●2014夏モデルの傾向は?
NTTドコモ、KDDIの2014年夏モデルが発表された。ソフトバンクは、孫正義社長が「発表会の役割は変わってきている」として、端末を一斉に発表しない方針になっているが、ここでは発表会が行われたドコモとKDDIの端末ラインナップの傾向を見てみたい。
本稿ではまず、VoLTE対応したドコモ、キャリアアグリゲーションで高速通信を目指すKDDIの2社の個別の特徴を見ていく。次に、両者が発表した端末にはXperia Z2、Xperia ZL2といったように、いわば"兄弟機"に相当する機種が複数ある。それらの機種がどう違うのかについても触れていく。最後に夏モデルを総括したい。
●VoLTE対応を表明したドコモ その1
○VoLTE対応で音声通話をアピールするドコモ
ドコモとKDDIは、今夏から新技術を使った新サービスを開始する予定で、それに対応した端末をそろえたのが最大の特徴だ。
ドコモはVoLTE(Voice over LTE)を開始する。これは、LTEネットワーク上で音声をパケット通信でやりとりする技術で、SkypeやLINEのようなサービスの音声通話サービス(VoIP)と同じような仕組みだ。もちろん、VoLTEの場合は音声通話に必要な技術的な手当を行っているので、一般的なVoIPに比べて通話の安定性や音質などで有利になる。
いずれにしても、VoLTEの導入で、音声の高品質化、低遅延化が実現する、というのがドコモのアピールポイントだ。実際に試してみると、特に高音域がクリアになり、全体的に聞き取りやすくなる。また、遅延が少なくなるので、話し手が電話越しに話して、それを受信側の聞き手が聞くまでの時間が短縮される。
●VoLTE対応を表明したドコモ その2
もう1点のアピール点が「ビデオコール」。過去にもあったいわゆるテレビ電話だが、以前に比べると高画質化した点が特徴だが、現時点ではQVGA・30fps程度で、以前に比べれば高画質化したが、画面は粗い。今後、高画質化も検討していくそうだ。
ちなみに、VoLTE通話は通常の通話料だけだが、ビデオコールの場合はさらにパケット通信料も必要になるので注意が必要。7GBなどの制限にかかるため、例えば7GB以上を使って128kbps制限になっているときにビデオコールを行うと、低速で映像が送られるため、品質的には厳しいものになりそうだ(音声はVoLTEのため、7GB制限はない)。ただし、2015年9月末まではキャンペーンでパケット料金が無料なので、7GBを超えていてもビデオコールは制限されない。
そのほか、発信ボタンを押してから実際に着信するまでの時間が短縮されたり、音声通話中のデータ通信でLTEを使えて高速になったり、いくつかのメリットもあるが、「ないよりはあった方が便利」ぐらいな感覚だろう。基本的にVoLTEは「発信・受信者双方がLTE圏内にいて、VoLTE対応端末である」という場合にのみ高音質通話になるが、例えば発信者側がLTE圏内なら、素早い発信と通話中の高速通信という恩恵は受けられる。
●KDDIはキャリアアグリゲーションで高速化
○キャリアアグリゲーションで高速通信を実現するKDDI
それに対してKDDIは、キャリアアグリゲーション(CA)を今夏から開始し、その対応端末としてスマートフォン5機種、タブレット1機種を投入する。
CAは、2つの異なる周波数帯域を1つの帯域に見立てて通信速度を向上させる技術。一度に使える帯域が多いほど、通信速度は高速化できるが、1社が持っている周波数帯域には限りがある。1つの周波数帯域を10MHz幅しか持っていない場合、下り速度は最大で75Mbpsしか出せないが、20MHz幅があれば、倍の150Mbpsが実現できる。
CAでは、異なる周波数帯を仮想的な1つの帯域として見立て、帯域幅を拡大させることができる。KDDIの場合、2.1GHz帯と800MHz帯の2つの帯域を使い、最大150Mbpsを実現する。
ドコモの場合は、所有する帯域幅の関係上、すでに下り150Mbpsが可能な基地局があり、理論値の最高速度だけなら同等になっている。それだけが理由ではないが、いずれにしても今回ドコモではCAは見送り、VoLTEに注力した。
逆にKDDIは、LTEネットワークでしか利用できないVoLTEを急ぐよりも、LTEネットワークの穴をふさぎつつ、速度的なメリットのあるCAへの対応を優先した、という形だろう。
とはいえ、両社ともCAやVoLTEには最終的に移行する考えで、今年度中には対応していく見込みだ。なお、今夏モデルはドコモ版がVoLTE、KDDI版がCAに対応しているが、現時点で両社とも、それぞれCAやVoLTEにあとからソフトウェアアップデートで対応することは難しいとしている。
●Xperia、GALAXY兄弟機の違いは?
