静岡の実家で長くお茶をつくっていたこともあり、私の家には常に緑茶がありました。

小さい頃はお茶ばかり飲むのに飽きて、ジュースや麦茶に心変わりしたこともありましたが、緑茶を飲むとなんとなくほっとすることがよくわかり、あらためてお茶を飲むようになりました。

実家で作っていたお茶は農協などに出荷するために作っていた、いわばBtoB用のお茶でしたが、製茶したお茶で出荷しなかった分をまるごと私が買い取り、小袋にわけて窒素をいれたものを大量に保管して今もそれを取り出しては飲んでいます。

しかし一時期、その大量に買い取ったお茶をいれた茶箱の存在がわからず、なくなってしまったと思っていたたため、その期間はコーヒーをよく飲んでいました。

ところが先日、その茶箱がでてきて、大量のお茶が見つかったため、また家で緑茶をよく飲むようになりました。

さらに、最近、静岡に行くたびに友達や後輩の茶商の経営者たちと会うようになったため、そこの美味しい新茶を買ったり飲んだりすことが増えて、お茶はほんとうにおいしいと思うようになりました。

私はこんな感じでお茶に親しんでいるのですが、世の中はそうでもないようです。

今年の新茶の価格がさえない　という新聞記事を見ました。

一番茶と言われる一番最初に市場にでてくるお茶の価格は、今年はとても高かったようです。

静岡茶市場で初取引の平均価格が前年の11倍だったと言いますから、とんでもないご祝儀相場だったわけです。

理由は初取引の数量が極端に少なかったから。

しかしその後、一番茶の取引が進むと、徐々に価格が下がり、静岡県の一番茶の平均価格は前年を1割弱下がっていると言います。

値下がりしているのです。

世の中のさまざまな商品が値上がりしている中で、値下がりしているというのは意外な気がしますが、茶葉の価格が下がり気味にある理由は2つあるとその新聞では指摘していました。

ひとつは「急須にいれてお茶を飲む習慣が減った」ことです。

ペットボトルで飲むお茶は増えていると思いますから、その分のお茶は使用されていて需要としては増えているでしょう。

しかしその分、家庭での自家需要として、自分でおちゃっばを使ってお茶を飲むという習慣がない。

結果的に自宅に急須が存在しないという家庭が増えているのです。

(急須に右利き用の急須しかないから　という話をした人もいますが、持ち手が後ろについているものも多いので、左利きでも十分に使えます)

(写真　chagocoroより)

これは以前、このブログでも指摘した話です。

家庭から消えた物の代表的商品が、急須、裁縫箱、ミシン、アイロン台。最近ではまな板なんていう人もいますが。

家に急須がないというのはちょっと驚きますが、気づいたらもう10年以上家にはない　という人が私のまわりにもいます。

急須がなければ家でお茶は飲めない。

急須を家にもつてもらうようなキャンペーンが必要です。

しかしキャンペーンをやっても「お湯を沸かしておちゃっばをいれてお湯を注いでお茶を飲む」という行動そのものが面倒くさい　という人がいる限りお茶は飲まないでしょう。

だからティーバッグにした緑茶などもでてきていますが、そんなことでお茶は飲むようにはなりません。

ティーバッグにすると競合が増えるからです。

紅茶やコーヒー、世の中にはティーバッグにはいったたくさんのお茶があります。

緑茶をその中の選択肢のひとつにすることはできまんすが、たくさんのお茶を飲んでもらうまでにはいかないでしょう。

そうなると、ギフトとしても使われることは少なくなり、お茶そのものと接する機会が減ります。

余計、消費が減っていくことになります。

ではどうしたらいいか。

やはり、本当においしいお茶を急須でいれて、それを飲むという機会を増やすことしかないでしょう。

先日も静岡の後輩のお茶屋さんの店頭で飲んだ新茶でいれてもらったお茶は、香りも味もとてもよかった。思わず買って帰り、今はその新茶を毎日いれて飲んでいますが、とてもおいしい。

静岡のお茶は甘く、やわらかいのが特徴(産地と茶葉、いれ方によっても違いますが)。

その本当においしいお茶をもっと飲めるような場所、店、機会が増えない限り、なかなか消費量は増えないでしょう。

お茶を自家需でもギフトでも増やすための取り組みは、本物のおいしいお茶を飲んでもらう機会を作ること以外にありません。

だからこそ、私は緑茶カフェのようなお店がもっとできたらいいのにと思いますし、緑茶カフェができなくても、カフェで本物の緑茶を適正な価格で販売できるように、飲食店にもっと提案したらいいのにと思っています。

緑茶は長く、ただで飲めるものだと思われてきました。

しかし緑茶のおいしさはお金を払っても飲む価値があるものです。

これからの世の中でお茶の魅力に気づいてお茶を楽しむ人たちが増えてくればいいなあと思っています。

お茶に育てられ、お茶に感謝している私にとって、お茶は大切なものです。

静岡に限らず、狭山や京都や九州にもおいしいお茶がたくさんあります。

お茶はさまざまな病気にもきくと言われているし、健康長寿の源です。

ヘルシーでビュティー。

今や海外の方のほうがその価値に気付いていると思います。

今日もお茶の価値を再認識していけるいける!!

新茶の価格がさえない理由は消費の減少にあり