iOS、Androidに対抗するべく開発が進められているスマートフォン(スマホ)向けOSの第3勢力は、昨年NTTドコモがTizenの導入を見送ったことから一時は沈静化傾向にあった。だが昨年末から今年にかけて、国内でもFirefox OSやWindows Phoneに関して新しい動きが相次いで起きており、再び第3勢力が注目を集めつつある。その攻め方は、iOSやAndroidと正面から対抗しようとしていた以前と比べると、大きく変化している。
●スマホOSの第3勢力の動きが再び活発化
現在、スマホやタブレット向けOSは、世界的に見てiPhoneなどに搭載されているアップルのiOSと、それ以外の多くのスマホに搭載されているグーグルのAndroidの2大勢力に分かれている。日本ではiOSの人気が高く、他の多くの国ではAndroidの勢力が強いなど、国によって傾向に違いはあるものの、2つのOSが市場を席巻していることに変わりはない。
一方で、アップルとグーグルによって市場が席巻されていることを危惧した勢力が、これに対抗するべく独自のOSを作り出し、対抗する姿勢を打ち出している。その代表例となるのが、マイクロソフトのWindows Phoneや、ウェブブラウザのFirefoxなどを開発しているMozillaが提供するFirefox OSなどだ。これらのOSが、2大OSに次ぐ第3勢力として一定規模のグループを形成している。
だが市場での人気がiOSとAndroidに集中している状況下で、第3勢力がシェアを獲得するのは容易ではない。実際、両OSの影響に押されるかたちで、端末投入にさえ至らないケースも見られる。
それを象徴しているのが、サムスンらが主導しているTizenだ。Tizenは昨年、NTTドコモが端末導入の無期延期を発表するなどキャリアからの支持を得られず端末投入に苦しんだ。今年になってようやく、サムスンがインドやバングラデシュで端末を発売したものの、大きな成果を得るには至っておらず、最近ではスマートテレビなどスマートフォン以外のデバイスへと軸足を移しつつあるようだ。
そうしたことからここ最近、第3勢力のOSが大きく盛り上がった一昨年までと比べると、その注目度は低くなってしまっていた。だが昨年末、au(KDDI)がFirefox OSを搭載したスマホ、Fx0を投入して以降、特に国内に向けた第3勢力の動きが急加速し、再び注目を集めるようになってきているのだ。
●国内復活を果たしたWindows Phoneの狙いは法人需要
第3勢力のOSに関して大きな動きが見られたのが、3月2日よりスペインで開催された携帯電話の見本市イベント「Mobile World Congress 2015」(以下、MWC)である。同イベントの開催に合わせて国内外の企業が、日本市場にも関連した第3勢力の発表を実施したのだ。
中でも注目を集めたのが、Windows Phoneに関する動きだ。MWCの開催に合わせ、パソコンメーカーのマウスコンピューターが国内向けにWindows Phone搭載端末を開発していることを表明。freetelブランドでSIMフリースマホを販売するプラスワン・マーケティングも、Windows Phone搭載スマホを国内投入すると発表したほか、京セラも国内発売こそ未定ながら、Windows Phone搭載スマホの開発を表明したのだ。
Windows Phoneといえば、2011年にauが発売したIS12T以降、国内投入が見送られ続けており、マイクロソフトもいまだ国内向けの本格投入には慎重な姿勢を崩していない。にもかかわらずWindows Phoneの採用が相次ぎ、国内向けに端末を投入しようというメーカーまで出てきている要因としては、マイクロソフトが新興国市場を意識し、Windows Phoneのハードウェア要件を大幅に緩和したことなどから、大手以外のメーカーが参入しやすくなったことが大きい。
国内向けの端末投入を発表したメーカー2社が、Windows Phoneで狙っているのは法人需要だ。いずれも、コンシューマーより法人向けの販売を重視した販売戦略をとるとしているし、ソニーから独立したパソコンメーカーのVAIOも、コンシューマー市場より安定した収益が得られる法人需要を意識してか、Windows Phoneへの興味を示しているようだ。
端末が長く提供されてこなかった日本では、アプリ数が圧倒的に不足していることから、コンシューマー市場でiOSやAndroidに真っ向勝負を挑んでも勝ち目はない。だが多くの企業がWindowsを採用している法人向けであれば、Windowsとの相性の良さを武器として勝負できる。そうしたことから今後、法人需要を狙い、パソコンメーカーを中心としてWindows Phoneを採用する企業が増えていく可能性は高い。
●Firefox OSはフィーチャーフォン狙い、ニッチ戦略が功を奏すか
一方、国内市場への参入を果たしたばかりのFirefox OSも、MWCに合わせて国内も見据えた次の一手を打ち出している。それは、国内で現在も多くの利用者を抱える折り畳みスタイルのフィーチャーフォンなど、タッチタイプ以外の端末にFirefox OSを採用するというものだ。
© Business Journal 提供実際にMozillaはKDDIのほか、米国のベライゾン・ワイヤレスや韓国のLG U+、スペインのテレフォニカと共同で、Firefox OSをベースとしてそうした新しいカテゴリーの端末を開発することを表明している。Mozillaがこうした構想を打ち出している背景には、特に先進国において今なおフィーチャーフォンに強い愛着を持つユーザーの多いことが挙げられる。日本はフィーチャーフォン利用者が最近でも4~5割程度を占めるといわれているが、そうした傾向は他の国でもある程度共通しているようだ。
一方でそれら端末に向けたプラットフォームは、スマホ人気の影響から進化がストップしており、端末自体の開発もしづらくなっている。そこでMozillaは、iOSやAndroidがカバーできていない、タッチタイプのスマホ以外の端末需要をすくい上げることで、端末開発をしやすくしながら、先進国におけるFirefox OSのシェア拡大につなげたい狙いがあるようだ。国内では2月に、Androidを搭載したフィーチャーフォンAQUOS K(シャープ)が登場して話題となったが、来年以降はFirefox OSを搭載したフィーチャーフォンが、日本でもいくつか登場してくるかもしれない。
このように、MWCを起点として第3勢力が大きな動きを見せているが、いずれもiOSやAndroidと正面から戦いを挑むのではなく、法人やフィーチャーフォン利用者など、比較的ニッチな部分から市場開拓を進めようとしているのが、従来とは異なるポイントだ。狙いがニッチだけに、特に国内においては急速に市場シェアを拡大するとは考えにくいものの、逆に確固たるポジションを獲得しやすいともいえ、市場で一定の存在感を示す可能性が高い。
各社の発表内容を見ると、今年の後半から来年の頭にかけて、第3勢力に大きな動きがあるものと予測される。実際に製品がどのような形で現れ、どのような評価がなされるのか、注目しておきたいところだ。
(文=佐野正弘/ITライター)