結局、大きな総合病院に行くことになった。

しかし、耳鼻咽喉科が紹介、予約をしてくれたので、待ち時間が長いということは少しもなかった。

 

最初に4つの検査を受けた。

・尿検査   ・血液検査   ・心電図   ・脳のCT

検査を受けている間、技師さんは、皆、優しく、一緒に冗談なんか言っていた。

 

全ての検査が済み、神経内科前の廊下に行くよう言われた。

そこで待つこと約20分。

私は読みかけの文庫本を読んでいた。

途中、おじいさんが話しかけてきた。

「どこか悪いの?」

おじいさんの手は震えていたし、短い言葉でも決してスムーズには発せられてなかった。

「眩暈がして検査に来ました」

笑顔で答えたが、おじいさんの手の震えに、ここは神経内科だもんなぁと変に納得した。

と同時に、こんな所に通されて場違いなんだよなぁ、と心の中でぼやいていた。

 

私の名前が呼ばれ、診察室に入った。

殺風景ではあったが、秋晴れの日差しが大きな窓から差し込み、明るかった。

その中で、私よりちょっと年下であろう男性医師が穏やかな表情で椅子に座っていた。

脳のCT画像が医師の前に貼られていた。

 

異常は脳のCTだけに見られた。

もの凄く不規則且つ不健康な生活を送っていたが、尿や血液、心臓は健康そのものだった。

 

医師はまず異常の無い点について、コレストロール値とか、ガンマホニャララとか、よく分からないが、そういうことについて、ざっと説明をした。

 

それから貼られている脳のCT画像を見ながら、

「ただ、ちょっと、脳には、気になる点があるんですよね・・・・」

 

 

 

優しい表情をした医師。

診察室へ差し込む柔らかい光。

CT画像を前にして医師の話を聞く私。

 

あらー、まるで陳腐な映画のワンシーンだわと流暢なことを考えていた。

 

そして、

「ご家族と一緒にお話ししませんか」

と、ますます映画的な展開になる一言を。

 

??? 脳に異常が見られて、家族と一緒に話を、なんて言われたら、さすがにおバカな私だって、ああ、こりゃ悪い話だなと察しがつきますわい。