美味しく作れるようになりたいな・・・。
あきらの作ったご飯食べた事ないから食べてみたいって
言ったら、ちゅうぼうさえあれば、作ってくれるんだって。
やった、やった!
けいしもはっちゃんもロワもそうまも、めいもりゅーごも。
トモダチいーっぱい呼んで一緒に食べたい!
先にベッドに入ってねたら、はじっこで寝てたはずなのに、
じゃまだったみたいで、あきらのおもーいうでが乗ってたの。
・・・おかげで、軽くうなされた・・・。
もー!わたしはまくらじゃないんだからねっ!!
