旅好きな人にファンの多い、沢木耕太郎さんの「深夜特急」

御多分に漏れず、私も何度も読み返すほど大好き。

私がこの本を読むようになったのは、随分年を重ねてからだ。

 

結婚する前は旅とは無縁だったし、子供が生まれてからは子育てが忙しくて、子供達が小さい頃遠くへ旅に出ることは時間的にも経済的にも余裕はなかった上、世代的にも海外旅行が身近な世代ではなかったので、海外を周遊するなどということはかつては考えたこともなかった。

 

40歳からようやく日本を飛び出した旅を始めた私にとって、年齢的にもバックパッカーのような旅はさらに遠い存在で、「深夜特急」のような旅は無縁だった。

 

でも50歳を過ぎてから読み始めた「深夜特急」は面白くて面白くて、あっという間にその魅力のとりつかれてしまった。

 

このシリーズは、彼が26歳当時香港、マカオ、シンガポールやマレーシア、インドやネパール、シルクロードやギリシャ、南ヨーロッパを旅してロンドンにバスで一年かけて旅した話だけれど、この本が今でも古びないで読むたびにワクワクするのは、やっぱり人との出会いや物事との出会いが感性豊かに描かれていることだと思う。

 

今はもう気楽に訪問することができなくなってしまったアフガニスタンの当時の豊かさや、いろいろな国での人々との出会い。訪問した国によっては日本人だというだけで歓迎してくれたり、助けてくれたり、時にはいやな目にもあう。

そこで目にした貧困や差別、死者を弔うこと。

 

時には旅を続けるうちに感じた虚しさや、孤独。旅が長くなるほど、そこに踏みとどまって堕ちていかないようにバランスをとりながら、自分を支えながら逡巡しながら前へ進んでいくことも。

 

それに、沢木耕太郎自身の人柄によるところが大きいと思うのだけれど、出会った人の中には言葉も通じないのに、初めて会ったにもかかわらず、気持ちよく迎えて泊まらせてくれる、あるいは食事をご馳走してくれる、そんなあたたかい出会いが旅を豊かにする。

 

今の世の中は当時(1974年~)よりもはるかに互いに対する警戒も強いから、家にいきなり泊めちゃったりとか、こんなおおらかな出会いはなかなかないんだろうなー。

 

でも旅先での小さな出会いや親切なら、私もこれまでも沢山経験してきたから、この深夜特急の世界の一部を味わうことは、今でも可能だと思う。

 

だからまた、私も旅に恋して出かけたくなる。