卒業/My Hair is Bad

作詞:椎木友仁

作曲:椎木友仁

編曲:My Hair is Bad

2016/05/11

 

 

 

初めての恋人と別れたあと一度だけ会ったことがある。 

確か表参道駅で待ち合わせて、帰りは渋谷駅前で解散した。 

 

日付や場所の名前が歌詞の中に入っているとなんとなく想像しづらくて、いつも私は謙遜してしまいがちなんだけど、そんな思い出がありつつ……この曲を聴くといつでもあの日の渋谷駅に戻れるような感覚になる。 

 

最初に書き残したいなと思うくらい、大切な曲です。

 

 

 

 

 

「ai」の韻踏みが最高

 

    

してあげられることいくつもない

しいてあげるなら腕枕くらい

無理に背伸び かっこつけたって

あんまり気づいてくれない

そんな君には悪気がない

でも僕にはまるで余裕がない

僕をわかってくれない

君をわかってあげたい

 

まずは、リズムも韻もいいのにストーリーができてるってどんな魔法なんだと最初思いました。

「君をわかってあげたい」で全人類が胸を打たれたことと思います。

わかってもらえなくていいから、君をわかりたいって切ないなって思って。でもきっと多くの人が思ったことあるんじゃないかな。

思い返せば私も思っていたような気がします。……というか、できれば私のことなんか分からないなら分からないままでいいから、あなたが思っていることを私が全部わかってあげたいとすら考えていたかもしれない。そして、それすらも気づかないでいてほしいと。かなりこじらせていたかもしれませんおばけくん

 

 

 

最初と最後の対比になっている表現がすてき

 

 

「すてき」なんてあまりにも残酷な言葉だけど、それ以上の言葉はないくらいにすてきな表現だ……。

付き合っていた頃とは反対の電車に乗っている自分、隣には君がいない。初めの表現があるから、最後が余計に切ない。

 

    

(1)渋谷駅前は今日もうるさい

なかなか二人になれない

 

(2)渋谷駅前は今日もうるさい

なかなか一人になれない

 

「二人になれない」「一人になれない」からこそ、前のフレーズの「渋谷駅前は今日もうるさい」が、同じ言葉なのに違った雰囲気に聞こえる気がします。

二人になりたいときの渋谷駅前のノイズはきっと自分たちの耳には遠く、別世界のように聞こえているんじゃないかな、と思うし、一人になりたいときの渋谷駅前のノイズは、耳が痛いくらい近く、一人で居るのに一人になれない、煩わしいものとして耳を掠めているんじゃないか、と。

周りには誰かと会話をしている人たちばかりでうるさくて、孤立感はきっとあると思うんですが、それでも「一人になれない」と歌うのは、別れを通して自分の心の乱雑さを表しているんじゃないかなと解釈します。

 

 

 

ド直球ストレートの「君が好きだった」

 

    

君の心が嫌だった

僕は心が痛かった

でも でも

君が好きだった

 

なんでこんなに切ないんだ! と言わんばかりの表現でした。泣きました。

お互いにお互いじゃなくてもいい理由はいくらでも見つかるけど、やっぱり好きだっていう……ド直球な「好き」が効くんですよね。

ただ、それでもどうやってもこの曲は失恋ソングなので。「好きだった」になっていることでもう戻れないことを予感させているし、このアンバランスさというか、矛盾が、胸を焦がす要因なんだろうなと思います。

 

 

 

”ふたり”

 

My Hair is Badの曲、いつも「ふたり」っていう表現ずるいなと思います。

 

    

恋人でも友でもない

二人 からの卒業

 

一番では男性目線で「友達に戻ろう」

二番では女性目線で「恋人に戻ろう」

お互いの想いがすれ違っていたけれど、どんな形でも「好き」だったし、会える関係でいたかった。

でも、これからは違う。

恋人に戻ることはないし、友達に戻ることもない。

自分たちではない周りから、「あのふたり」とカテゴライズされていた、この「ふたり」を卒業しよう。もう会うことはない。

 

ふたり、って誰もが言われたことあると思うんですよね。

友人とか兄弟とか恋人とか。

「もう会わない」という言葉を、「二人からの卒業」と表現するのはすごすぎて、なんというか本当にすごい……。笑

 

 

 

 

 

私はこの曲を高校生の頃に知って、なんとなくリズムやメロディーも気に入っていて好きだったんですが、大学生になって、恋人との別れを知った後、なんとなく懐かしさで偶然聴いたとき、歌詞が素敵すぎてもう一度好きになりました。

 

 

待ち合わせ時間より遅れて登場した元恋人は相変わらずで、私は諦観と高揚した気持ちが入り混じった変な温度を身に纏っていて。

あの日、帰りの渋谷駅前で抱きしめられたとき「あ、今まで付き合ってきた彼とは違うかも」と感じました。

「地元から東京に出てきて、自分を安く売らないで欲しい」とよく言っていたあなたが、今、この瞬間私を安くしてる。って刹那に思ってしまって、「ごめん、今日は最後に会うために来ただけ」と咄嗟に口をついてでました。

 

彼とのお付き合いは、恋愛経験が少なかった私には大人な恋愛すぎて、もちろん依存していたし別れたあともずっと彼のことが好きで、たくさん泣きました。

占いにも行ったし神社にも行ったし、知恵袋に何十件も相談して(その節はすみません赤ちゃんぴえん)、Twitter(X)のアカウントも増えました。笑

私とあの人の人生はもう二度と交わることはないけれど、あの日会ってよかったな、と私は思っています。

 

当時数年間は「最新も最強も私であってほしい、私以外で二度と幸せになるな! 愛してる!!!」とまでツイートしたというのに(もちろん独り言ですよ。笑)

今は、どこかで幸せにやっててくれたらいいな〜と思えるようになりました。

多分、あの日があったから。あなたのこと呪わずに済んでよかった。

 

そんなこんなでMy Hair is Badさんの卒業は、自分自身の暗黒の曲にはならずに済み、自分の若さ故の恋情を思い出す切なさも混じった大切な曲です。

 

今夜は聴いて寝ようかな。

私も大人になったよ、ごめんね、ありがとう。

 

卒業/My Hair is Bad(Apple Music)

 

mumi!