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3キャリアの夏モデルとサービス揃う

 
ITmedia Mobile

© ITmedia Mobile 提供 KDDIの新「AQUOS K」は、VoLTEに対応する

 5月13日に開催されたドコモの発表会を皮切りに、KDDI、ソフトバンクモバイルの3社が夏モデルを一斉に発表した。各社とも、新端末に加え、新サービスを目玉に据えてきたのが特徴。くしくも、キャリアから見たときの上位レイヤーともいえる、サービスに力を注いだ発表会になった。今回の連載では、3社の発表会から見えてきた、携帯電話市場の今を解説していく。

●進むスマートフォンの「同質化」にどう対抗していくか

 「端末自身での差別化はなかなか難しい。iPhoneを独占でやっていた時代はあったが、今はたとえどこかのメーカーと組んで独占商品を作るといっても、AndroidかiOS(に選択肢が限られる)。そこを求める必要はない」

 こう語るのは、4月にソフトバンクモバイルの代表取締役社長に就任した、宮内謙氏。ソフトバンクとして初のGalaxyスマートフォンを取り扱い、Androidに注力していく宣言をした発表会だったが、やはり端末だけでの差別化は難しくなっているという。実際、3社のラインアップを見ると分かるとおり、サムスンの「Galaxy S6 edge」に加え、ソニーモバイルの「Xperia Z4」は共通で取り扱っており、中身に大きな差はない。ロゴの位置など、違いはわずかになっているのが現状だ。キャリアごとに画面サイズや機能は異なるが、シャープのAQUOSもフラッグシップモデルは3社で取り扱われている。

 では、3社のラインアップがまったく同じかというと、あながちそうでもない。各社とも差別化の軸を模索している様子はうかがえる。ソフトバンクの宮内氏は、シャープの「AQUOS CRYSTAL 2」を「ソフトバンク限定モデルの第2弾」と紹介。Sprintと共同開発したAQUOS CRYSTALがおサイフケータイやワンセグに対応したモデルで、フレームレスのディスプレイは他社のAQUOSとは大きく異なる。KDDIも、「isai vivid」や「HTC J butterfly」といった他社にないモデルを用意。「メーカーとの共同開発というスタンスは変わっていない」(KDDI関係者)といい、より開発に深く関わることで差別化を進めている。「TORQUE」や「URBANO」といった京セラ製の端末も、KDDIならではだ。

 ドコモは、夏モデルのテーマとして「生体認証」に焦点を当て、虹彩認証に世界で初めて対応した「ARROWS NX」を真っ先に紹介。ドコモの各種サービスでも、ARROWS NXをはじめとする生体認証対応機種では暗証番号やID、パスワードの入力を不要にするなど、サービスともうまく連動させた。

 さらに、「戦略的な商品」(ドコモ関係者)として価格を抑えたシャープ製の「AQUOS EVER」を用意する。AQUOS EVERは、チップセットにSnapdragon 400を採用したミッドレンジモデル。ベースとなるスペックはSIMロックフリーモデルが採用するものに近いが、おサイフケータイや防水には対応しており、「必要な機能が全部入っているが、お求めやすい」(NTTドコモ 代表取締役社長 加藤薫氏)のが特徴だ。ハイエンド一辺倒になりがちだったキャリアモデルだが、ベースとなる機能が底上げされてきたことで、価格を重視するという流れも出てきた。その狙いを、加藤氏は次のように説明する。

 「最新技術をどんどん入れてきて価格が上がってきたが、その中でよく使われるものを上手く、かつ安く入れるフェーズになってきた」

 また、ドコモは2年前(2013年)の夏モデルで、「Xperia A」と「GALAXY S4」を「ツートップ」として優遇する戦略を採用してきた。その割賦が終わるのが、2015年の夏商戦だ。AQUOS EVERに加え、「Xperia Z3 Compact」世代のチップを使ってコストを抑えた「Xperia A4」をそろえたのは、ツートップからの買い替えを促す狙いもあるという。

