日中はまだまだ暑いものの、朝晩の風が心地よく、少しずつ季節の移ろいを感じるこの頃。

そんな夏と秋が溶け合う情景を、拙いながらも俳句に詠みました。

ご一読いただければ嬉しいです。

また、いつものように先人の句を鑑賞し、学びを深めていきたいと思います。






猫じゃらし溢るるほどに収穫



草取りをして、取った草を袋に入れたら、中に入りきらなかった猫じゃらしが袋から顔を覗かせていました。
それがなんだか可愛くて、雑草を抜いたはずなのに、猫じゃらしを収穫したような気分になりましたニコニコ


先人が猫じゃらしを詠んだ句に、こんな可愛いものがあります。

父の背に睡りて垂らすねこじやらし
加藤楸邨

お父さんにおんぶされたお子さんが、そのまま寝てしまったのでしょうか。
小さな手には、猫じゃらしがぎゅっと握られています。

眠っているお子さんが愛らしいのはもちろん、猫じゃらしもとても愛らしいですラブラブ
慈しみに溢れた句だと思います。





夏の蝶逃げよ大気切り裂いて



先日、雀が蝶を襲っている様子を目撃しました。
蝶は空中を切り裂くかのように鋭く素早く飛んで、命からがら逃げていました。

俳句では、こんなふうに「よ」を使っていいんでしょうか?
勉強不足のため、分かりません。
「よ」は呼びかけを表す切字らしいですが、あまり使用例を見かけないので、この使い方が合っているのか自信がないです😅


ところで、歳時記を見ていると、素敵な夏の蝶の句がたくさん載っています。
例えば、こちら。

夏の蝶高みより影おとしくる
久保田万太郎

地面に落ちた濃く黒い影。
ふと見上げると、高いところに夏の蝶が飛んでいる。
そんな情景を詠んだ句でしょうか。
蝶そのものより、影に着目しているのが面白いですね。





暑し校歌聞きたき甲子園



高校野球では、試合終了後、勝った学校の栄誉を称え、校歌を場内に流します。
一度負けたら敗退。
そんな厳しい闘いの中、母校の校歌を一度でも多く聞きたい。
そう思いながら、試合を観戦しているこの頃です。


さて、「残暑」や「秋暑し」の句は、歳時記に数多く掲載されています。
私が好きなのは、以下の句です。

てにをはを省き物言ふ残暑かな
戸恒東人

暑いときは、話すことさえ億劫になりがちです。
「てにをは」すら省略し、最小限の単語だけで会話している、そんな場面を詠んだ句なのでしょうか。

残暑の気だるさを、ごく短い会話の中に見つけるなんて、発想が斬新だと思います。





頬紅のごとく色づく柿一つ



この間、一部分だけ丸く色づいた柿を見かけました。
太陽の当たり具合でそうなったのでしょうか。
その色づいた部分は、人間の顔に例えるなら頬の位置で、まるで太陽の色のチークを入れたかのようでした。


柿の句で有名なものは、間違いなくこちらでしょう。 

柿くへば鐘が鳴るなり法隆寺
正岡子規

秋ののどかな景色を詠んだ名作ですね。
「くへば」という語を使っているのがいいと思います。
気取っていなくて、庶民の生活感をそのまま写し取っているようです。

私個人の感覚では、俳句で「食う」という言葉はなかなか使いにくい気がします。
やはり「食べる」に比べると少し荒っぽい感じがあるので。
それに、俳句は動詞をあまり使わないように作ると学んだので、句の中に食べ物が出てくる場合、私なら「食べる」「食う」という動詞は避ける気がします。
「食う」が使えるのは、俳句上級者だけなのかもしれないですね。





砲撃の無きこの空に揚花火



間近で花火を見ていたら、砲撃かと思うほど大きな音がして、少し怖い気がしました。
実際に砲撃を受けている国や地域は、花火なんて見られないでしょう。
花火が上がるこの空は、平和な空なんだとつくづく感じました。


歳時記で花火の句を見ていると、どの句も本当に素敵です。
特にきれいだと思ったのは、こちら。

昇降機花火の空へ上りゆく
丸山了

ガラス張りのエレベーターでしょうか。
花火が上がっている空へ、ゆっくりと上っていく。
だんだん花火に近づいていくというシチュエーションが、とても幻想的できれいですキラキラ
花火の句は、花火を見ている人が一点にとどまったまま詠まれることが多い気がします。
一方で、この句は花火を見ている人が移動しているので、珍しい句だと感じました。


いつも俳句を作るときは、必ず何度か推敲しています。
推敲しないと、とてもひどい代物で、自分でも下手すぎると感じるほど。😅
言葉をいろいろ変更してみたり、視点を変えてみたり、四苦八苦して句作する日々です。
一句につき、だいたい10~20回くらい作り直してブログに載せていますが、なかには30回以上推敲している句もあります。
それでもこの程度の駄句しか作れませんが。
他の方はどれくらい推敲して一句を仕上げるものなんでしょう?
いつか、さらりと素敵な句が作れるようになれるといいのですが。