月に一度、多くても二度。
私には、どうにも憂鬱な仕事の日がある。
昼過ぎから夜までのシフト。
そして、そのお相手は……かのお局様である。
私たちの勤務には、食事時間など組み込まれていない。
ちょっと休憩してお茶を飲んだり、お菓子をつまんだりする程度だ。
ところが、お局様は料理好き。
そして、承認欲求もなかなか強めでいらっしゃる。
そうなると、どうなるか。
そう、夜ご飯が登場するのである。
もちろん、ただ食べればいいわけではない。
大げさなくらい褒めなければならないし、後日、お礼の品までお渡ししなければならない。
これぞ、恐怖の悪循環!
彼女の言うところの「食事の時間」が近づくと、いそいそと料理が始まる。
「レンジにかけて!」
「お皿を並べて!」
「お茶を用意して!」
私はいつの間にか、食事会のスタッフに任命されている。
いやいや、私は家でご飯を食べますので。
「家族が待っているので」
「家に食事を用意してあるので」
「夫が待っているので」
みんな、それぞれの理由を並べて丁重にお断りする。
しかし、そんな言葉はどこ吹く風。
家で下ごしらえをしてきたのであろう料理が、次々とテーブルに並んでいく。
料理は、決してまずいわけではない。
むしろ、お上手なのだと思う。
ただ……いささか冷凍庫の香りがするものや、少々年季の入った匂いが漂うものもある。
それでも、ありがたくいただく私。
少々のことには目をつぶる。
ここで平和を守るためなら、多少の犠牲は仕方がない。
一方、好き嫌いが多く、食べられるものがほとんどない職員もいる。
その人は、苦手なトマト料理をこっそりビニール袋に処理したそうだ。
さて、戻ってきたお局様。
普通なら、食べられなかったことに気づきそうなものだが……。
「もう食べたの? 好きなのね。また作ってくるわね!」
……恐るべし。
彼女の記憶の中では、好き嫌いの多い職員も、すっかり料理のファンになっていたらしい。
そして私はというと、食事をいただいた翌日か翌々日には、お局様が喜びそうな何かを持参する。
もちろん、お礼の品である。
まったくもって、アホらしい。
しかし、これを怠るとどうなるか。
「あの人、お礼もしないのよ。あなたと違って!」
ほかの職員に、こそこそと悪口を言われるのである。
料理をいただき、褒め、さらにお礼の品まで差し上げる。
いったい私たちは、何をしているのだろう。
そんな一連の出来事を、みんなで共有している私たち。
今日もまた、そっとため息をつく。
ああ、憂鬱なシフト。
次の勤務まで、どうか平穏な日々が続きますように。
