半日ずつ、仔猫たちをシャカ部屋から離すように管理し始めてからしばらくすると、シャカの体調は完全に回復したと思われるようになった。

 

以前までは大食していたのに痩せていたが、今は少し顔が丸くなってきたように思える。

 

 

 

また、開口呼吸も目にしなくなった。

 

だが、夜に仔猫を預かっているときの寂しそうな鳴き声には変わらず、胸が痛んだ。

 

上階の部屋に慣れていそうなのは、アスラン、ガブ、テット、テンで、(一軍)特にアスランは、いち早く上階の先住猫のドライフードを食べるようになった。

 

ユグ、アマラ、ラーは(二軍)まだ母親が恋しいようで、夜にシャカの下に返す筆頭だったが、そんなことを言っているといつまでも慣れることがない。

 

なので、かわいそうでも、上階に拉致することも多々行った。

 

 

 

 

対照的に一軍は、上階でも、先住猫に威嚇されようがお構いなく暴れまくった。

 

 

 

ペットショップなどで売られているおもちゃは、悪くはないが食いつきがよくないことがある。

 

おそらくこれは猫によって、色の見え方に個体差があるのではないかと思う。試しに他の色の猫じゃらしでじゃらせてみると、そのときじゃれていなかった他の猫がじゃれつくことが多い。

 

つまり万猫の好む、万猫のための、万能のおもちゃを探すのは難しいのだ。

 

 

しかし長い猫との生活の中で、最も万能に近いおもちゃがある。それは意外にも、ショップで売っているような物ではなかった。

 

「アマラ……、シャカが恋しいのか……」

 

有無を言わさず、上階に連れて来られ、寂しそうに声をあげるアマラ……、

 

 

 

下の階に戻してやろうとも思ったが、その前に、僕にはまだ試すことがあった。

 

 

そう、あの奇跡の万能おもちゃ『ローソンボール』の出番が来たのだ!

 

『ローソンボール』……。これはローソンなどのコンビニでもらえるMサイズのコンビニ袋……、それを何度も結んで、結んで、固く縛って小さなボールのようにする。

 

 

基本的にこれだけだ。

 

だが、この簡易的なおもちゃが、爆発的な威力を発揮する。

 

「アマラ!見て!」

 

と、アマラの眼前にそれを何度か往復させ、そのまま部屋の向こうに放るのだ。

 

 

 

すると……、アマラだけではなく、そこにいる仔猫たちが皆、我先に追いかけ、そしてそれを手で取ろうとする。

 

このローソンボールはその軽さから、仔猫の手を飛ぶようにして逃げ、そしてその際、ナイロン特有の音がする。

 

それがまた猫たちにとってたまらないのだ。

 

コンビニ袋という物は3円で買うことが出来るので、そのコスパも良い。なので幾つもすぐに作ることが出来る。

 

仔猫たちが動かないボールに飽き始めたとき、ローソンボール二号の発進だ。

 

再び戦場になる部屋の中、勝ち取ったのはテット。

 

彼女はローソンボールを咥えて、どこかに持って行く素振りを見せたが、ローソンボール三号の発進により、そちらを追いかけなくてはならない事態に陥った。

 

それらを回収し、また同じことを繰り返し、ローソンボール五号が発進されてからしばらく経った頃には、皆でご飯を食べ、トイレも終わり、キャットタワーに群がって眠り始めた。

 

先刻、寂しそうに泣いていたアマラも今やモンサンミシェルのように、飾り付けられたキャットタワーで寝息を立てている。

 

(モンサンミシェル)

 

(モンサンミシェル ガブリエルの塔)

 

 

(はは、大丈夫そうだな……)

 

と、僕は一階に下り、

 

「お前と二人っきりも、なつかしいな……。と言っても、まだ数か月しか経ってないのか……」

 

 

 

と、ついこの間までとは打って変わって元気そうな……、相も変わらず『シャー』と威嚇するシャカの頭を撫でながら、チュールをやるのだった。