新興メディア台頭で記者や編集者の流動化も進む。1月にはウォールストリート・ジャーナル紙の看板コラムニスト、ウォルト・モスバーグ氏がハイテクニュース専門サイトを創設。ワシントン・ポスト紙の人気政治コラムニスト、エズラ・クライン氏も新興のボックス・メディアに参画するなど、各社のエース級記者がわれ先にと移る。昨年10月には、アマゾン・ドット・コムのジェフ・ベゾスCEOがワシントン・ポスト紙を約2.5億ドルで買収したのに続き、イーベイの共同創業者の一人も自らメディアを設立。斜陽産業が投資マネーを呼び込むホットな業界になっているのだ。「1年前までは、伝統メディアの凋落によるコンテンツ力と顧客満足度の低下を嘆くしかなかった。が、ここ1年の動きは、ゲームチェンジング(事態の変化)さえ予感させる」。メディア業界動向を調査し、毎年報告書を発表する米ピュー・リサーチ・センターは、3月の報告書で変化をこう表現した。
伸び盛りの新興メディアの特徴は、SNSを介して記事の「拡散」に注力する点だ。ある大手紙の幹部によると、自社サイトを直接訪れる読者は大きく減り、フェイスブックやツイッターからの訪問者数が急増。あるネットメディア幹部に言わせれば、「デジタル時代のフロントページ(1面)は、ソーシャルメディア」なのである。実際にバズフィードは、「どういった記事がなぜ拡散されるのか、というジョナ(・ペレッティ創業者兼CEO)の興味本位で始まった」(国際事業担当のスコット・ラム副社長)。ネコの画像を大量に載せることで存在が知られた同社だが、実はその拡散手法はかなり緻密だ。■ ハイテク企業が生き残る
サイト上に「カワイイ」「爆笑」などの感情項目を設け、読者が各カテゴリーに当てはまる記事を読めるようにした。社内にデータアナリストを抱え、どういう見出しや記事が拡散されやすいかを分析するほか、独自のアルゴリズム(計算方式)を採用して、記事がどの程度拡散するかも探る。記者を採用する際も「ツイッターのフォロワー数が多く、どういう見出しが拡散されやすいか知っているかも重視する」(同)という徹底ぶりだ。もう一つの特徴は「メディア企業であると同時に、ハイテク企業でもあること」(同)。社内に大量のエンジニアを擁することで、設立当初から、記事の編集・配信方針に沿ったコンテンツ配信システムを開発できた。新興メディアの大半は記事を無料で配信し、広告収入で稼ぐビジネスモデルを志向。その広告も従来のバナーではなく、「ネイティブ広告」という、日本の“記事体広告”に近い。こうした広告は通常の記事と交ぜて掲載(ただし広告とはわかるように)。広告でも拡散されやすい内容や配信手法を追求している。