***娘の闘病記です。

 

       十分に注意して読んでください

 

 

 

 

 

 

 

 

今夜は満月・そして大潮

 

月の引力・潮の満ち引きは人の生き死にに関わりがあると聞いた事がある。

 

龍雲も見た。大きな物音、人の話し声も聞いた。

 

こんな時、ゆっくりと家に居れる筈がない。

 

 

19時前に病室に着いた。

 

 

昼間よりも数値は少し下がっている。

 

もう、自発呼吸している回数も少なくなってきていた。

 

呼びかけようにも、声を出したら一緒に涙も出てきそうで。。。

 

必死に、冷たくなりつつある手・足をさすった。。。

 

 

20時25分頃

 

さすりながらモニターを見ていると、心拍数がどんどん上がっていく!

 

120.。。140.。。150.。。

 

異常時になるアラームは部屋の音量を消してあったが、目の前のナース室からは聞こえてくる。

 

でも、誰も来ない!

 

160.。。170.。。

 

どうしよう。。。呼んだ方がいいのかな?。。。

 

押すよ。。。

 

 

ナースコールのボタンを押した。

 

当直のナースが来た。

 

「数値が異常に上がってきてます!」

 

私が叫ぶと、ナースは胸につながれている線や、機械を触るがどんどん数値は上がっていく。

 

「先生を呼んできます」と言って・・・、当直の医師が来たときは230を越えていた。

 

 

さっきナースがした事と同じ様に機械を触っていると、数値が下がり始めた。

 

「ダブル○○ですね。同時に2回感知する事がたまにあるんですよ」

 

110位にまでいつの間にか下がっているモニターの数値を見て言うと、すぐに出て行った。

 

 

「ビックリした~~。でも、今まで無かったのに、いきなりそんな2回感知するのかな?」

 

主人と話しながら、また足をさすった。

 

 

 

20時38分頃

 

 

今度は心拍の数値が下がり始めた。。。

 

75.。。70.。。65.。。

 

ナース室からアラームが鳴っているのは聞こえているいるけど、また誰もこない!!

 

今度はすぐにナースコールのボタンを押す。

 

娘A担当のナースが来た。

 

 

「今度は下がって来てるんですけど」

 

60.。。50.。。

 

線が体にちゃんと付いているか確認している間も下がり続けている。

 

50.。。45.。。

 

電話を取り出し誰かを呼んでいる。

 

「家族を呼んだ方がいいですか?」と、主人。

 

「呼んでください!」

 

 

40.。。30.。。

 

 

ああ~~~、どんどん。。。下がってる・・・・

 

いつの間にか看護長、医師が来ていた。

 

20.。。15.。。

 

 

私は、ただ、ただ立っていた。

 

そんな私を見かねた看護師長が

 

「お母さん、耳は最後まで聞こえてますよ!」

 

 

その言葉を聞いて、ハッとした。そして、

 

「Aちゃん、Aちゃん。。。」 と呼んだ。

 

私の声しか聞こえない。

 

後ろを振り返ると主人は必死にラインをしていた。

 

長男、長女に送っているのは分かっているけど。。。

 

「パパ!!もう最後なんだよ。もう、今しかないとよ!」

 

そう言うと、

 

「A・・・。A・・・」 と主人も娘の名を呼んだ。

 

10.。。8.。。。。

 

 

「Aちゃん。Aちゃん、ありがとうって言ってくれたけど、ママの方こそありがとう!だよ。。。

 

ありがとう。。。」

 

言いたい事は山ほどあるのに、頭が真っ白で言葉が出てこない。。。

 

ただ、ただ・・・、

 

2日前にありがとうと言ってくれた娘に、自分もありがとうを言う事しかできなかった。。。

 

 

 

0. 

 

 

 

 

 

「Aちゃん~~~、Aちゃん!!!!」

 

しばらくAの名前を呼び続けた。

 

 

 

 

「最後の。。。は、家族が全員揃われてからがいいですか?」と医師が主人に聞いた。

 

「長女は10分位で来ると思いますが、長男は県外なので遅くなるので・・・」

 

「それでは長女さんが来られたら、その時に。。。」

 

医師は部屋から出て行った。主人もラインの続きの為に部屋から出て行った。

 

 

私は急に思いつき看護師長に

 

「娘を抱っこしていいですか?」と聞いた。

 

「いいですよ」と返事が返ってくるが

 

でも、どうやって?

 

 

「後ろから抱っこでいいですか?私がベッドに乗ります」

 

「じゃあ、その前に、これ、はずしましょうね。。。」

 

 

私がつけてしまった人口呼吸器が、ようやく娘の顔からはずされた。。。

 

6日間頑張った証だろう。。。ほっぺが赤く、すりむいたような跡が付いている。。

 

「痛かったね。。。」 

 

そっとなでた。。。

 

 

「頑張ったね。。。」

 

 

そして娘の上体を起こてもらい、そこに私が入り込んだ。私はベッドの背にもたれかかり、娘を受け止めた。

 

 

入院前、心不全の為に横になって寝られず、何度こうやって夜中に抱っこしたことか。。。

 

髪をなでながら、娘の頑張りを看護師さん達に話した。。。。

 

 

 

もう、二度と娘に触れる事が出来ないなんて。。。

 

もう、二度と目を開ける事が、話す事が。。。できないなんて。。。。

 

 

いつの間にか、長女も部屋にいた。。。主人も、、、医師も。。。

 

そして。

『21時○分。。。   御臨終です。。。    』

 

 

 

 

 

 

娘Aの闘いが終わった。。。

 

生まれてから今日まで、19歳と20日。。。

 

難病と診断されて、11年と4ヶ月。。。

 

 

娘Aの体に異変がでてから13年と5ヶ月。。。

 

 

 

 

長い、長い・・・、闘いが・・・、

 

・・・おわった・・・・