住宅編 第24回「住宅ローン控除」が示すこれからの家づくり | 「不動産リテラシーの向上で老後の安心生活を」シリーズ投稿始めます

「不動産リテラシーの向上で老後の安心生活を」シリーズ投稿始めます

中小企業診断士 桑岡伸治のブログです。このたび、「老後の安心生活」実現を目的に、不動産に関する様々な情報を提供するシリーズ投稿をはじめます。
はじめにプロローグをお読み下さい。
ひとりでも多くの方が、Happyになりますように!

省エネ性能がローン控除の要件に

 

 マイホームの新築や購入をしたときは、住宅ローンの残高に応じて所得税の税額控除を受けることができる。住宅の取得に対する減税制度の歴史は古く、1972年の住宅取得控除に始まる。1980年代には「住宅取得促進税制」として、借入残高によって減税額を決める現在の形になり、長年、個人の住宅取得を後押ししてきた。

 

 この制度、その時々の経済状況と政府の意向を色濃く反映し、その規模を拡大したり縮小したりということを繰り返してきたが、2022年改正建築物省エネ法が成立し、2025年4月からの「新築住宅への省エネ基準適合義務付け」に先駆ける形で、2024年1月以降に建築確認を受けた新築住宅については、「省エネ基準適合住宅」であることが、住宅ローン控除の必須要件とされた。※下図参照

 

省エネレベルの異なる住宅が混在する状況に

 

 上記の通り、新築住宅にかかる住宅ローン控除要件が、最低でも「省エネ基準適合住宅」とされたことは、過渡期の措置であり、2025年4月以降の建築確認申請を行う新築建物については、省エネ基準適合が義務化される

 

 また、省エネ基準適合住宅よりもより高性能な住宅には、さらに減税額が多くなる支援措置となっており、今後、省エネ基準適合住宅から認定長期優良住宅まで、異なる省エネ性能の住宅が混在することになる。さらに、新築時に非適合であった中古住宅も、リノベーションにより省エネ基準に適合させることは可能で、築年数が経過した住宅であっても高性能な住宅も存在することになる。

 

 住宅建築物に関わるエネルギー消費(業務部門+家庭部門)は、他部門に比べ大きく増加しており、これらの制度(改正)は、建築物における省エネルギー対策推進に対する、国の強い意思の表れと受け止めてよいだろう。

 一方、マイホーム取得を目指す人たちにとっても、地球環境負荷の低減、省エネによる生活コスト削減、暑さや寒さに対する住み心地の改善ということに加え、建物の「資産価値」という観点からも、「省エネ性能」が、考慮すべき重要ポイントになってきたといえる。

 

省エネ性能によって資産価値に差が生まれる

 国は既に、2030年度以降の新築住宅に対し、ZEHレベルの省エネルギー性能をもつように誘導することを決定している(閣議決定)。当然ながら、今後は、省エネルギー性能を高めた住宅の建築、ハウスメーカー等の広告・宣伝活動も活発化していくだろう。住宅の省エネルギー性に対する関心が高まることで、非適合住宅の売れ行きと価格の低下という現象が起きていく可能性は高い。さらには、適合住宅の中でも「ZEHレベル」以上か否かといったことも、買主の購入判断に影響を与えることも、容易に想像できる。

 

 他方、マイホーム取得を目指す人々の間で、十分にこれらの情報がいきわたっているとは思えない。まだまだ非適合住宅の販売数がある中で(新築でも約2割が非適合)、売主や仲介会社が、省エネ性能についてあまり触れることなく売買をまとめてしまうことも少なくないだろう。なにしろ、制度自体が過渡期である上に、現時点において、省エネ基準の適合は、あくまでも「住宅ローン控除の要件」のひとつにすぎない。

 

 もっと、わかりやすく言うのであれば、省エネ基準非適合住宅は、今後の資産価値低下をにらみ、大幅な値引きを要求してもよいのではないかと思う。少なくとも、将来、生じるであろう「基準に適合させるためのリノベーション工事」相当額程度は…。

 

 国交省の推計では、新築住宅の省エネ基準適合率は約9割、ZEH水準は約3割となっている(2020年時点)。今年の酷暑に象徴されるように、地球温暖化が加速する中、「果たして現状の省エネ基準で十分なのか」という議論も、この先、生じてくることも考えられる。

 マイホーム取得を予定している方には、これらのことにも十分に情報収集したうえで判断されるべきと申し上げたい。