息をはずませているお兄さんにお金を払うと、ベロタクシーは来た道を帰っていきました。
降りたところは、交差点でした。ここから坂がもっと急になります。
「ああ、ここだったんだ」
すぐ目の前に、見覚えのある鉄塔がそびえていました。ライトアップされて、人々がそこに向かっています。
東京タワーでした。
「あの人、途中までしか行けない、なんて言ってたけど」
「ここまで来てくれれば御の字だね」
同じように見に来た人たちの流れに混じって、私たちも坂道を上がっていきました。
近づくにつれ、タワーの足元に、群集のシルエットが浮かび上がってきました。キラキラ光る照明や音楽の下、親子やカップルが、そぞろ歩いています。子供たちは、アトラクションに歓声をあげています。
「すごい人だね」
「タワーに昇る?」
「うん」
入り口から、行列がのびているのが見て取れました。
「あれ?」
行列は外へのびています。建物の外のぐるりの闇に目をこらすと、行列が浮かび上がってきました。100人以上はいるでしょうか。辛抱強く立っています。
「うわあ」
受付でたずねると、1時間半待ちとのこと。
「どうしよう」
「これから飲み会だし……」
それだけ待って、昇っていたら、時間が足りません。
チケットを確認すると、期限はありません、いつ使っても良いですとの返事。
「また今度にしようか」
「そうね」
私たちは東京タワーを後にしました。
少し離れたところで振り返りました。タワーはオレンジ色に輝き、それ自体がクリスマスツリーのようでした。空に小さく光る星も、ライトアップに一役買っていました。
おもちゃ箱のような音楽が、かすかに聞こえていました。
