感染しない
感染させない
2大法則
人類史上初
人類の命を守るため
一日中寝転んで
家でテレビを見よう!
がんばろう!
日本のとある町。
病弱な母と少女が暮らしていた。
悪いことに、原因不明の感染症がはやり始めた。
感染症は空気感染することが分かった。
そのとたん、町のドラッグストアには元気で時間をもてあました人々が朝から並び、入荷するマスクを毎日買いあさっていた。
母親と少女は、貯金も底をつき食べるものにも困る日々。
母親が少女に言った。
「亡くなったおばあちゃんが言っていたんだよ。どうしてもお金に困ったら、押入れの奥の桐の箱に入った布を売りなさいと」
少女は箱を開けてみた。
そこには七色に光る綺麗な布が入っていた。
少女は思いついて母に言った。
「お母さん、この布でマスクを作って、困った人に安く分けてあげよう。」
少女はその綺麗な布でマスクを1つ作り、町に出た。
ドラッグストアに並ぶ一人に声をかけた。
「おじいさん、これは私が作ったマスクです。100円でもいいです。買ってください。」
すると、おじいさんは「そんなマスク1つが役に立つか。この店の箱入りマスクを買って、誰かに高く売りつけるんだ。あっちに行け」
隣のおばあさんに聞いてみた。「お母さんが病気なんです。このマスクを安くてもいいので、買ってもらえませんか」
おばあさんは言った。「あたしはね、マスクなんかほしくないんだ。マスクを買い占めて、困った人に高く売って、金儲けをしたいのさ。それに、なんだいそのマスク。虹みたいな色つきで、そんなもの1円でも買うものか」
少女はトボトボと、泣きながら歩き始めた。
少し行くと、前から紳士が歩いてきて、声をかけた。
「どうしたんだい?」
少女は母親のこと、布のこと、マスクの事を話した。
紳士は言った。「私がそのマスクを買おう。見せておくれ。・・・・なんて綺麗なマスクだ。10万円で買おう」
びっくりした少女は「いえ、そんなに多くいただけません。私が作ったなんでもないマスクです」
紳士は言った。「いや、いいんだよ。僕はマスクだけではなく、君の優しい思いのためにもマスクを買いたいんだ。実はね、僕は医者なんだが、病院で使うマスクも品切れになりそうなんだ。良ければ、その布で、病院の看護師さんやスタッフ、患者さんにマスクを作ってもらえないかな?」
少女は言った。「わかりました。今は一枚しかありませんが、すぐに作ってお届けにあがります。」
少女は一枚のマスクをその医者に渡し、10万円をもらった。
そのお金で母親においしい料理を食べさせてあげた。
少女はマスクを作り、母親を連れてその病院に届けに行った。
お医者さんに母親とお礼を言い、マスクを渡した。
お医者さん言った。「このマスクはすばらしい。どのマスクよりも優れている。ありがとう。早速配るよ。」
彼は傍らの母親を見て、「お母さん、病院で検査をしましたか?まだなら、今、診てあげましょう。」
母親は診察をしてもらった。「お母さん、薬を処方しますから飲んでください。すぐに良くなりますよ」
お医者さんは看護師、スタッフ、そこにいた患者さんにマスクをあげて、着けるように言った。
するとみんなが驚いたように、「なんですかこのマスクは。顔に優しく、息が楽になり、空気がとてもおいしいです。とても幸せな気持ちになります。」
一人の患者は言った。「先生、胸の痛みがなくなり、咳が止まりました。熱もさがったようです。」
お医者さんは言った。「このマスクは魔法のマスクです。この綺麗な色、そして少女が心を込めて織ったマスクなんです。目には見えない不思議な力があるんです。大切にしてください。」
噂は町中に広まった。
人々が毎日、その少女を捜し歩いた。が、どこにも少女はいなかった。
その町では感染症が猛威をふるい、少女が作ったマスクを着けていない人は全員が亡くなった。
ドラッグストアでマスクを買い占めた人たちは、家に大量のマスクを残し、この世を去った。
少女と母親は、そのお医者さんが持っている、大自然の中の別荘に引っ越して生活していた。
少女は、そのお医者さんの病院で働く人たちや、患者さんのためにマスクを織っていた。
母親は健康になり、少女は大学に進み、医者になった。