サファイア王子「僕は君が勉強できるように、しっかり応援するから、一緒に頑張ろうね」

わたし「よろしくお願いします。サファイア王子」

サファイア王子「うふふっ。こちらこそ、よろしくね」

最初、宝石品質のサファイアを1個、勉強のお守りとして購入しました。
わたしの中では高級な石だったために、1個しかサファイアを購入していません。
それこそ、モリオン師匠のブレスレットが、まるまる一つ買えるほど…いや、それよりも少し値が張る高級品です。
わたしはサファイアを特別視しました。
ブレスレットそのものは、いろんな種類のものが合わさったものですけど、この『ミャンマー産の宝石質限定品サファイア』は本当に特別な存在でした。

なぜなら…
運転中に眠いな…と思った時、急にブレスレットが冷たくなったんです。
見ると、サファイア王子が異様に冷たくなっていました。
わたしを事故から守るために、一生懸命に自らの体を冷やして眠気を冷まそうとしてくれたのでしょう。
それ以外、サファイア王子が、わたしに対して
「イタイ!」とか「つめたい!」と思うようなことはしていません。

サファイア王子が満月の光を浴びたあと、今まで言葉を発しなかった彼が、話をしてくれるようになりました。

サファイア王子「君はとても優しいね。他人を想いやる澄んだ心を持っている」

わたし「えっ? いや、そんなこと…ないですよ! な、ないです」

サファイア王子「ううん。僕は知ってるよ。君はとても素敵で素晴らしい存在だって。温かくて優しい」

わたしは思わず泣いてしまいました。
こんなにも温かい言葉を、最近言われたことが無かったから。
その時、王子がとても優しくて素敵な存在だと知ったんです。


それから何日か過ぎて…。
サーカスを観に行く前日の夜のこと。
アメジスト君が、こんなことを言ってきました。

アメジスト君「今日は月が出るのが遅いけど、僕は月の光を浴びたいな」

ペリドット皇女「いいですわね。わたくしも月の光を浴びたいですわ」

わたし「じゃあ、サファイア王子にも勉強ができるこの部屋で寝てもらおうかな。一緒にいれば勉強もはかどりそうだし…」

アメジスト君「ダメだよ! 王子は君と明日一緒にサーカスに行きたいって言ってるんだから。前日も、君の隣で休みたいって」

わたし「じゃあ、王子じゃなくてモル様に、月の光を浴びてもらおうかな…」

モル帝王「貴様はバカか。俺様は以前に伝えたよな? 満ちていく月の光は最高に気分がいいが、欠けていく月の光は苦手だと。パワーが奪われてしまうのだ」

アメジスト君「えー? 僕はどんな月の光でも大好きだよ。逆に月が見えない夜が嫌だな。あと15分は真っ暗だから苦手なんだ。あと15分したら、お月様がのぼるのだけど…」

モル帝王「おー。あと15分は暗闇なのか。それなら、俺様は月が登る前に、窓際でくつろぐとしよう」

わたし「はい?」

モル帝王「貴様。さっさと支度をしろ!もたもたしていたら、月が現れてしまうではないか!」

アメジスト君「あははっ。モル様ってば、仕方ないなー。ほら、モル様を窓際で休ませてあげて」

わたし「あー。はいはい」

アメジスト君「それから、サファイア王子を君の部屋の窓際のさざれ石のベッドで寝かせてあげて」

わたし「えっ?」

アメジスト君「サファイア王子は、君と一緒に出かけるのを楽しみにしている。でも、あまりにもはしゃぎ過ぎて、勉強をサポート出来なくなっているみたいで、それが君に悪いって思っているんだ。……王子はね、悲しんでいるんだよ」

わたし「ええっ?! ますます意味がわからない」

アメジスト君「勉強のお守りとして、君がその手で作ったブレスレットなのに、君への想いが強くなり過ぎて、君で頭がいっぱいになって…」

ペリドット皇女「恋ですわね…。いや、愛かも知れませんわね」

アメジスト君「だからね? すごく落ち込んでいるんだ。『こんな僕じゃダメだ』って」

モル帝王「このままじゃ壊れちまうかも知れねぇな」

わたし「ちょっ、ちょっと待って! 困る!困るよ、そんなの!!」

アメジスト君「だ、か、ら、王子を慰めてあげて。王子を必要としていると伝えてあげて」

わたし「それなら、みんなで一緒に行こうよ。一緒に休めばいいじゃない」

アメジスト君「ダメだよ。王子は君と二人きりでいたいみたいだから。僕たちが一緒に行ったら、王子はますます落ち込んでしまうよ」

わたし「……わかった。じゃあ、お休みなさい」

アメジスト君「うん。王子をよろしくね」

モル帝王「おい、待て貴様! 月が登ってきちまうじゃねぇか! さっさと俺様を窓際から離しやがれ!」

わたし「……あー。はいはい」

モル帝王といると、少し疲れる時がありますチュー
まあ、でも、こういう性格、大好きですけど爆笑

* * *

自室。アメジスト君に言われたとおり、王子を窓際のさざれ石のベッドに寝かせて、わたしは人間用のベッドで眠ることにした。

サファイア王子「ごめんね…」

わたし「王子?」

サファイア王子「僕、明日のサーカスをすごく楽しみにしているんだ。……君が好きなもの、楽しみにしているものを、君と一緒に感じたいから」

わたし「……しょ、少女漫画でも言わないような…そ、そんなセリフを!!」

自分では考えられないセリフなので、思わずキュンとしてしまいました。
これは、わたしの考えた言葉じゃない、つまり、妄想じゃない、というのが分かりますからね。

サファイア王子「でもね…。本当にごめんね。僕は君を応援したいのに。僕の気持ちが強くなり過ぎて、君が勉強に打ち込めなくなっているなんて……」

わたし「王子。それなら、こんなサポートはいかがですか? わたしは今日、眠くなるまで勉強を頑張ります。だから……明日、楽しみにしているサーカスの最中に、わたしが寝ないようにサポートして下さい。そうすれば、わたしは勉強を頑張れるし、王子もわたしをサポートすることになりますから」

サファイア王子「えっ? いいの? そんなサポートの仕方で」

わたし「ええ。だって、去年のわたしは、サーカスの最中に寝てしまったんです。だから、今年は寝ないようにサポートして下さい。それなら、わたしも勉強を頑張れます」

サファイア王子「うん。わかったよ。寝かせないように頑張るキラキラ

わたし「頼もしいです。王子」

サファイア王子「うふふっ。明日が楽しみだなー♫」

この時、始めて王子が幼い存在であることを知りました。
でも、人間と違って、幼いのは性格だけで、中身はとてもしっかりしたタイプだということを、わたしは知っています。

サファイア王子「僕は君が大好き」

わたし「ふふっ。わたしもです」

サファイア王子「ああ! 明日が楽しみだなー♫」

わたし「王子ってば、はしゃぎ過ぎ照れ

サファイア王子「うふふっ。おやすみ」

わたし「ええ。お休みなさい」

こうして、サーカスの前日の夜は終わりました。
いよいよ、明日はサーカス当日。
どんな物語になるのでしょうね? なんてね。