これを読んでいるあなた、とりあえず騙されたと思って、あなたが使っているウェブブラウザの右上にある検索機能に、好きなアイドルの名前を入れてみて頂きたい。好きな女優でも構わない。彼女達を我々がテレビでよく見かけることが重要なのだ。検索結果の最初のページに、公式のプロフィールかウィキペディアの人物ページが出ていると思う。そのどれかをクリックしてほしい。あなたがチェックすべきは誕生日でも趣味の欄でも無い。その脇に小さく書かれた身長である。あと、それをチェックしたらすぐにこのページに戻ってきていただきたい。

念のために→
ウィキペディア

 どうだろう。これを読んだ男性諸君は恐らく、椅子から立ち上がり自分の顎や肩に地面と水平にした手のひらを当て、このくらいなんだな、とやったに違いない。そう、そのくらいなのだ。ちなみに、あなたが手のひらを置いた高さから中指くらいの長さを引いた所が目、そこから中指から手首くらいまでの長さを引いた場所が、肩である。某音楽番組の舞台で華麗に歌って踊り、たくさんのドラマに出ている彼女達の身体のサイズは、そのくらいなのである。さあ、どうだろう。今までテレビの中だけの存在だと思っていた彼女達が、少しだけ身近な存在になったような気がしないだろうか。


 多くの人から愛される対象に『idol』、つまり偶像という言葉を当てたように、テレビで見ている限り、彼女達は我々が作った偶像であり続ける。偶像、つまり実在はしないものだ。アイドル達に限らず、映像や写真でしか目にする事の無い人間は、それを目にする我々にとって何時の間にか「その中にしか存在しない存在」になってしまう。彼・彼女達がテレビに映っていない間は日常生活を送っている事を頭では知っておきながら、具体的なイメージを持てないでいる。東京近郊の何処かにワンルームを借りて、コンビニで買い物をしたりしている事を頭では知っていながらそれを理解していない。『アイドルはうんちしない』がそれの最たる例だ。当たり前の事について考える事を拒絶して、偶像となったアイドル達を見る事しか我々にはできない。


 そこで冒頭で触れた、身長だ。

 テレビに映っているアイドル達をリアリティのある物としてとらえるために一番必要なのは、彼女達の具体的な形を想像する事だ。生年月日や趣味はあくまで情報でしか無く、彼女達の身体とは到底結び付かない。体重などを知っても、抱き上げる時のイメージトレーニングにしかならない。スリーサイズに関しては、公開されている事も稀だし、正しいのかどうかもわからない。それに、これを自分との比較で捉えられるのは女性だけだ。
 ここで一番重要なのが、イメージする対象物と自分が同じ土俵に立って比較できる事である。身長をアイドル同士で比較しているうちは、そこに自分が全く入って来ない。しかし、その中に突如として自分が加わったらどう思うだろうか。彼女たちのサイズがよりしっかりとイメージできるようになるではないか。彼女と自分が並んで立つ絵を想像する事によって、我々は彼女達が実際に存在している事を何となく理解できる。そして、偶像から実際に存在している人間に少しだけ近付く。

 別にこれをした事によって何かが変わる事は無い。生産性の無い妄想は、男―15センチっていう丁度いいバランスだな、とか、俺が高すぎて隣に座る時は丁度いい場所に肩が来なそうだな、とか、一通りのシミュレーションをした後、あなたの発する「なるほどね」、の一言で終わりを告げる。その後には何も残らない。


 念のために言っておくが、あなたがいくらアイドル達に近付いたように感じても、それは気のせいでしか無い。