感想を書くのが遅くなりましたが、ご縁あり生で観劇することができましたので少々、現段階での人事的なことにも触れつつ個人的な感想を。



『王家に捧ぐ歌』
御園座は音響がよいのでしょうか、数回しか行ったことがないのでわからないのですが、まず冒頭のエチオピアメンバーの美しい歌声に鳥肌が立ちました。
娘役勢はかなり歌の上手いメンバーを揃えていていたこともあるからか、終始圧倒的なコーラス力にやられていました。
白妙なつ、乙咲いつき、七星美妃、星咲希、都優奈 あ、これ名前見ただけで歌うまいってなるメンバーじゃん とパンフレットを見た段階で思いましたが、さすがでしたね。
エチオピア側に歌うまい娘役を総動員したのか?とすら思いました。

そして、その美しいコーラスの中にやってくる礼真琴、本当に歌が上手いんですよね。何を今更と、お思いのことと存じますが。とても上手で感動するのですよ。
音程を正しく上歌い上げる力も勿論あるんですけど、歌に感情を込める力もあるって役にあった声を出す力もある。
私の中では最強に近い存在です、完璧な歌い手ではなかったとしても、私はすごく上手いと思う、つまりそれってすごく好きだと言うことです。
アイーダを演じた舞空瞳さんについても、決して歌が素晴らしく上手なタイプではなく、得意技はダンスだと思うのですが、難易度高い楽曲の数々を歌いこなしていて「根性」を感じました。
一作づつ、着実に成長している というのはプロに対して失礼な表現になるのかもしれませんが、その姿が感動を与えてくれるのも事実。

個人的な思いですが、この二人は「芝居」をするより「歌芝居」で力を発揮するタイプなのかなと思います。
礼真琴×舞空瞳最強説を唱える私ですが、二人とも「歌やダンス」で表現する力がものすごく高いと感じます。
すなわち圧倒的ミュージカル向きの二人、ストレートプレイよりも断然海外ミュージカルを見たい二人です。(ちなみに、この二人の名シーンは?と問われると、私はロミオとジュリエット天国のデュエットダンスを推します。)

そして、王家に捧ぐ歌のもう一人のメインキャストであるアムネリス様。
有沙瞳さんは本当に芝居も良ければ歌芝居も素晴らしい、感情に訴えかける歌を歌えることが強みの人だなと感じました。
パレードの並びで礼さんの隣にいた時は驚きましたが、まあ順当だよね…と思わせる存在感。
彼女も音だけで判断すれば正確な音を出していないこともあるのですが、ミュージカル作品において正確な音を正確なピッチで出すことが必要不可欠かと問われると、私はノーと思うタイプなので有沙瞳さんは本当に「素晴らしく歌が上手い役者」だと感じます。
絶対音感をもっている人は気になったりもするのでしょうが、残念ながらそのようなものを持ち合わせていないので、本当に有紗さんの歌はずっと聞いていたいですね。

この3人が素晴らしいことが本作の成功の条件だと思うのですが、他のメンバーの存在が不必要なわけではなく他のメンバーも素晴らしかった。

【悠真倫:ファラオ】
今までのファラオの箙かおるさんよりも、温かみのあるファラオだなと感じました。一幕終わりのラダメスの訴えに対して「お前の思いに賭けよう」と言った時の熱さ、王族が部屋に籠る前のラダメスの訴えに対して「どうした?」と問いかける優しさ、箙さんのファラオが絶対的な王であるなら悠真倫さんのファラオは人間界の神、圧倒的な存在感と、そこに存在する優しさが、ファラオ暗殺のショッキングさをより引き立てたと感じさせられました。

【輝咲玲央:アモナスロ】
クセの強い男役を本当に上手に演じられていて、このも芸達者としか言えない存在感。星組にこのままいて欲しい存在でありながら、この才能を宝塚の財産として残していく道もあるのかなと感じました。しかし黒燕尾を見ていても、やはり男役としてまだまだ現役…星組の後輩たちに背中を見せていっていただきたい所存。

【ひろ香祐:カマンテ】
エチオピア戦士として極美、碧海の二人を占めるよい存在感でした。フィナーレの歌手選抜メンバーに出てきたときは驚きました。天寿さんのポジションだと思っていたのですが、これも今思えば代替わりの予兆だったのでしょうか。
礼真琴政権になってから、より目立つポジションにいるようになったひろ香さんですが、やはり技術は裏切らないということを彼女を見ていると感じます。今回のメイクも凄く似合っていてカッコイイなと感じましたし、フィナーレで見せてくれる人柄の良さがにじみ出る笑顔に心惹かれます。


