「民芸」日本デザインに脚光 パリで展覧会 | 無印良品

「民芸」日本デザインに脚光 パリで展覧会

 パリのケ・ブランリ美術館で、日本の「民芸」運動を紹介する展覧会「日本の民芸精神」が開かれている。パリ中心部のポンピドー・センター内の仏国立近代美術館では、新しい常設展示室のうちデザイン部門の大半を、日本の建築と家具が占めていた。日本人の現代デザインに注目が高まる中、その歴史的な背景も含めて評価しようという流れがあるようだ。


 2年前、エッフェル塔近くに開館したケ・ブランリ美術館。展示はアフリカなどの「原始美術」が中心で、常設展に占める日本の割合は小さかった。


 民芸は柳宗悦が1920年代に始めた、日用品の中に美を求める運動だ。本格的な紹介は、仏国内では初だという。「ミンゲイの精神は、最近フランスで人気の高い『無印良品』のデザインなどにも通じる」。キュレーターとして監修したジェルマン・ビアットさんはそう言った。


 今展は日本民芸館(東京)の所蔵作を中心に約150点。朝鮮王朝の白磁や、北海道から沖縄までの民芸品、棟方志功の版画など、柳にゆかりの深い作品が並ぶ。シャルロット・ペリアンら外国人の作品や、宗悦の息子である工業デザイナー柳宗理の食器も併せて展示。民芸運動を、より広い時代的・国際的な文脈で再認識する意図が感じられた。


 ポンピドー・センターに足を運ぶと、「表面とインターフェース」と名付けられた建築・デザイン部門の真新しい展示室が目を引いた。12人(組)の建築家やデザイナーの作品が並べられているうち、実に8人(組)までが日本人だったからだ。


 建築家坂茂(ばん・しげる)の手がけるポンピドー・センターのメッス分館(建設中)の模型や、石上純也、吉岡徳仁、喜多俊之らのイス。「彼らは軽く透明な材料を用いて、究極的には無に近づく」とパネルにあった。紙や木、薄い鉄板など日常的な材料を使い、シンプルで美しい作品を生む。無印良品にもつながるその意匠性は民芸運動と無縁ではない。


 22日からはケ・ブランリ美術館に近いパリ日本文化会館で、「WA(和) 現代日本のデザインと調和の精神」というデザイン展も始まる。


 民芸展に協力した新見隆・武蔵野美大教授は「朝鮮や沖縄など『周縁』の文化を掘り起こし、それらを『合金化』することで新たな民衆文化を作ろうとする戦略が民芸運動にはあった」と、運動の現代的な意味を説く。


 フランス人にとって「ミンゲイ」という言葉が、日本の現代デザインを理解するうえで一つのキーワードになりそうだ。


出典:朝日新聞