異世界で無双と言う小説が流行っているそうですが、立場を変えて古今東西の著名人、英雄、豪傑を現代と言う異世界に転生させる企画です。当初はカエサル・アントニウス・オクタビアヌスを次々と乗り換える事でプトレマイオス朝を維持しようとした女王クレオパトラを、よろめきメロドラマの態でAIのすっとこどっこいに描かせる積りでしたが、やっている内に雨の日の小学校の図書室の気怠さが思い出され、何でもかんでも偉人を転生させて無茶苦茶な事をしているのを画像化する企画に換骨奪胎された訳です。
全て新バージョン(以下本文)
ちょっとだけ進める「異世界転生モノ」。
郵便局の窓口でバイトするクレオパトラ。
そのクレオパトラが操ろうとして最後まで操れなかったユリウス・カエサルは、転生して近所の八百屋の主人に収まっている。
かつてのカエサルの腹心、マルクス・アントニウスはカエサルの死後自ら後継者を名乗ったが、遺言によって養子のオクタビアヌスが跡取りにされた事で以後彼と対立するようになる。カエサル亡き後、クレオパトラに言い寄られてメロメロになった。
転生して良い調子のアントニウス。駅前の信用金庫で貸付係をしているようだ。
一方カエサルの養子、オクタヴィアヌス。アクティウムの後、アントニウスが死ぬと、ニ十歳そこそこのオクタビアヌスに四十に手が届くクレオパトラが言い寄ったと言うが、振られてしまったそうだ。それに意気消沈したクレオパトラは毒蛇に胸を咬ませた。
そのオクタビアンは転生して不良少年のリーダーになっていた。
「クレオパトラ? フンッ何だあんな年増、こっちから振ってやったぜ」
時のファラオ、アクェンアテンの寵愛を失って命を絶ったツタンカーメンの義母、ネフェルトイティ。
転生して高級マンションで行儀の悪い猫に囲まれてご満悦らしい。
「やっぱりなあ、免罪符ってやっちゃダメなんだよなあ」と独り言を言いながら、図書館の聖書に何やら落書きするマルチン・ルター。
転生しても同じ事をやっているようだ。この後警備員に摘まみ出される。
転生してリンゴ農家を継いだアイザック・ニュートン。
「物理学? やめちゃいましたよ!」
転生したエジソンは老骨に鞭打って自ら深夜の電気工事に携わっている。
「やれやれ、こんな事なら電気工事の会社を別に作っておくんだった」
転生してラジオ番組に出演するフランクリン・ルーズベルト大統領。
「ガーナー、君に言われたとおりに薪は割ったが、炉辺談話の下準備と言っていたのは、もしかしてこの事かね?」
転生したピタゴラスは小学校の教員になった。
「ジェイムス、君は5+3が8であると言う。それは本当にそうか? 常に疑うのだ、5+3が8ではない可能性を探る事こそが学問なのだ。大体8と言う数字は間違った数字だ! 間違っていると決まっているからだ神がそう仰ったのだ!」
転生して実業団バレーボールの選手にジョブチェンジしたアインシュタイン。
得意の時間差攻撃が決まった瞬間(スポーツ報知)
転生したグリム兄弟は読み聞かせボランティアをしていたが、チョイスが何時も自分の著作ばかりだったのでステマ疑惑を掛けられる。
特殊技能を買われて海底ケーブル敷設工事で大活躍のモーゼ。
海底ケーブル敷設準備が進むヤードで、現場監督のモーゼとマネージャーのファラオが打ち合わせ中。
「んじゃまあ何時も通りに俺が後から追っかけるからさモーゼ、後は頼むな」
「はいよう」
アメリカの全州択一司法試験(MBE)会場で問題に頭を抱える転生したハムラビ王。
(…全く、こんな細かいケースまで法で決めとるのか…どうかしとるぞ)
現代に転生した「労働英雄」アレクセイ・スタハノフが、旧雇用主であるソビエト政府を相手取って過重労働を訴えている。第一回公判において原告側陳述。