【天寿光希:ネセル】
今回は神官長を務めたわけですが、セリフは少なくとも場面をしっかりとした重厚感で締めている姿は「流石」の言葉に尽きます。先日退団発表がありましたが、輝咲さんと同じく後輩に男役の何たるかを背中でそして言葉で語っていく存在だと思っていたので、しばらくショックは収まりませんでしたが「退団」は、すべてのタカラジェンヌに等しく訪れるもの…次回作での活躍を願うばかりです。

【天華えま:ケペル】
素晴らしい その言葉に尽きる役作りでした。目線の一つ一つがケペルとして生きていて親友のラダメスを思う気持ちが、セリフがなくても伝わってくる。凱旋のダンスで0番で踊っていた姿もさすがでしたね、後ろに希沙薫・天飛華音をおいても見劣りしない存在感は流石だと感じました。
フィナーレでもセンターを務め、階段降りも男役2番手のポジション。ウバルドに選ばれたのは極美慎ですが、俗に言う「抜かされた」感はなく配慮されている印象です。
しかしバウホール主演も極美慎に決まりました、同期の暁千星の組替…同期のあやおうかの退団、彼女に吹く風は少々強いものになっているように思いますが、これを受けて今後彼女はどんな道を歩んでいくのか、とても気になる存在です。願わくば、長く星組にいて欲しいと思います。

【極美慎:ウバルド】
そしてウバルドに抜擢された極美慎ですが、とにかく頑張っていたというのが印象。その等身バランスから舞空さんの兄であるのが納得しかないのですが、この兄妹本当に本作では「頑張っていた」印象。それが役作りにも反映されて「必死に生きている」ように感じられたのも、なんとも面白いなあと感じました。とても失礼なことを承知で言うのですが、今の星組の路線組の中では技術的に足りない部分を感じることもある彼女。
その殻を、これからどんどん破っていって欲しいですし、そんな彼女だからこそ出せる魅力というものがあるのも事実。高い技術をもった人が魅力的なのは当然ですが、そうでない人が出せる魅力があるのもまた周知の事実。次回作、そしてバウホール公演を経て彼女がどうなるか楽しみです。


【碧海さりお:サウフェ】
ばっちりフィナーレ階段降りに入ってきていますが納得の存在感。とにかく彼女もダンスが上手くセリフが明瞭で芝居心がある。歌についても何ら問題がなく総合的に見て非常に高スキル。1学年上の極見とも1学年下の天飛とも違うカラーで、若手の組力をグングンあげてくれる存在なのだろうなと思っています。

【天飛華音:メルレカ】
実は、彼女もポジション的には抜擢ですよね?というか、外箱ではことごとく抜擢を受けている印象。そしてまた、それに対して大ヒットホームランとはいかずとも確実に答えている印象を受けます。ダンスは非の打ち所がない、歌も歌える、彼女の弱点ってどこなの と思った時に「引き算の芝居」なのかなと個人的に感じています。良くも悪くも「与えられた出番をものにする!」という意思が見えている。それってものすごく大切なことで、若かりし頃の礼真琴に通ずるものを感じるのですが、気づけば彼女も新人公演では長の期…今回は同期の咲城が主演となるため、彼女にとって別の観点からの学びになるのではとこれまた楽しみです。

【都優奈】
エトワールおめでとう!!!!!!実は彼女のエトワールを心待ちにしていました、さすがの迫力そして声が美しい。彼女おそらく緊張していたことでしょう、公演によって精度が異なるように感じました。次は本公演のエトワールを是非務めていただきたい。

【二條華・瑠璃花夏】
スゴツヨ女官二人組、二人とも高スキルの娘役さんで、エチオピア側に奪われた歌唱力を支えていましたね。
華ちゃんは可愛い可愛いと思っていましたが、実はもう新公卒業済み星組の娘役らしい、思い切りのよさが感じられる、まさに縁の下の力持ち。
そして柳生忍法帳で一気にその名をあげたであろう、ちなちゃん。小さな体からは信じられないほどのパワーを秘めていて、今回は日替わりセリフのコーナーも担っていました。これから、どんどん出番も増えてくるのでしょうか、増やして欲しい存在です。

星組半分?そう思えないほどのパワフルな作品でした、ポスターや衣装が斬新すぎて「どうなるのか」との声が大きかったですが、作品の完成度の高さで満足させてくれましたね。
未知のウイルスに世界が混乱し、この公演もストップしたかと思えばロシアとウクライナの問題が勃発。奇しくも乱世に一石を投じるような作品になってしまいましたが礼さんの言うように
いつかこの作品を見て『この時は大変だったね』と笑える日が来ればよいなと思うばかりです。