<白い壁:第二章・・・28>
あれから2ヶ月が過ぎた。
亮子は定期的にカウンセリングを受けているようだった。
顔を合わせるたびに、その笑顔がリラックスしたものになっていくのを
日に日に感じた。
まゆこも、これまでは怖くてできなかった寄り道を覚えた。
本屋、雑貨屋・・・ウィンドウショッピングをする楽しみが増えた。
久しぶりに亮子と薬局で一緒になった。
「カウンセリングの間隔が長くなったのよ。いい傾向だわ。」
そう言っていた。
「私、会社に復帰することにしたの。
もちろん、いきなり元のハードな職場に戻るんじゃなくて、
ちょっと暇な部署への復帰だけど、
いつかはまた元の部署に戻ってみせるわ。」
「もう通院は必要ないの?」
「ううん。通院もカウンセリングもまだ続けるつもり。
病気と上手くやりながら、仕事とも付き合っていくの。」
「それなら安心ね。」
「この半年、いろいろあったけど、
病気になってみてわかったこともあったし、
自分がどんな人間なんだかやっと理解できた気がする。」
亮子は前を見ながらそう言った。
「亮子さん、今日はお茶していかない?」
まゆこから誘ってみた。
「えぇ、もちろん!」
「私、始めてちゃんと亮子さんを誘うことができたわ。」
「そういえばそうね。まゆこさんも変わったのかしら?」
「変わったわ。私も自分のいろんな面が見えるようになったみたい。」
「お互い、いい半年だったみたいね。」
「そうね。いい半年だったと思うわ。」
少し間を開けて、まゆこが言った。
「私、亮子さんと出会えてよかった。
私が変わるきっかけを作ってくれたのは亮子さんだもん。」
「それなら私も同じよ。
あの時、まゆこさんに声を掛けて良かった。」
「お互い、まだまだ通院は続くけど、
少しずつ変わっていって、いつかは治るかもしれないわね」
「あら、そこで焦っちゃダメよ。亮子さん、もっとのんびり構えていきましょう。」
「そうね。私ったら、つい先走っちゃって。」
2人は顔を見合わせて笑った。
そろって、薬局に声を掛けて、お茶に出かけた。
初めて行ったカフェ。
もう緊張もない。
まゆこからも積極的に話すことができた。
きっとこの関係はしばらく続くだろう。
どちらかの通院が終わるまで。
そこでこの関係が終わってしまっても構わない。
あの白い壁のクリニックから始まった仲だ。
クリニックに通わなくなったら終わってもおかしくない。
でもなんとなく、このまま続けていけるような気がしてた。
患者仲間じゃなくて、本当の友達に変わる日が来る。
ぼんやりとそう思った。
(おわり)