 価格が重視されるのは、タブレットも同様だ。KDDIの代表取締役社長 田中孝司氏は、「タブレットは安いものと付加価値のある高いものに二極化している」と分析。世界最薄、最軽量をうたう「Xperia Z4 Tablet」に加え、auオリジナルブランドで展開する京セラ製の「Qua tab」をラインナップに加えた。スマートフォンの画面をそのままタブレットに表示させる連携機能の「auシェアリンク」に対応しており、戦略として掲げるマルチデバイス化を推進していく方針だ。

 「少しソフトバンクより買いやすく、データセントリック(データ中心)なプラン」(宮内氏)というY!mobileでも、タブレットで新たな軸を打ち出している。ソフトバンクモバイルはY!mobileブランドで、Microsoftのタブレット型PC「Surface 3」を取り扱う。「LTEのチップから、販売計画、マーケティング計画までずっと一緒にやってきた」(ソフトバンクモバイル 専務取締役 エリック・ガン氏)といい、夏商戦の目玉に据えた。

 もともとワイモバイルでは、PCを「Pocket WiFi」とセットで販売していた店舗も多く、「『Surface Pro 3』とのセット率も高く、セットではなく、中に(通信を)入れてもらいたいという声も多かった」(ガン氏)。追加料金が無料(プランによってはキャンペーン扱い)で、最大3回線の子回線を持てる「シェアプラン」とも相性がいい。Y!mobileは「Microsoftともリンクしている」(宮内氏)といい、アプリがPCと共通化される見込みのWindows 10搭載スマートフォンにも意欲を見せる。ソフトバンクが他社並みにAndroidをそろえる一方で、新規開拓はワイモバイルが担うというのがソフトバンクの戦略のようだ。

●Androidの技術を生かしたフィーチャーフォンも注目を集める

 夏モデルでスマートフォン以上に注目を集めていたのが、「ガラホ」とも呼ばれる、Androidを採用したフィーチャーフォンだった。KDDIは、春モデルとしてLTEに対応した「AQUOS K」をすでに発売しているが、同名の夏モデルも発表。ドコモも、シャープ製の「AQUOSケータイ」と、富士通製の「ARROWSケータイ」の2機種を取りそろえ、KDDIに対抗する。

 スマートフォンへの移行が進んだとはいえ、その比率はまだ6割程度。4000万以上のユーザーが、フィーチャーフォンを使い続けている。一方で、メーカーのリソースは、スマートフォンに集中している。チップセットをはじめとする部材もスマートフォン向けのものが中心となり、LTEなどの新技術に対応するのが難しくなってきた。データ通信をヘビーに使うユーザーからスマートフォンへの移行が進み、iモードやEZwebの上で動いてきたコンテンツ開発を終了するコンテンツプロバイダーまで出てきている。

 こうした背景を踏まえ、OSをスマートフォンと共通化して、効率よく開発していくモデルが、Android採用フィーチャーフォンだ。スマートフォンのエコシステムを生かせるのもメリット。ドコモの執行役員 プロダクト部長 丸山誠治氏は「全般的なエコシステムがうまく回っていて、経済的なメリットが作りやすい」とその狙いを解説する。加藤氏も、「使い勝手はフィーチャーフォンと変わらない」と胸を張り、OSがAndroidになりLINEが使えるようになったことをアピールする。

 同じように見えるAndroid搭載スマートフォンだが、2キャリアで位置づけが少々異なる。ドコモの2モデルは、いずれも3Gのみの対応。LTEは利用できず、Wi-Fiも搭載されない。

 料金も、3Gケータイと同じものが使われる。2段階制のパケット定額プランで契約できるため、電話とメール程度しか使わなかった既存のユーザーにとっても負担感が小さく、買い替えやすい。ただし、パケット単価が従来と変わらず、「パケ・ホーダイ ダブル」では1パケット0.08円(税別、以下同)。わずか6.4Mバイトで上限の4200円に達してしまう。LINEのアップデートをかけただけで、すぐに天井に張り付いてしまうため、ここに対する配慮は欲しかった。

