ドコモが携帯電話回線と光回線のセット販売「ドコモ光」を、2月16日から事前受付を開始し、3月1日からサービスを開始することを明らかにした。このサービスは、NTT東西の光回線サービスを仕入れて提供されるもの。本稿執筆時点(1月29日)では、競合するKDDIとSoftBankの対抗策がわからないため、俯瞰的なまとめをすることは別の機会にするとして、ここでは、これまでの経緯と今回の発表が一般の生活者に与える影響を中心にまとめたい。参考までに、1月30日にはKDDI、2月10日にはSoftBankが決算発表を予定しているため、両者の社長が「ドコモ光」への対抗策などを発表するだろう。
まずこの件は、約1年前から報道機関を巻き込んだ形で議論の土壌が作られ、総務省の「情報通信審議会」が高市早苗総務大臣に提出した答申「2020年代に向けた情報通信政策の在り方-世界最高レベルの情報通信基盤の更なる普及・発展に向けて」を受けて進められている。この中で、NTT東西が提供する光回線のサービス卸について、以下のような箇所がある。
つまり、NTT東西の光回線サービス卸を行なうことが、<我が国の経済成長や社会的課題の解決に貢献するものとなる可能性がある>と総務大臣に答申しているのだ。ちなみに最近話題になっている2015年4月以降にSIMロックが解除されることも、この答申の中に含まれているもの。2020年の東京オリンピック・パラリンピックを意識して、総務省を舞台にやり取りされてきた情報通信政策の方向性も、NTTグループが寄り切りそうというのが現時点での状況だ。
この一連の流れについての反応は、KDDIとSoftBankではだいぶ異なる。「ドコモ光」の発表を受けKDDIは「発表内容を精査したうえで、改めて当社の立場を明らかにする」(広報部)としているが、基本的にはNTT東西による光回線のサービス卸の提供は断固反対の立場をとる。一方、SoftBankは「10月31日に当社もNTT東西の光回線サービスを使った独自のブロードバンドサービスを提供することを、リリースでも明らかにしています」(広報部)として、近日中に発表される見込み。SoftBankとしては、光回線の卸しの方法についての言い分はあるものの、大枠では受け入れる方向だ。
背景には、SoftBankが既にNTT東西の光回線をYahoo! BBブランドで販売しているのに対し、KDDIは行なっていないことがある。KDDIは、NTT東西に対抗する電力系の光ファイバー網を自前で展開しているため競合となるNTT東西の光回線を仕入れてサービスを提供するわけないはいかない。そして関連会社のCATV会社JCOMは、全国のインターネットのインフラにもなっているため、NTT東西の光ファイバー網とは競争関係にある。このあたりの事情が、両者の反応の違いにあらわれている。
何かどんでん返しがあるかは現時点では不透明だが、このままドコモがセット販売をできるのであれば、ようやく他社と同様に光回線を携帯電話と一緒に扱えるようになる。これにより、生活者にどんな提案をできるかが、勝負どころになってくるのだろう。
■料金メニューは、「ドコモ光」単独型とISP料金一体型の2種類
さて、「ドコモ光」の具体的な内容だが、このサービスは最大1GBの通信速度(品質はNTT東西が提供している「ギガフレッツ」と同等)で、「フレッツ光対応ISP」であれば、そのまま利用することができる。たとえばドコモのケータイを使っているけれど、自宅の固定インターネットはKDDIやJCOMを契約していたり、NTT東西「フレッツ」ではあるものの、プロバイダーはYahoo! BBという方には、パック料金が適用になるため固定と移動のトータルの通信費が安くなる。
料金メニューは、「ドコモ光」単独型と、ISP料金一体型の2種類。それぞれ戸建向けと集合住宅向けに分かれ、「ISP料金一体型」はタイプAとタイプBの2種類がある(ISPは、Internet Service Provider。いわゆるプロバイダー、インターネット接続事業者のこと)。これを整理したのが下の図(リンク先はこちら。結論からいえば、ISP料金一体型の中から選ぶのが一般的と言えるだろう。
上記の料金は、前述のとおり、ドコモのスマートフォンを同時契約することで割引が適用される。戸建て向けのISP料金一体型(タイプA)を例にすると、ドコモのパケットパックの月額5000円の「データMパック」と、月額5200円のドコモ光を組み合わせると、通常は1万200円のところが、9400円(800円割引)、同様に月額6700円の「データLパック」を組み合わせると、1万1900円が1万900円(1000円割引)となる。
