一年前と同じような光景が今ここにある。
だけど、その本質は昨年と今年では全く違う。
今から一年前、我が子snowは心を無にし、テレビの前にいた。
現実逃避とでもいうのだろうか。
ゲームに没頭し、現実世界から逃げるようにしてその日をひたすら待つ。
その姿を見るのは母としてとても辛かった。
彼は『絶対に落ちた』と思っていた。
浪人したその一年を見守ってきた母。
あんなに頑張ったのだからきっと何とかなっている。
合格の神様は微笑んでくれる。
きっと微笑んでくれるに違いない。
そう言い聞かせていた。
息子の前で平静を保った。
もし不合格でも道は開ける。
頑張った事実は本物なのだから堂々としてその日を迎えればいいのだと。
ふと洩らすsnowの悲痛な言葉を全てプラスに変えていった。
バスルーム流した涙は半端ない。
我が子の心の痛みを全て受け止めるにはあまりにもしんどい期間だった。
だから、今、同じように合格発表を前に苦しんでいる人の気持ちは痛いほど理解る。
私自身、そんなに精神的に強い方ではない。
冷静に見えても実は血圧を測ってみるととんでもない数値を指し示すこと多々。
(決して高血圧の人間ではない。)
だからバクバクし続ける心臓を落ち着かせ、息子の前で平静を保つのは本当にしんどかった。
合格発表はネットにてsnowと一緒に見た。
ゆっくりとスクロールし、受験番号を追っていく―――
…あった……
あの瞬間、snowに抱きついた。
ずっと堪えていたものが噴き出した瞬間。
高ぶる感情は息子を超えていたかもしれない。
息子より先に泣いてしまった私は母親失格かもしれない。
そんな私の前で息子もまた同じように感情を高ぶらせていた。
「…あった……」
合格を待つ間の固く険しく、時折見せる絶望の表情はもうそこになかった。
今年の東大合格発表。
あと少しとなった。
私たちもまた、一年前のあの瞬間をきっと思い出すだろう。
皆さんの不安な心が解放される日となりますよう願っています。