カルトキャンペーン・ザックのぼやき1-1 | mukadeのblog

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PCゲーム「NWN」のblogから引っ越してきたこともあり、しばらくはそのこと中心かも。

死者の沼の洞窟から救出されて、ネヴァーウィンターの街に滞在すること三日。

荒れ果てた村に帰るのは、億劫だが仕方が無い。

街での最後の晩酌を、とベガーズネストの安い酒場で飲んでいるわたしに、

一人の大柄な男が話しかけてきた。


「なぁ、おまえはジィかけるか?」


丸太のように太い腕、

身体のあちこちに見える細かな傷跡、

そして人当たりのよさそうな顔をしたその男は、

大量の羊皮紙とインク、ペンを持っていた。

見覚えがある。

私たちを救ってくれたネヴァーウィンターの部隊にいた男だ。

私が頷くと、どさっとテーブルに持っていたものを置く。


「よかった、じつはおねがいがあってよ、ぼーけんしたことをのこしておきたいんだが、オレ、ジィかけないんだよね。

だから、おれのしゃべることをかきうつしてくれないか?」


部隊の仲間に頼めばいいのでは?


「いやぁ、コウキなリーダーにたのんだんだけど、あのヒトもあんまりみたいなんだよねぇ。ほかのヤツはほかのヤツでじぶんのことかいてるみたいでさ。」


何も酒場で頼まなくてもいいんじゃない?


「サケのみながらでないと、したがまわらないだろ。」


やれやれとため息をつくわたしを見て、大男は表情を曇らせる。


「もしかして、すごくイヤか?イヤなら、ほかのやつにおねがいするけど…」


いいわ、とわたしは応える。一応は恩人なのだ。恩人のお願いは聞いておくべきだろう。

わたしの返事を聞くと、大男は顔を輝かせて言った。


「お、サンキュ!じゃ、まずサケだ、マスター、エール、2ガロンな!おまえものむだろ?」


わたしは1ガロンもエールは飲めない。


そして男は語りだした。(注:以後はわたしが書いた文章なので漢字も含む)


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ザック(大男の名前)は傭兵斡旋所であるトレードオブブレーズで、

新たな仕事仲間を眺めていた。

ザックは海賊の町・ラスカンのはぐれ一派の討伐をする、

ネヴァーウィンターの傭兵として雇われたのだ。

ラスカンで権力争いに敗れた海賊たちが、

ネヴァーウィンター周辺の集落を襲っていると言う話を聞いてはいたが、

被害はかなり深刻なものらしい。

ザックは能天気に一人一人品定めする。

どれも、ここらでは名を知られた冒険者たちだ。

隊長に立候補したダイアモンドなんとかという男はシュゲンジャという。

自分のことを高貴と言い張るおもしろい男だ。

ジェストという男とワルキューレとか言う女とは一緒に前線で戦うことになりそうだ。

ジェストのほうはターバンをした、やや顔色の悪い男でグレートソードを佩いている。

ワルキューレという女はパラディンになりたいとか言ってるが、

結局やることは自分と同じ、殴ることになりそうだ。

ラガートと言う男とモカという女は魔法を使うと言う。

ラガートはドルイドで、モカはウィザード。

自分の専門外だ。

イエロというノームは酔っ払っているだけで、よく分からない。

「…とりあえず、君たちは第五部隊として、前線基地として使っている集落に向かって欲しい」

ネヴァーウィンター市の伝令役、エルミネの言葉に頷き、各々席を立つ。

出発は馬車の準備が出来てからということで明後日。

とりあえず、新たな仲間を飲みに誘う。


出発の朝、前日の安酒でつぶれているモカやイエロを馬車に積み込む。

隊長のダイアーとザックだけがぴんぴんしている。

「みんな酒に弱いな」と笑うダイアー。

ザックもイスを抱きかかえたままのワルキューレを馬車に積み込みながら笑う。


馬車はなんなく、集落につく。

襲われた集落を前線基地にしているので、

周りでは焼けた死体の臭いが充満している。

挨拶に行った第二部隊の隊長が全部男の死体だと話す。

女は一人残らず消えていたらしい。

賊に連れ去られたのかどうかも不明だ。

とりあえず、その日も飲むが、熱心な仲間は情報収集をしている。

これはザックの仕事ではない。

申し訳程度に側耳だけは立てておく。

話を聞いてきたダイアーとワルキューレが深刻な顔で話す。

モカがその話を聞き、自分の知識も加えて解説する。

ザックが聞かされた

話はラスカンの賊に関わるようなものだけではない、

この地方の酷く不気味な昔話だった。


100年以上前のこと、この地域で疫病が流行った。

それは『悪疫の女王』と言われた魔術師による謀略だった。

疫病に取る恐怖で支配しようとしていた彼女は、

勇敢な冒険者により死者の沼に封印されていると言う。

死者の沼はときおり、人を招き入れるという噂がある。

これも『悪疫の女王』の封印と何かしら関係があるのかもしれない。


ザックには、どうでもいい話に聞こえた。

少なくとも今の自分たちには関係が無い。

ワルキューレも同様のようだ。

「そんなことよりも…、今度、貴族のボンボンどもで編成された部隊がやってくるんだって。

 下手すりゃうちらのその指揮下らしいよ。」

ため息をつく彼女に、苦笑する仲間。

ただ、一人の例外を除いて。

「高貴な者が下々のものを指揮する、当然のことではないか。」

ダイアー、自称・高貴なものは言う。

ザックは、そうですよねと適当に相づちをうって流す。


翌日、共に作戦行動をする部隊として第六部隊と第七部隊を紹介される。

第六部隊は普通だが、

第七部隊の女隊長サイオラとか言う貴族の娘は、全く頼りにならなそうだ。

ただ、ダイアーだけは、膝をつき必死に礼を尽くしている。

イエロが呟く。

「本当に高貴なのか?」

それは全員の心のツッコミである。


我々は先発隊として出発し、第六、第七部隊が後方に続く形で進軍することになった。

目指すの『死者の沼』

そこにラスカンの賊が潜んでいる可能性が高いのだ。

ザックは深呼吸をする。

久々に暴れること出来る、そんな予感がした。


(続く)