弁護士はひとつの事務所しか構えられない~複数事務所の禁止はナンセンスだと思います。 | 向原総合法律事務所/福岡の家電弁護士のブログ

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日常の法律問題や、弁護士業界のネタ、その他をつらつらと書こうと思います。

お客様や外部の方とお話していると、しばしば
「先生の事務所には、支店はないのですか?」
というご質問をいただくことがあります。
当事務所には、ざんねんながら、支店はございません。
これは、弁護士法20条3項があるからです。条文を引用します。

(法律事務所)第20条 3 弁護士は、いかなる名義をもつてしても、2箇以上の法律事務所を設けることができない。但し、他の弁護士の法律事務所において執務することを妨げない。


つまり、法律事務所は、複数の事務所を構えてはいけないことに、法律上なっているのです(複数事務所設置の禁止)。
もっとも、弁護士「法人」については許されています。
が、当事務所は法人化していないので、複数の事務所(支店)を建てることは許されないのです。

なぜこんな規定があるのでしょうか。
弁護士法ができた当時(昭和24年)は、わが国の法律事務所といえば、弁護士が一人か二人の小規模事務所が圧倒的多数でした。
そのような事務所形態を前提とすると、弁護士が複数の事務所を設置すると、弁護士が各事務所に常駐できるとは限らず、よって各事務所をきちんと監督することが困難になり、場合によっては、弁護士資格を有しない人(「非弁」と称されます)が入り込んでしまう危険があり、それを防止するためといわれています。

これに対し、弁護士「法人」であれば、多数の弁護士の存在が予定されるため、複数の事務所を設置しても、各事務所にそれぞれ弁護士を置いて監督できると見込まれるため、例外的に複数事務所の設置が認められています(しかも、弁護士が常駐する必要がありません(弁護士法30条の17但書))。

しかしながら、近年、法律事務所も弁護士が多数所属するようになり、複数事務所を置くとしても、弁護士の各事務所に対する監督は十分できる時代になっていると思います。
そうだとすると、弁護士法20条3項が定める複数事務所設置の禁止というのは、時代に合わないものになり、逆に、法的サービスを利用しようとする皆様にもっと気軽に相談ができる場所を設ける足枷になっています。

皆様の利便向上のため、はやくこうした時代に合わない規制が改正されることを切に望むとともに、私たち弁護士としても声を上げていく必要があるように思います。