書名 民王
著者 池井戸潤
感想 (゚з゚)イイカモ?
主題だけを見て、「君の名は。」を思い出してくれたら、それで本作品の説明は半分終わったようなものだ。
最近本屋で平置きになっているハードカバーを見て気になり手に取ったが、2009年に連載していた作品。
2009年当時は麻生内閣で民主党政権が始まる少し前のころ。混乱した日本政治を踏まえて、書き上げられた作品と思われる。
内容は総理大臣の父親と学生の息子の身体が入れ替わって大騒動!というストーリー。正確にいうと入れ替わったのは頭というか心というか。とにかく20代そこそこの学生が突然、総理大臣の役目をこなすことになり、国会は大混乱となる。
遊び惚けていると思っていた息子が実は意外とまじめだったとか、政界の倫理に染まっていた父親は昔は理想に燃えていたとか、感動する場面もある。
登場人物たちはそれぞれ魅力があり、掛け合いもテンポよくユーモアに溢れている。コメディ劇場を見ているようで楽しい気分になる。普通に面白い。
気になったのは、黒幕が開発した心の(身体の)入れ替え技術について方法や影響など、ほとんど言及されていないことだ。科学的な説明は一切ない。
本作品は「君の名は」と同様にファンタジーだ。、現実ではありえない設定を一つ持ってきて、それを軸にストーリーを展開する。
もちろんこの手法は悪いわけではないのだが、作品のなかでその設定(異常な現象)に特別疑問をもたず、世界に与える影響を考えない登場人物たちにどうしても違和感を感じる。
もし心を自由に入れ替えることができたなら、あらゆる犯罪が可能になる。なんなら不老不死さえ実現できる。世界が変わる技術だ。しかしいい大人の登場人物たちは、そんな技術に翻弄されながら、選挙や就職など個人的な問題を一生懸命に考えている。そんな場合か?
透明人間になった男子中学生が、真っ先に女子風呂に向かっていく。それくらい軽い感じのストーリーです。