昨日、電車を降りようとしてドアの前に立ったら、肩になにかぶつかった。背広姿のおじさんが、私のすぐ目の前に、ビニールの袋をかかげていた。私が座席に置き忘れた荷物だった。
ごま塩の髪にかるくパーマをかけ、ややくたびれて怖い顔をした、50くらいのおじさんだった。ガムをかみながら、手をヌッとつき出していた。荷物を私にぶつけたのは、「もしもし」というサインだったらしい。声をかけなかったのは、ガムのせいか、無口な性格のせいか。(無言ムードが中年にも広がっている、なんてことは言わないけど、ちょっと考えちゃった)
「すみません、ありがとうございます」と頭をさげて袋を受け取ったら、一瞬恥ずかしそうな顔をして、でもかぎりなく無表情のまま、ガムをかみかみ行ってしまった。彼も同じ駅で降りるのだったらしい。
人ごみにもまれて階段をおりていくおじさんの背中は、ちょっぴりシャイだった。