さらに、ドコモを長期契約していると、600円~2000円の割引が適用される「ずっとドコモ割」、25歳以下を対象に500円の割引と、ボーナスパケット量1GB/月がプラスされる「U25応援割」、さらに新規契約者もしくはMNP(Mobile Number Portability、同じ携帯電話番号で電話会社が乗り換えられる制度)でドコモを契約したときに適用され、「Xiカケホーダイプラン」を半額にする「光スマホ割」も用意されている。
以上が大まかな中身だが、ISP料金一体型では、いま使っているプロバイダーのメールアドレスなどがそのまま使えるのが特徴となる。この点はKDDIが提供する「auスマートバリュー」も同様だが、SoftBank「スマホBB割」は、NTT東西の回線で、プロバイダーにYahoo! BBを選んだ時にSoftBankのスマートフォンが割引になるというメニュー。原稿執筆現在(1月29日)は、この部分は違いとなる。
なお、ISP料金一体型では、ドコモ自らが提供するプロバイダー「ドコモnet」を選ぶこともできる。具体的な内容が明らかではないが、ドコモらしいプロバイダーサービスになっていくことを期待したい。余談だが、現在ドコモではスマートフォンで使っている******@docomo.ne.jp のメールアドレスをパソコンでもやり取りができるドコモクラウドを提供している。こうしたものなど、スマートフォンを核にしたサービスが登場してくると良いのだが、、、。
■ドコモが見据えるもの
少し話は変わるが、ドコモがプロバイダーとの連携を声高にアピールする背景には、MVNO(Mobile Virtual Network Operator。ドコモなどから回線を借り受けて、モバイル通信サービスを提供する事業者のこと。最近は格安SIMを扱っていることで知られる)から、さまざまなサービスが出てくることが想定されることがある。これにより、生活者の選択肢が増えることが予想される。
加藤社長は会見で、「ドコモも、NTT東西の光回線のサービス卸をするワンオブゼムのプレイヤー。今後ISPやMVNOの方々が、さまざまなメニューを提供してくるだろう。また警備会社や保険会社が自社のサービスと組み合わせた形で展開することも予想される。これにより、お客様にさまざまな選択肢を用意できるだろう」とコメントしている。これだけではわかりにくいかもしれないが、現在ドコモの回線を使ったMVNOが、携帯電話会社ではできない様々なサービスを提供している。
たとえば、フリービットでは月額1000円(電話機を24回の分割購入すると+1000円)のほかに300円/1GBの高速チケットを購入すると、通常は500~600Kbpsの通信速度が、HSPA相当の高速通信が1GBのやり取りまで利用できる。通常の携帯電話会社では、事前に契約すると利用者が利用量を調節することができるが、フリービットの場合、1日あたりに使うパケット量を設定したり、1GB分まで使ったら後はスタンダードスピードにといった使い分けができる。このプランは一定金額に通信料を抑えたい方からするとメリットがあるが、こうしたきめ細かいサービスは大手携帯電話会社から出てくることは期待できない。また日本通信ではソニーから分社したVAIO社と協業して、「VAIOスマートフォン」を提供することを明らかにしている。
このように、多様な機種が出てきて選択肢が増えることもMVNOが活性化していくことで具体的になっている。さらには、保険料のように、毎月支出があるものが、通信サービスと一緒になることで安くなったりするならば、歓迎されるのではないか。格差社会の拡大などが叫ばれ、生活者の金銭感覚が厳しくなっている現状を考えると、通信費や保険料のように毎月の固定費が減ることを歓迎する人は少なくない。加藤氏のコメントは、そうした多様な世界を期待させてくれるものだった。
発表会の会見で、加藤社長は「ドコモがモバイル、光回線、ISPをワンストップで提供できるようになるため、お客様の手間を軽減することができる。またドコモショップのサービス力は、調査機関からも高い評価をいただいていて他社との差別化できる部分。こうした安心安全も含めて、快適なスマートライフを提供できるようにしていきたい」と、「ドコモ光」の魅力をアピールした。確かにインターネットの設定は、慣れていても面倒と感じる人は少なくないほか、何かトラブルが起こった時などにドコモに問い合わせをするだけで解決できるという点はありがたいと感じる人は多いだろう。
ブロードバンドインターネットを利用できる環境は整っているけれど、実際に行動を起こすと壁にぶつかったり、使っているときにトラブルが起こり躓いてしまうなど、IT機器やインターネットサービスはまだまだユーザーフレンドリーとはいえない面も多くある。こうした課題に向き合っていくことがドコモの社会的な役割ともいえる。もちろん効率性や合理性にも十分に配慮してオペレーションすることは大前提ではあるが。「ドコモ光」が提供されることを機会に、このように目に見えないところも含めてドコモが選ばれるようになることを、1ユーザーとしては期待している。
文/橋本 保