私のベッドの斜め向の小津婆さんがベッドから落ちてしまった。
昨夜のことで、私はもう寝る準備に入り、カーテンを引いてもらい、仕切りをしていた。
何か大きな音がした。
ガタンと物が倒れる音。
まさか、小津婆さんとは思わなかった。
小津婆さんの隣のベッドの大崎さんが
「大丈夫ですか!!」と、足音をバタバタさせて、小津婆さんにどうやら駆け寄ったらしい。
それから、看護師さんたち何人かが小津婆さんの所に集まった。
私はカーテン越しに
「小津さん、大丈夫ですか?
大崎さん何も手伝えなくて、ごめんなさい!」と、声を振り絞った。
振り絞ってようやくまともな音量になるのだ。
私の隣の伊田さんも「何もできなくて、ごめんなさいね。駆け寄ることができないの」とフニャフニャ言った。
実はお隣で入院している伊田さんも多系統なのだ。
小津婆さんは大事に至らなかった。
大崎さんがいて、本当に良かったと思った。
私は口だけで何もできない人間なのだと、つくづく思った。
何も思わない人よりかはマシなのかもしれない。
だが以前よく言っていたのだ。
「ありかとう、ごめん、と言いながら、何も行動で示さない口だけの人間は嫌いだ」と。
今の私はその口だけさえも、いつまで続けられるか怪しくなっている。
看護師さんたちと大崎さんの声が聞こえる。
私と伊田さんは、ただ黙って寝そべりながら、それを聞いている。