○各社スマートフォンの傾向は
ドコモのVoLTEに対応したスマートフォンは、「Xperia Z2 SO-03F」、「Xperia A2 SO-04E」、「GALAXY S5 SC-04F」、「AQUOS ZETA SH-04F」、「ARROWS NX F-05F」の5機種。さらに「Xperia Z2 Tablet SO-05F」、「AQUOS PAD SH-06F」の2機種もVoLTEに対応する。
KDDIのCAに対応した機種は、「isai FL LGL24」、「Xperia ZL2 SOL25」、「GALAXY S5 SCL23」、「AQUOS SERIE SHL25」、「URBANO L03」の5機種に、「Xperia Z2 Tablet SOT21」のタブレット1機種がサポートする。
ドコモとKDDIのラインナップでは、Xperia Z2/ZL2、GALAXY S5、AQUOS ZETA/SERIEが共通で、独自端末としてドコモにはXperia A2とARROWS NX、KDDIにはisai FL、URBANOが用意されている。
ドコモのXperia Z2とKDDIのXperia ZL2はほぼ兄弟機で、インカメラの一部仕様に違いはあるが、通信方式以外の違いは、デザインだけと言ってもいい。Xperia Zシリーズを踏襲したZ2に比べて、ZL2は、Xperia ULのデザインを継承した形で、かなり印象が異なる。
GALAXY S5は、通信方式以外に違いはない。GALAXY S5は、指紋センサー、心拍数センサー、GALAXY Sシリーズ初の防水防塵、約0.3秒でピントが合う高速なAFを搭載したカメラなど、さまざまな機能が追加されている。
●AQUOS兄弟機の違いとARROWS NX
AQUOS ZETAとAQUOS SERIEも、基本的には同等製品だが、ZETAは画面サイズが5.4インチ、SERIEは5.2インチと違いがあり、それにともなってサイズはZETAがやや大きく、バッテリもZETAがやや大きい。どちらも本体いっぱいまでディスプレイを広げた狭額縁の「EDGEST」が特徴。ボリュームキーの配置やデザインでの違いもある。
ARROWS NXはジャストシステムと共同開発した「Super ATOK ULTIAS」が特徴。isai FLは5.5インチという大型液晶で、解像度がWQHD(2560×1440)という高解像度な点が特徴。URBANOは、スマートフォンに慣れていない人でも使いやすさを求めたUIや耐衝撃性能などが特徴のモデル。
●夏モデル総括
こうしてみると、KDDIはisai FLの大型化・高解像度画面が目を引く以外は、ラインナップとしては既存製品の完成度を高めた、という位置づけだろう。GALAXY S5が指紋センサー、心拍数センサーを備え、カメラにも約0.3秒の高速AFを搭載するなど、新機能を盛り込んできている点は評価できるだろう。
全モデルでAndroid 4.4を搭載しており、基本的にはすべて「全部入り」の端末といっていい。スペックというよりも、それぞれ欲しい機能やデザインを踏まえて選ぶと良さそうだ。カメラであれば定評のあるXperia Z2やGALAXY S5、高解像度でisai FL、コンパクトでXperia A2、日本語入力や指紋センサーによるプライバシーモードが良ければARROWS NXなどといった具合に、その中でも特徴をつかんで選ぶ形になりそう。
逆に言うと、特別に秀でた端末が少ないという言い方もできるかもしれない。個人的にはisai FLの高解像度は魅力だが、大きすぎるという声もあるだろうし、発売時期が7月下旬というのは気にかかる。
スマートフォンでなくても、Xperia Z2 Tablet、AQUOS PADというタブレット製品が、それぞれVoLTE、CAに対応しているので、タブレットでその辺りをカバーするという使い方もできるだろう。
(小山安博)