紺美のブログにコメントを寄せて頂き本当にありがとうございます。多くの方が読んでくださっていることに心から感謝申し上げます。

 

 妹は言います。

「私の人生振り返り、思い残すことはない。ただ、いずれ寝たきりになり、世話をしてもらっても、ありがとうも、ごめんねも言えなくなる私は、何の為に生きるのか?」と。

「こんな私の気持ち分かる?」

 

 どこにもぶつけようのない怒りや切実な思いを私達に問いかけてきます。私達はその問いにどう返答したら良いのか・・・「分かるよ」ってたった4文字の言葉が中々言えませんでした。

 

 妹は自分にはもう時間がない・・・と焦っていました。自分の体が動けるうちに、自分の言葉で話せるうちに・・・と。

 

 そんな時、NHKからの取材の申し出がありました。悩んだ末、自分の今の苦しみや今の思いをさらけ出す方法は他にないと判断し、世の中に議論の問題提起が出来れば・・・そして、自分と同じように苦しんでいる人々の力になれるのなら・・・と、何度も話合いをして受けることにしました。最初、妹は私達を心配して、プライバシーを配慮してという話もありましたが、今の現実と自分の考えや、事の重さを世論に問いかけ、伝えたいと・・・     

本当に妹が望むのであれば、何も飾らない自分たちをそのままさらけ出して、テレビを見て下さる方々、個人個人の受け止める判断に委ねようと、私達は決心したのです。一人の人間として自分の決断を影のあるものにしてほしくなかった、堂々としてほしかったのです。

 

 スイスのバーゼル郊外から、車で30分ほど走りたどり着いた施設があった場所は、物静かで、淋しそうなところでした。

私達は、とても言葉に言い表せない複雑な、どうしようもない気持ちを抑えながら、車から降りた時、妹は、「私、ここ嫌いじゃないよ。」

「この空気、雰囲気、故郷に似ていて、故郷に来たみたい・・・」と。

私達も「そうだね・・・」と頷きながら、涙がこみ上げてきました。

故郷とは、私達姉妹が育った小さな城下町です。決して、妹と私達にとって、そんなに楽しい良い思い出のある町ではないけれど、妹にとっては、暖かく包んでくれた友人たちがいる町、亡くなった“おばあちゃん”と一緒に暮らしていた町、そして自分の命よりも大事で、沢山の愛情を注いでくれた“そのあばあちゃん”が、きっと待っていてくれている、見守ってくれていると信じる、その思いから、あえて言っていた言葉だろうと思っています。

(勿論、私達への安心感を与えようという気持ちもですが・・・)

きっと、今頃は“おばあちゃん”と一緒に、「良子姉ちゃんと、直子姉ちゃんがね・・・」と、笑い話をしているでしょう。

私達の中では、妹は何故か、未だに10代でいるのですから・・・。

「ありがとうね・・・・いつも来てくれて幸せだったよ・・・」と最後の言葉を残して旅立った妹。

私達こそが、「私達の妹でありがとう 幸せだったよ」ともっともっと伝えれば良かったと。

 

 世の中は、新型コロナウイルスが蔓延して、皆様におかれましては、大変な毎日かと思います。お体を大事にお過ごしになられることを心よりお祈りいたしております。