東洋経済オンライン 12月7日(日)8時5分配信
「供給スピードにユーザーが追いついていない。飽和に近づいている」。10月末、ガンホー・オンライン・エンターテイメントの森下一喜社長は、中間決算説明会でスマートフォンゲーム市場への持論を展開した。
同社のパズルRPG『パズル&ドラゴンズ』(パズドラ)は、累計3200万ダウンロードを突破した“お化け”ゲームだ。国内で出荷されたスマホの2台に1台でプレーされた計算になる。だがそれとは裏腹に2014年7~9月期は、前期比で2四半期連続の減収減益に沈んだ。配信から2年9カ月を迎えたパズドラだが、さすがに新規ユーザー獲得に限界が見え始めている。国内のスマホ普及台数は6000万台を超え市場は成熟化に近い。これに歩調を合わせるように、積極的にテレビCMを打っても、伸び悩みつつある。
バークレイズ証券の米島慶一ディレクターは「運営がしっかりしていれば、スマホゲームの寿命は大きく延びる」と分析する。パズドラも10月の課金率は回復。パッケージ売り切り型の家庭用ゲームと違い、ガンホーには、PCオンラインゲームを長く手掛けてきた実績がある。
■ ゲームで復活したミクシィ
復活したミクシィ王者ガンホーに肉薄、スマホゲームの新たな主役となりそうなのが、ミクシィだ。2013年10月にリリースした、ひっぱりハンティングRPGの『モンスターストライク』(モンスト)が大ブレーク。2014年3月期に4.8億円だった営業利益は、2015年3月期いは450億円と、なんと100倍近くも伸びる見通しである。
「モンストは世界で4番目に売れているアプリです」。11月7日の中間決算発表で胸を張ったのはミクシィの森田仁基社長。3月に公募増資で63億円を調達、ほぼ全額をモンストの広告宣伝に投入するという、大勝負に出た。その効果でまもなく月商100億円が視野に入るが、これはパズドラの直近の月商130億円に次ぐ規模となる。「ピークアウトしてから盛り上げる難しさは、交流サイトのミクシィで学んだ」(荻野泰弘・ミクシィ取締役)
パズドラとモンストの大ヒットには共通点がある。パズドラはスマホ画面を指でなぞり、ドロップを消していく操作性が支持を集めた。従来型携帯電話(ガラケー)からスマホへ買い替えたユーザーに、タッチパネルを生かした遊び方は斬新だった。モンストは画面上のキャラクターを引っ張ってはじくことで、敵のモンスターを倒すという爽快感がヒットにつながった。さらに通信機能を使うと、対面した状態で最大4人が一緒に遊べる。高校生らが放課後の教室などで、モンストで一緒に遊び、それが口コミで広がっていった。
新たな遊び方の提案に加え、スマホゲームは課金率を低く抑えた点でも相通ずる。ガラケーのソーシャルゲームで一世を風靡した「グリー」「モバゲー」が、ゲーム上のくじを引く「ガチャ」というアイテム課金収入を重視し、社会的非難を浴びた手法とは一線を画した。無料でも十分遊べることでユーザーを増大。課金率はソーシャルゲームの約10%に対し、スマホゲームは3~5%にとどまる。課金率が低くても、裾野拡大とともに収入が増える、好循環を生み出したのだ。
ガンホーやミクシィと並び、ヒット連発で存在感を放つのが、コロプラだろう。2013年3月に配信したクイズ&カードバトルRPG『魔法使いと黒猫のウィズ』が大ヒット。今年7月配信のワンフィンガーRPG『白猫プロジェクト』もヒットを記録した。「2本もヒットさせた実力はすごい」(ゲーム会社幹部)。
同社の経営の特徴は、自ら“ムカデ足戦法”と呼ぶゲームの多様性。クイズやアクション、スポーツなど幅広いゲームジャンルをそろえることで、ヒットの当たり外れのリスクを分散させる。馬場功淳社長は、「ユーザーの好みは変わってきており、新たな遊び方に積極的にチャレンジしている」と言い切る。
■ 非ゲームか、海外か
豊富に稼いだキャッシュを、これからどう活用するかは、まさに三者三様だ。
ガンホーの場合、資金は新作ゲーム開発とM&Aに投じる。スマホのみならず、家庭用ゲーム「プレイステーション4」向けも開発、あくまでゲーム会社として成長を目指す。対照的にミクシィは、モンストに続くゲームのパイプラインを持たず、M&Aを積極化する考え。それも「ゲームに限らず、ネット業界で再編を起こしたい」(荻野取締役)。コロプラは本格的な海外展開をにらみ、エンジニアの採用を急増、自社で拡大していく方針である。
ただ現状は「タッチパネルを使ったスマホゲームで新たな体験を提案するのが難しくなっている」。UBS証券の武田純人アナリストはそう見通す。ユーザーの奪い合いが激しさを増す中、斬新さを打ち出せなければ、たちまち埋もれる。賞味期限が切れないうちに、いかに次の「食いぶち」を確保できるかだ。
1年先はどうなっているかすらわからないスマホゲーム。“一発屋”で終わらないために、後のない各メーカーの懸命な奮闘が続く。
(「週刊東洋経済」2014年12月6日号<1日発売>核心リポート03を掲載)