法曹養成制度検討会議のでたらめぶりとか、政府の関係閣僚会議なんかをみてると、自分の身内はローには絶対に行かせるわけにいかないなあと思います。
しかし、ロー志願者の多くは、こんな会議を逐一みているわけではないので、いちおう、その最前線に近いところにいた人間として、ロー志願者の方々に、【重要説明事項】として、下記の件をよく検討した上で、ロー進学を検討してもらったほうがいいだろうと思い、書くことにしました。
参考資料:http://www.kantei.go.jp/jp/singi/hoso/dai3/siryou2_2.pdf
→とくに、資料第4の「2 法科大学院について」参照
1 下位ロー(合格率悪いロー)を出ても、司法試験受験資格を得られらない可能性があります。
法曹養成制度検討会議とりまとめ(本項では単に「とりまとめ」といいます。)において、そのような結論に至りました。政府もこれを重視するでしょう。
2 下位ローに行くと、以下のとおりサービス低下の恐れがあります。
・裁判官や検察官の実務教員が派遣されなくなる恐れがあります(1年以内に検討される)
・補助金が削減され、その結果、奨学金の停止・減額や学費減免措置の停止、学費の値上げといった問題が生じる可能性があり得ます。
3 司法試験の回数制限が緩和されます。
これまで5年で3回のチャンスが有りましたが、5回に増えます。
ただし、過去に三振した人はこれによって救済されません。
4 法科大学院で学んだ学識は、卒業後5年で消滅します。
上記3との関係で、「5年で」という受験制限がある理由は、
法科大学院における教育効果は5年を経過すると消滅するから
(http://www.moj.go.jp/content/000112068.pdf
p20に「受験回数制限制度は,旧司法試験の下での問題状況を解消するとともに,プロセスとしての法曹養成制度を導入する以上,法科大学院における教育効果が薄れないうちに司法試験を受験させる必要があるとの考え方から導入したもの」ということから、そのように解釈される)
つまり、法科大学院がいくら高邁な理念やもったいつけたような高度の学識を教えているとしても、これは5年で消滅し、無意味化するそうです。政府の会議で言ってるのだからこれは信憑性が高いといえます。
5 法科大学院の授業は、司法試験とは無関係です。
司法試験の受験指導が禁止されているからです。
だから、法科大学院の授業にはなるべく最小限の力のみを投じることとし、試験勉強に最大限のリソースを投下することを心がけて下さい。
6 法科大学院の教員の多くは、司法試験非合格者です。
司法試験のことを知らないおそれがありますので、指導を受ける際には、十分注意して下さい。
なお、合格者か非合格者かは必ずしも明示されていません。ご自身でお確かめ下さい。
7 法科大学院の授業が実務に役立つことはありません。
事実上、ある分野への興味のきっかけになったものはありますが、実務に役立つのはなんといっても修習・そして仕事に就いたあとの職務経験であり、ローの座学で身につくものではありません。
外科手術の技術は、実務に就いていない学者さんがいくらレクチャーしても身につかず、経験で身につくものです。それと同じことです。
実務的なことがされていても、それは、雰囲気を味わう程度のものですから、まちがってもそれで「私は実務的なことをマスターしたんだ」と思ったり、外部に言ったりしないようにしましょう。就活の席でそんなことを言ったら若干残念扱いとなります。
8 就職は確保されていません。
残念ながら、合格しても、一部の方を除いて、就職できない可能性がかなりあります。
9 就職してもすぐに退職・給料カットを余儀なくされる可能性があります。
統計は出ていませんが、就職率ではなく、就職後1~2年での退職率のほうが個人的には重要だと考えています。そして、これは体感的ですが、その時点での退職・給料カットが増えているとも聞きます。つまり、弁護士になっても、生計を維持するだけの収入が保障される期間は、非常に短くなっているといえるでしょう。
10 弁護士会費がかかります。
入会時、一番安い弁護士会に登録するのでも20万円ほどかかります。
そして、毎月安くて3万円程度の会費を支払う必要があります。
福岡県の場合、若手は優遇されますが(1年目3万、2年目3万5000円)、3年目以降は毎月6万円かかります。ご注意下さい。
なお、弁護士会費未納は、弁護士会的には、その懲戒事例を見ている限り、業務上横領よりも罪が重いと見ることもできます。刑事処罰こそされませんが、退会命令を受けることになります。
11 ローの学費奨学金債務のほか、合格後は、修習貸与債務がかかります。
たとえば、これらの合計が700万円を超えている場合、毎月5万円を支払うとすると、140ヶ月かかります。要するに、140ヶ月は、これら債務弁済+弁護士会費のために、弁護士バッジを持っているだけで、約11万円(福岡県の場合)がすっ飛んでいきます。
ついでにいえば、それなりの稼ぎになると、国保税が毎月6万円以上かかることになりますし、国民年金が1万4000円ほどかかります。
国民年金だけだと、老後、最低のサービスしか受けられませんし、厚生年金のような傷病手当も付かないので、倒れたら人生が終了します。
それにそなえて、所得補償保険などの補完的な保険に入るか、何も入らないかという選択を迫られます。
所得補償保険はまあまあ高いので、掛け捨てながら毎月2万円ぐらいものには入っておいたほうがよいでしょう。
これだけで毎月20万円が消えゆくことになります。
なお、20万円というと、法テラス破産事件を2件こなさないとペイしません。
毎月破産を2件受任できるかどうかが、最低限の経費を賄ううえで必要です。
それを毎月毎月、一生コンスタントに続けられなければ、廃業するしかありません。
これで老後に得られる福利厚生は、最低の国民年金だけです。
これで生計を維持することができるかは、節約次第です。
個人的には、こうしたことはあまり望ましい傾向だとは思えませんが、政府及び法科大学院関係者である「有識者」という方々、そして日弁連の一部の方々が、こうした制度を志向され、なおかつ今でもこの制度を基本的には堅持する(日弁連曰く「法科大学院を法曹養成制度の中核とする」「プロセスが大事」)方向で続けるようですから、皆さんは、安心して大船に乗った気になって法科大学院の受験をして下さい。
なお、政府がいきなり態度を変えたりする可能性もありますが、これは国策ですから、国の裁量であって、外部の人間には如何ともし難いものであります。どうか、受験生の皆様は、政府や有識者の会議の動向にも目を配りつつ、さわやかなロースクール・ライフをエンジョイして下さい。