久しぶりの更新です。
なかなか時間が取れず、前回からずいぶん間があいてしまいました。
さて、今回も自作の句をいくつか掲載します。
また、いつものように、歳時記で見つけた先人の句も鑑賞してまいります。
![](https://stat.ameba.jp/user_images/20240616/13/mukuno-hosomichi/4e/73/j/o0640042715452169555.jpg?caw=800)
先日、夕方に揚羽蝶を見かけました。
ひらひらと動く羽が、夕焼けの色をあちこちに振り撒いているように見えました。
さて、歳時記にはこんな夏の蝶の句が載っていました。
杉の間を音ある如く夏の蝶
星野立子
まっすぐに伸びた杉の木の間を、夏の蝶がひらひらと飛んでいる光景でしょうか。
直線的な杉と、不定形の曲線を描いて舞う蝶の対比が素敵です。
そんな蝶の飛ぶ音が聞こえるとしたら、それはいったいどんな音なんでしょう?
鈴のような音色でしょうか。
笹のような音でしょうか。
潮騒のような響きでしょうか。
様々な想像が膨らむ綺麗な一句だと思います。
![](https://stat.ameba.jp/user_images/20240616/15/mukuno-hosomichi/f2/79/j/o0545032115452201874.jpg?caw=800)
雨上がりに何気なく窓を見ていたら、雀が筋交いのそばまでやってきました。
着地しようとした瞬間、つるっ。
脚がすべりました。
雀は慌てて羽ばたいて、隣にあった木の枝へ止まっていました。
「雀の子」の俳句ですぐに頭に浮かぶのは、やはりこちらです。
雀の子そこのけそこのけ御馬が通る
一茶
一茶の優しい視線を感じる句です。
まるで人間の子どもに呼びかけるかのように、
「お馬さんが来るよ。あぶないよ」と雀の子に話しかけているのが面白いですね。
子雀たちが嬉しそうに遊んでいる姿も目に浮かびます。
子どものときから知っている句ですが、この句が字余りだということに今頃気付きました。
5・8・7 だったんですね。
字余りになればリズムが悪くなりそうなのに、この句はむしろとてもリズムがいいです。
「そこのけそこのけ」と繰り返される言葉に心地よいリズムを感じます。
![](https://stat.ameba.jp/user_images/20240616/13/mukuno-hosomichi/3b/79/j/o0640042715452169557.jpg?caw=800)
人通りが少ない木陰に、帽子が一つ置いてありました。
周りに人影はありません。
誰かが忘れていったのか、風で飛ばされたものなのか。
木陰に帽子という組み合わせが、とても好ましく感じました。
歳時記で夏帽子の句を見ていると、やはり暑さを感じる句が多いように思います。
その中で、一つ珍しい句がありました。
手にとれば月の雫や夏帽子
泉鏡花
暑さをまったく感じない、むしろ涼しげな一句です。
夏帽子という季語に、こんな使い方があるんですね。
昼間、誰かがかぶっていた夏帽子が、どこかに置き去りにされ、そのまま夜になってしまったのでしょうか。
もしかしたら、その帽子は逆向きに置かれていて、月の光を帽子の中に集めているのかもしれません。
それを手に取ったら、月光の「雫」が数滴こぼれてきたと作者は感じたのかもしれません。
幻想的で素敵な句だと思います。
![](https://stat.ameba.jp/user_images/20240616/14/mukuno-hosomichi/92/b8/j/o0294036515452174682.jpg?caw=800)
外を歩いていると、風に乗ってラジオの音が聞こえてきました。
音のする方を見ると、若葉が繁る枝にラジオが吊り下げられています。
その木のそばで、今まで農作業をしていたとみえるおじいさんが休憩していました。
歳時記には、新樹の句が多く掲載されていました。
どれもそれぞれに趣きがあるのですが、今回はこの句を鑑賞します。
日の新樹雨の新樹と色重ね
稲畑汀子
新樹が、晴れの日や雨の日を重ねるうちに、次第に色を重ねて、深い色になっていく様子を表しているのでしょうか。
日光に透ける葉の色。雨に濡れる葉の色。
それぞれの美しい色が、畳み掛けるように「日の新樹雨の新樹」と重ねて繰り返されています。
天候や時の経過と共に移り変わる葉の色を、17音の中におおらかに包み込んだ句だと思います。
![](https://stat.ameba.jp/user_images/20240616/14/mukuno-hosomichi/76/df/j/o0480037215452171577.jpg?caw=800)
今の時期は田んぼに水が入っているので、毎晩カエルの声がよく聞こえてきます。
それをBGMにしながら、仕事の後に家で三味線の練習をするのが私の日課です。
曲を弾いていると、旋律によって、朝陽や水しぶきなど様々な色が頭に浮かびます。
そこでふと、もしこの三味線の音が、夜空に色を添えているのだとしたら面白いかもしれないと思いました。
それなら、もちろんカエルだって鳴き声で夜を彩っているのでしょう。
そんな発想からこの句を作りました。
歳時記では、蛙は春の季語になっています。
夏の方がよく鳴くのに不思議だなといつも思っています。
そんな蛙の句の中で、楽しい句を見つけました。
弦楽器負ふ子ぞろぞろ昼蛙
中たけし
バンドのメンバーや、軽音楽サークルの若者たちが、ギターやベースを背負って歩いているのでしょうか。
ぞろぞろ連れだって、わいわい騒ぎながら、ガンガン音を出せる場所へ移動中なのかもしれません。
音を出さずにはいられない存在同士を取り合わせた楽しい一句だと思います。
さて、このブログも、気づけば1年を迎えておりました。
最初の頃に投稿した句は、自分でもかなり下手だと感じます。
それだけ、1年で成長したという証なのでしょう。たぶん。
下手でも句を作り続けるのは大事なんだなと再認識した次第です。
1年後には、もっと上達できるよう精進していきたいと思います。