電波操作には二種類の声が存在する。一つははっきりと聞こえる声であり、もう一つは内なる声のように聞こえる声である。

 

 はっきりと聞こえる声は耳から聞いているように聞こえる。実際に、ほとんど違いはないが、目の前に人がいない状態で声だけが聞こえる。また耳を塞いでも全く同じように聞こえるため、その声は物理的に耳を通して聞いていない。

 

 僕が最初にこの工作を受けた時は、その声の相手が誰かも分かった。つまり、知っている人の声であり、彼らが目の前にいないだけでなく、周りにもいないことも知っていた。まだ確実にこの原理を理解しているわけではないが、音波をそのまま電波の周波数に変えていると考えている。その電波が耳を通さずに、そのまま脳内に届いている。

 

 FFR(周波数対応反応)という周波数があり、人間が耳から音波を聞くと、それに対応する電波が脳内で発生する。実はその音波と電波の周波数特性は極めて似ており、多少、FFRの電波の方が簡略化されているとは言え、ほぼ同じような長波で構成されている。つまり、音波の特性に合わせて電波の周波数を作れば、脳内にそのまま聞こえる可能性がある。

 

 一方で、違う可能性も十分にある。工作員が誰かの話を聞いており、その聞いた話が脳内の電波の周波数として対象者に送られる。それでも同じように聞こえる可能性が高い。ただし、この際において発生するFFR周波数は、基本的にその元になる音波の周波数に近似しており、この前に書いた電波操作と比べて大きな違いはない。二つの方法論の差はどのような形で音波を電波に直すかという点だけである。

 

 FFRは元の音波の周波数よりも単純化されるが、ほぼ似たような周波数特性を持っている。人間の声を前提に考えると400-5000ヘルツくらいの周波数で良く、それだけで十分に音を認識できる。そういう意味では、超長波というよりは長波帯の中に含まれる周波数である。ちなみに、ハイパスフィルターを使えば、この部分だけの周波数を抜き出すことも出来る。つまり、超長波部分の周波数を全て消し、音声が変換された電波だけを送信することも出来る。

 

 このはっきりと聞こえる声は洗脳に有効である。ただし、対象者がその声を何らかの偉大な存在と認識する必要がある。僕にはこの工作は効かなかったが、それは声の主が誰か分かったからだけではなく、そもそも、この工作が追い込まれるまでにずっとスパイから逃げていたからである。それまでに一年以上も激しい工作を受けていたために、突然聞こえた声が神の声だと思う余地は全くなかった。それは何らかの技術を使った工作以上のものではなかった。

 

 一方で、神の声だと信じると、その言うがままに行動する人たちが出てくる。それは悪魔の声でも同じである。絶望の中で悪魔の声に従う人たちは存在する。もちろん、絶望という感情自体も電波操作で作れる。これらの電波操作の結果として殺人事件が多数起こっている。このようにはっきりと聞こえる声は洗脳において重要なツールになっている。