夕方、長女と二人で家に帰った。

 

ラインのグループ通話があるのを今更ながら気づき、主人と試したりした。

 

洗濯して干して。病室に持っていくもの準備して。。。

 

今日も、ビールを飲んで横になった。。。

 

 

 

22時57分。ライン着信。

 

飛び起きてスマホを見る。

 

 

『ヤバそう』

 

 

二階から音がした。長女だ!

 

「準備できたー?」

 

「今、行くー」

 

私はすぐに動けるような服装で寝ていたので、髪の毛を簡単に結び直し、足元に置いていた荷物を持ち、玄関を出た。

 

運転は長女に任せた。

 

 

 

病室に入ると同時に,モニターを見た。

 

そして、力が抜けた。。。

 

『よかった。。。』

 

 

 

不整脈が続き、当直のベテラン看護師さんの経験から、今夜がヤマだと判断されたようだ。。。

 

みんなが最後を看取れる様にとの配慮をありがたく思う。。。

 

 

日付が変わった12時過ぎに長男も駆けつけた。

 

 

「さっきまでは危なかったんだけど。。。」と主人。

 

娘A、長男が帰って寂しかったのかな?

 

家族5人で静かな夜を過ごした。。。

 

 

 

5日目、月曜日。

 

朝、当直の看護師さんが申し訳なさそうな顔をされていた。

 

いやいや、逆にそれだけ配慮していただいて感謝しているのに。。。

 

 

 

週末休みだった先生方が次々と娘Aの病室に。。。

 

皆さん、週末には。。と、思っていらっしゃたようで。。

 

 

主人は、話が違うと医師に言っていた。

 

苦しまずに。。。というのは一貫して主人は言っていた。

 

週末には。。との医師の話だったので黙っていた主人が とうとう我慢できず訴えた。

 

 

何度も無意識に声を発し、激しく体を動かす姿は、痛みで苦しんでるようにしか見えなかった。

 

今使っている痛み止めも最大の量だ。

 

 

 

痛み止めの薬を変更した。

 

それは、もう、意識の回復は望めない覚悟で。

 

私の、『会話が出来るかも』。。。との願いはそこで途絶えた。

 

 

 

あとは、苦しまずに。。。それだけ。。。

 

 

昼過ぎに薬が変更されることになった。

 

 

長女と二人で娘Aを見ていた その時!

 

 

 

娘Aが目を開けた。

 

そして、口を動かし始めた。。。

 

 

ゆっくりと口を開け、そして軽く閉じた。

 

また、口を開け、そして、すぼませた口はそのまま、歯がガチガチと何度も、何度も、なんども。。。

 

 

んんっ!?これは!?

 

「Aちゃん、『ありがとう』って言ってるの?」

 

 

娘Aは又、口を開け、軽く閉じ、口をあけ、すぼませて歯をガチガチ。。。

 

さっきと同じ。

 

またまた、口を開け。。。。を繰り返す。。。

 

確信した。

 

『ありがとう』って言ってる!

 

 

「Aちゃん、ありがとうって言ってるの?」

 

 

私は問いかけるのが精一杯だった。

 

娘Aは私が理解してくれたと思ったんだろうか。。。

 

また眠りについた。

 

 

確かにあれは『ありがとう』だった。。。

 

こんな状況で『ありがとう』って言える娘Aはなんてスゴイんだろう。

 

こんな苦しい判断してしまった母なのに。。。

 

 

 

 

 

 

薬を変更すると、娘が声を出すのも、体を動かす事も減っていった。

 

それでも、薬の量は増えていった。

 

数値は大きな変化は無い。

 

でも、私と主人は言葉にしなかったが、確実に弱ってきているのはわかっていた。

 

 

夜、一度は帰ったけれど、じっとしていられない。気になってしょうがない。

 

娘Aは落ち着いているから大丈夫だ、という主人だったが、病室へ戻り娘のそばで一晩を過ごした。

 

 

 

6日、火曜日

 

朝一番の新幹線で長男は学校へ行った。

 

長女は仕事へ。。

 

一度家に戻った主人が昼前に病室へ。。。

 

いつもと同じ。

 

毎日娘Aの体を拭いてくれる看護師さん。

 

意識が無くても同じように接してくださる。おしもの世話もしてくださる。

 

ありがとう。。。

 

 

数値は少しずつ下がっている。気になるから病室にいたかったが、主人は私に家に帰るように言う。

 

そんなに疲れているように見えるのか。。。

 

又戻ってくると言って家に帰る。

 

 

夕方4時。まだ日は高かったが念の為、家の鍵をかけてシャワーを浴びる。

 

体を拭いて洗面所の扉を開けようとしたとき

 

どーんっ!!!

 

と、何か屋根にに落ちてきたのかと思った位ものすごい音がした。

 

あわてて廊下のドアをソーっと開けた。

 

玄関も、部屋も鍵をかけたはずなのに人の話し声が聞こえてくる。

 

『誰か居るの!?』

 

そのドアの鍵もかけ、急いで服を着て廊下に出た。(1分もかかってない)

 

もう、話し声は聞こえてこない。

 

一階の部屋全て見るが誰もいない。

 

ものすごい音がしたのを思い出し、2階に行くが本棚やタンス等、倒れたものもない。

 

窓から外を見るが、工事している所もないし、人影すら見えない。

 

シーンと静かだ。。。

 

 

なんだったんだろう。。。あの、ものすごい音。話し声。。。

 

 

嫌な予感がする。

 

早く病院に行きたい。

 

長女も病院に一緒にいくかもしれないと、長女が仕事から帰ってくるのを待った。

 

 

 

6時過ぎ。長女帰宅。「パパは来なくていいって言ったよ」という。

 

「何かあったら連絡するって言ってたから。。。」と・・・。

 

 

「分かった。ママ一人で今から病室にいくよ」

 

だって、後悔したくないから。。。」

 

そう言って、車で病室へ向かった。

 

 

 

大きな音がしたからだけじゃなく、

 

今日は、満月。そして大潮。もうすぐ干潮の時間。

 

 

 

もしかすると、今日かも。。