現在の日本に欠けているもの、それは、セーフティネットである。

 最近、大学教授、経済評論家、ベンチャー起業家と立て続けに講演会に行った。彼らは、閉塞感のある現状を憂いて、また、自らの体験を交えて、改革の必要性を説く。もちろん改革の方向性は人によって若干異なるが、だいたいのところ、何らかの規制緩和論が多い。

 問題は、どのような世の中になるのか、である。もちろん、彼らなりに素晴らしい世の中になるようなのだが、注意しなければならないのは、彼らが成功者である点である。成功者にとって素晴らしい世の中は、往々にして失敗者にとって辛い世の中である。そして、往々にして、失敗者が圧倒的多数を占める。改革の必要性が問われており、一定の支持を集めながら、(逆に言うと一定の支持しか集められないで、)実行に移せないのは、そのロジックを世の中の「失敗者予備群(あえてこの字を使う)」がわかっているからではないか。しかし、実は失敗者予備群の中にも多くの成功者予備群が含まれている。この成功者予備群は、多くの場合、才能がありながら、失敗を恐れて踏み出すことを躊躇しているのだ。これは大きな損失である。

 では、どうすれば良いのか。成功者予備群が、失敗してもリカバリーできる仕組みを作ればよいのだ。それがセーフティネットの充実である。セーフティネットがしっかりしていれば、失敗を恐れずにチャレンジすることができる。失敗しても、元の位置、乃至は、その近辺に戻れるようになれば、失敗を恐れずにチャレンジできる。もちろん、才能不足の人のチャレンジも多くなるだろう。しかし、それは、社会を活性化させるためのコストである。結果的によりプラスが生まれれば良いのだ。

 セーフティネットにはいろいろな種類がある。もちろん最大のものは、金銭的なものである。しかし、もしかしたらそれ以上に必要なものは、慣習的なものかもしれない。我が国では、一度失敗すると、視線は厳しくなる。これが、さまざまなものに影響していると思われる。これを変えるには・・・。一つの方策は、失敗して再起して成功するパターンを多く輩出することだろう。そのためにも、セーフティネットの充実が望まれる。