(この記事は3月に綴った記録です)

 

ホスピスに入ってから、毎日病室に私が顔を見せると彼が手を繋いでほしがるので、ベッドサイドで手を繋いで、彼の今日見た夢の話を聞いたり、たわいもない会話が続く。

本当は私はもっと大事な心のうちにあることを話したいんだけど、彼の夢の話が終わらない(笑)

 

今から思うと、彼は心のうちを話すと深刻になってしまうのがつらかったのかもしれないな。そんなわけで、ただただ彼の話を頷いて聞いていると、途中から疲れて彼が寝てしまうので、私もベッドサイドで本を読んだりして過ごした。

 

私もこの頃は毎晩夜中に目が覚めると、一体いつまで彼が生きられるのかとか、今日にも病院から危篤ですという電話がかかってくるかもしれないと思うと、そこからいろいろ考えて眠れなくなってしまう。

 

でも家で看ていた時は夜中に何度も彼の様子を見に行ったり、彼の嘔吐の後始末をしたりと全然眠れなかったから、それから比較するとまだ眠れたほうかもしれない。

自宅で看ている人たちは、これが続くなんてどんなに大変だろう。

 

少なくともホスピスにいる間看護師さん達が手厚い看護をして下さるし、痛みもショットで対応して下さるから、以前のように痛み止めを頑張って飲み込んだ挙句吐いてしまって、薬が飲めないんじゃ痛みが出てしまうんじゃないかとか、脱水症状になってしまうんじゃないかという心配からは解放されてありがたい。

 

そんなわけで、この頃の私は朝起きるとどうしても睡眠不足で頭痛がするので、午前中はソファでうとうとして、それから気合を入れてホスピスへ向かう。

 

一日ぐらいホスピスに行くのを休もうかと思ったけれど、やっぱりせっかく癌研から自宅近くまで戻ってこられたんだし、一体いつまでこの一緒の時間を過ごせるかわからないと思うと、貴重な時間を休むわけにはいかない。

 

第一、少しでも遅くいくと「やっと来た。ずっと待ってたよ」といわれるので、行かないわけにはいかないのだ。

 

ホスピスに通うことがこのころの私の日課になっていたけれど、それはいつまでもいつまでも、まだまだ長く続いてほしい日課だった。