 これに対して、LTEを載せ、テザリングを利用したタブレットとの2台持ちまで可能にしたのがKDDI。同社は新たにAQUOS K専用の料金プランを設計し、2段階定額のパケット単価を引き下げ、ドコモに対抗した。

 「2段階定額を設けたのは、使う人と使わない人がいるから。Androidに変えるとあっという間にデータを食ってしまうので寝かせられない。単価を下げて、同じような使い方なら料金が変わらないようにしたかった。ガラホはすごい人気で上がってきた。料金がスマホじゃやっぱりダメなんだということで、変えましょうと。そういった改善をぐるぐる回していく」(田中氏)

 KDDIには、他社と異なるCDMA方式の3Gを早くやめたい思惑がある。田中氏が「Always 4G LTEになってきて、iPhoneも対応した。3Gは我々のラインナップからすると特殊な事例でない限り入れていかない。音声もVoLTEを使ってしまうと元に戻れない」と語っているように、AQUOS KはフィーチャーフォンユーザーをLTEにアップグレードするための鍵と位置付けている。Android対応フィーチャーフォンには、各社の置かれている立場が色濃く表れているのだ。

 こうしたAndroid対応フィーチャーフォンに対し、ソフトバンクモバイルはやや距離を置いている。宮内氏も「ガラケー、ガラホも順次少数だが出していくが、本質的には必要ないのではないか」と疑問を唱え、スマートフォンへの移行をさらに加速させていく方針だ。同氏は「単純なケースで言うと、スマートフォンを100万台増やすとどんな数字になるか。5000円のARPUの顧客を100万取ると、月間で600億円になる」と本音をのぞかせていたが、より収益性を高めていく目標を掲げている。「お店をベースにしてスマホをもっと普及させるような、エバンジェリストのような人をどんどん広げていきたい」(同)というように、スマートフォンへの移行に力を入れていく。

 もっとも、ソフトバンクでもフィーチャーフォンの需要はあり、5月22日にはパナソニック モバイルコミュニケーションズク製の「COLOR LIFE 5 WATERPROOF」と、ZTE製の「かんたん携帯8」を発表している。これらはAndroid搭載型ではなく、いわゆる従来型の携帯電話。発表会で同列に扱わないまでも、ラインアップから完全に外れたわけではないようだ。

●ポイントを刷新するドコモ、コマースに力を入れるau、Yahoo!との連携を深めるソフトバンク

 3社の発表会を振り返ると、ドコモ、KDDI、ソフトバンクモバイルともに、上位レイヤーであるサービスにも力を注いでいることを強く印象づけていたことが分かる。むしろ、発表会の主役はこちらであると言った方がいいだろう。各社とも端末やネットワーク以外での差別化には限界を感じている上に、囲い込みの一環として、ポイント、コマースといった分野に力を入れている。

 サービスブランドを一新して、「+d」という戦略を打ち出したのがドコモ。既存のブランドを刷新して、ドコモポイントが「dポイント」に、ドコモプレミアクラブが「dポイントクラブ」に、DCMXが「dカード」に、docomo IDが「dアカウント」にリニューアルされる。ポイントではコンビニエンスストアのローソンと提携。新たに発行する「dポイントカード」を使うとローソンでポイントがたまるようになるほか、「Ponta」とも連携。また、クレジットカードのDCMXをローソンで使うと、6月1日から3%の割引がつくようになる。

 加藤氏が「ドコモが持っているものに、パートナーが持っているビジネスアセット(資産)をプラスして、もっといいものができたらいい。そういう意味を込めて『+d』とした」と述べているように、ドコモは今後さまざまなパートナーとの提携を深めていく方針。ローソンはあくまでその1つという位置づけだ。

