お肉券

忘れられたことかもしれないから、書いておこう。

コロナの感染者が日本でも確認され、水際対策の失敗と、ワクチンどころかマスクの確保すらままならない状態に、国民が焦り始めた頃。

安倍政権下で、与党議員が集まって最初に議論されたこと。

「お肉券を配布して、国民の体力を回復するとともに、食肉業界の流通を増やそう」

という、トンデモ経済政策だった。感染拡大予防より最初に議論されたのが、経済政策なのだ。

死ぬかもしれないのに、銭勘定していたのである。(平和ボケって、そういうこと?)

ネトウヨをはじめ、リアリストを気取る人たちがしばしば口にするのが、こうした、「それでも経済を回さないといけない」という80年代並みの経済至上主義である。

一つの考え方として、正解だろう。少なくとも、我が国は資本主義国家であり、経済活動を否定しては成り立たない。

ただ問題は、その方法ではない。優先順位でもない。ましてや道義性(金勘定に思想など必要ない)ですらない。

単純に実績である。

日本は経済が低迷している。特にここ二十年で、アメリカが4倍、中国が三倍にGDPが伸びているのに、日本は0である。

つまり二十年前からある定番のお菓子が、三つか四つ買えるようになっているのに、日本人は一つだけなのだ。

経済成長しないとなぜいけないのか。無理に成長しなくても、堅実に成長すればいいではないか。そう思ったら、大間違い。資本主義はそもそも、成長を前提としている(去年よりたくさん儲けるシステム)が維持されていないと、損失が出ていることになる。どんなにがんばっても、どんどん貧しくなっていくシステムが、資本主義なのだ。

つまり三十年から二十年の間、どんどん日本は貧乏になってきた。

この実績は揺るぎない事実である。現実を見ればどうだろう。海外からたくさんの観光客がきているが、なんのことはない。

安いから、来ているのだ。保守的な人が夢見がちな日本がいい国で、その文化を知りたいと来ているというのは、真っ赤な嘘。

クフ王のピラビッドや秦の始皇帝の兵馬用なみに、スケールの大きな仁徳天皇陵があるというのに、そこに新幹線新大阪駅から御堂筋線で一本なのに、観光客はほとんど増加していない。日本の文化といいながら、興味を持たれていないことは事実だろう。これも現実である。

リアリストという人たちが、しばしば滑稽なのは、こうした現実から目を背けていることだ。どこがリアルを見つけているのだろうか。

そして、経済を人命よりも最優先にしてきた癖に、実績がこれなのだ。これに目を瞑るのがリアリストというのは、失笑ものである。

リアルはいつも目の前にある。国家百年の大計など、くそくらえだ。百年前といえば、関東大震災の翌年である。

震災後に発布された、国民精神作興ニ関スル詔書では、

「産を治め出でては一已の利害に偏せずして、カを公益世務に竭(つく)し、以て国家の興隆と民族の安栄社会の福祉とを図るべし。」

とある。

与党の裏金事件や、統一教会の支援による保身が許されて、一己の利害に偏していないと、どうして言えるのか。

 

国家の興隆と民族の安栄、社会福祉とを図るべし(国が栄え、国民生活の安定と、福祉を実行せよ)というのが、当時の陛下のお言葉だとするなら、百年経って、このザマな政権など、逆賊レベルではないか。