日銀の話を書いてきましたが、日銀の今回の緊急対策はもっと評価されても良いんじゃないかと思います。まず、金融システムの維持のために、地震の翌週にはマーケットに過去最大規模の資金供給を行っており、次に、震災地域の金融システム維持のために、ファシリティの供給を行っています。


そして、現在の金融緩和を維持しながら、必要であれば追加的な金融緩和も考慮しているという点では、うまく対応しているような気がします。


4月の政策会合では震災地域の金融機関に対して、貸出の供給も発表されました。日銀はそこまでやるんだと、少し感心しました。前に震災の金融政策の話を書いたときに、金融政策以上のものが必要で、金融庁・財務省が何かをしなければならないという話を書きました。


その時の話の流れというのは、被災者が金融機関から預金を下ろすというのは、それは日銀のファシリティのサポートを受けながら、最終的には国債等の優良資産を売却することによって、金融機関は預金の引き出しに伴う現金を用意することなります。


要するに、金融機関では預金が減少するということと、と同時、優良資産が減少するということが起きます。


これが続くと、より劣化した債券ばかり残っていくのですが、更に悪いことに、震災下においては、金融機関が損失引き当てをすると自己資本が目減りし、バランスシートが悪化します。一部は金利払いも止まっているので、本当に不良債権が増えて行きます。一方で優良債権を現金化してしまうと、金融機関はスプレッドすら痛めてしまうことになります。


構造的にはバンクランと同じなんですが、バンクランは信用供与をすることによって、一旦は落ち着きます。つまり、ファシリティの供給の話があれば、一旦は落ち着きます。ところが、今回の場合は、被災者は生活の必要上から預金を下ろしたり、預金を移したりする必要があるので、信用供与では預金の引き出しが止まるわけではありません。


そこで日銀がやったのが貸出の供給です。構造的には、預金の減少があり、それを優良資産売却で埋め合わせするのではなく、日銀からお金を借りてくることで埋め合わせをするということです。そうすると、被災金融機関のバランスシートの更なる悪化が一部食い止めることが出来ます。


こういう政策方法があると思わなかったですが、良く考えられていると思います。ただし、これは長期的に継続可能な政策ではないので、どこかで中止する必要があり、今のところは一年間という期限付きの政策なんだと思います。一年後に急に止めるというのも難しいとは思いますが。


それと、日銀の自己資本増強の話が出てきているので、日銀自体の健全性を維持することも考えているということなんでしょう。これには深い意味もあるのかもしれませんが、国会での答弁は、将来の政策への手当てではないということだそうです。確かに、いろんな政策をやっているので、損失の可能性を見ることは悪いことではないんでしょう。


いずれにせよ、今回の緊急対策に関しては、地震以降2ヶ月間、日銀はしっかりした政策を実施しているような気がします。もっと素直に、日銀を評価しても良いような気がします。