 これに対してKDDIは、全国に展開するauショップでのコマースが売りとなる「au WALLET Market」を開始。基本的には、ネットがベースとなるショッピングモールだが、auショップでスタッフから提案を受けられるのが単なるサイトとの大きな違いだ。扱う商品はお米や水などの生活必需品だけでなく、IoT(Internet of Things)関連製品まで幅広くなる見込みだ。田中氏は「スマートフォンは世界全体で総販があまり伸びないのではないかという声が聞こえているが、いろいろな機会でショップに来ていただければ、発見がある」と期待を込めており、au WALLET Marketをショップへの来店につなげていく方針。将来的には、保険や金融商品、電気など幅広い契約商品を販売する窓口になる可能性も示唆している。

 どちらかというとリアル寄りのドコモとKDDIとは異なり、インターネットカンパニーを標ぼうするソフトバンクモバイルはネットの利便性を高める方向にかじを切っている。その1つが、Yahoo!JAPANとの連携強化。会員情報を連動させ、Yahoo!側で登録する必要なく、ソフトバンクのユーザーが簡単に各種サービスを利用できるようになる。決済もリンクして、「ソフトバンクの利用料金とYahoo!の商品代金をまとめて支払える」(宮内氏)のが特徴の「スマート決済」を導入する。これらに加えて、IBMの人工知能「Watson」を、スマートフォン向けに提供する方針も明かしている。こうした取り組みについて、宮内氏は「皆さんのポケットの中にはスマートフォンがある。このスマートフォンの価値を上げていくことこそが、本当の価値創造」と語る。

●新サービスが成功するカギは?

 三社三様の新サービスだが、リアルとの連携を深めるドコモやKDDIに対し、ソフトバンクは手堅く得意なネットサービスを強化するという違いがある。また、同じリアルを重視した新サービスでも、ローソンとの提携によってコンビニでの利便性を高めるドコモに対し、KDDIはauショップでコンビニのようにさまざまな商品を買えるようにするというように、その方向性はまったく逆だ。端末以上に、サービスには各社の特徴が色濃く出ていることが見て取れる。

 ただ、特に未知の領域に挑戦することになるドコモやKDDIに関しては、成功するかどうかはふたを開けてみなければ分からない部分もある。ドコモについては、特定のコンビニエンスストアだけとの提携で本当にいいのかというのが疑問だ。地域や居住地、勤務地によってはローソンをまったく活用できないこともあり、こうしたユーザーにとってはあまりインパクトが弱い。ポイントも「利用期間によらず、一律にした」(加藤氏)といい、一部のユーザーにとっては改悪になる恐れもある。

 KDDIのau WALLET Marketは、混雑しているショップで本当にユーザーに寄り添った商品提案ができるのかという疑問がぬぐいきれない。田中氏は「お待ちになっている時間を有効に使えないかということも背景にある」と述べていたが、スマートフォンの手続きをしようと思って来店し、長時間待たされていたユーザーが、それとはまったく関係のない商品を提案されて、本当に「すばらしい接客だ」と思うだろうか。自分なら、逆に不快に感じる。

 田中氏は「スマホを買うときの待ち時間、作業時間はもっと短くしなければいけない取組みはする」と述べていたが、その詳細は語られなかった。auショップを活用すること自体は意味のある取り組みに思えるが、本格的にやるならオペレーションを大きく改善することが先ではないだろうか。今の取り組みは、どこか順番が逆なような気がしてならない。

 加えて言えば、各社とも、新サービスと夏モデルはほとんど連動していない。ドコモのポイント制度にしても、KDDIのau WALLET Marketにしても、ソフトバンクのYahoo!連携にしても、ユーザーなら誰もが関係してくるサービスだ。その意味で、端末の購入を考えているユーザーが待ち望む夏モデルと同時に発表した姿勢にも疑問符がつく。厳しい言い方をすると、限られた時間の中でまとめて概要を紹介したためか、端末もサービスも、その魅力が中途半端にしか伝わってことなかった。得意とするテクノロジーやネットを軸にサービスを強化するソフトバンクモバイルは別にしても、ドコモやKDDIは未知の領域へのチャレンジになる。もっと丁寧にそれぞれの魅力をひもといていってほしかったというのが、筆者の本音だ。

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