「ええ、そうです。私は人より少し多く残業していただけなのに、党は私を持ち上げて休みも取れなくしました。実際私は過労死寸前だったのです」
金貸しシャイロックは転生して税務署の個人収納課で働いていた。滞納している家を訪れたシャイロック。
「輝くもの全てがカネではない…か。そうだその通りだよ、ふっふ、小切手だって不動産だって、輝く事はあるからなあ」
現代に転生したベーブ・ルース。
贔屓のヤンキースが3連敗中でかなり不機嫌な様子。
オフィスでPC入力に余念がない転生したマルクス。
マルクス「俺が書いたのは資本論であって、利子論じゃないんだけどなあ」
エンゲルス「お前はまだ良いよ、俺なんか支出中食費割合だと誤解されてるんだぞ!」
転生したアルフレッド・ノーベルはトンネル工事の切端でダイナマイトを装填中。
「全くこの発破てえのは巧く出来てるな。これ発明したヤツはノーベル賞モンだろうな…ヨシッ、装填終わり、全員退避ーっ!」
転生したネロ・クラウディウス・カエサル・ドルスス・ゲルマニクス。
ネロ「パトラッシュよ、余はもう疲れた」
犬ころ「では死とはかくも難しいものなのか」
現代に転生したある兄弟。
オービル「なあ兄ちゃん、コイツがあればもっと簡単に空を飛べたかもな」
ウェルバー「甘い甘い、世の中そうそう巧くなんか行くもんか」
転生して高齢者施設でフルタイムで働くフローレンス・ナイチンゲール。
「(ちょっと、もう20連勤よ、この上イレギュラーシフト組まれたら、寝る時間なんてないわ)あ、ハイハイ、トイレですかちょっと待ってね」
施設長のアンリ・デュナンに訴えるナイチンゲール。
「施設長、どうか一日でも良いんで休ませて下さい、壊れそうなんです心も体も!」
「悪いとは思ってるんだが、この所離職者が増えててね、実は私も2か月休んでいないんだよ」
転生した織田信長。
「天丼はまだか! こんな店は潰してしまうぞたわけめがっ!」
転生した豊臣秀吉。
「なあおみゃあさん、わしゃ腹減っとるで、注文した天丼をなも、他の人よりもちゃっと持って来ちゃあくれみゃあか、悪いようにはせんでよう」
転生した徳川家康。
「あのう、お客さん、閉店なんですが」
「わしの頼んだ天丼を待っとるのだが…」
「あっそれは申し訳ありません、今すぐお造りして…」
「いやもう良い良い、天ぷらに鯛でも入っておったら困るでの」
裏町の闇医者に転生した野口英世。
「おいビリー、俺の事を『レフティ』と呼ぶなとボスから聞いたろう。…良い度胸だ、実験材料にされる覚悟は出来てるんだろうな」
「待て待ってくれヒデ! そいつあ誤解だよ俺はそんな事言ってねえ!」
現代のミラノの街角で通話する転生したグリエルモ・マルコーニ。
「そりゃあねエジソンさん、電話の発明はベルだけど、あんたはそれを改良したって事で俺も文句はないですよ。でも無線通信はあくまでも俺ですから、そこんとこ…何ですって、テスラがどうしましたって? 関係ないっすよあの人は…」
「んじゃどーも、チャオ!」
電話を切ったエジソン。
「…」
現代に転生したエルンスト・ジーメンス。
「その事は知っとるよヘル・エジソン。君が電車を完成させた時、私は未だ主電動機の組付けをしていた、それは事実だ。しかし私が特許申請をしていた時、君は一体何をしていたのかね? 聞けば遠くまで親族の結婚式に行っていたそうじゃないか」
「私はいつも不思議に思っとる、アメリカ人は時間を節約しようと言う衝動を持ち合わせてはおらんのかね? では失敬するよ」
エジソン。
「…」
エジソン先生、寂しくてイタ電掛けまくってるのか?
-本稿了