この書簡は、丁寧な筆跡で書かれている。自分の名前も藤田誠之進、宛名に大久保要様と書き、上等な用紙を用いている。大久保要(1798~1859)は土浦藩士で藩主土屋寅直(ともなお)の片腕として藩政改革で活躍し、水戸藩の諸士とも交際を持っていた。目付役、町奉行、藩校郁文館の館頭をつとめ、安政五年水戸藩への密勅降下(戊午(ぼご)の密勅)運動に参画し禁固となった尊攘派志士である。東湖は1806生まれであるから、八歳年上になる。東湖にとって、強い信頼関係を築いていた人物であった。
書簡の書き出しは、「御細書拝見旧冬・・・と時候の挨拶に始まり、・・早々乱筆如此」と結んでいる。最後に分几下と相手に対する敬意を表す脇付も添えている。内容について、これからしっかり解読したい書簡である。