「面倒くさい」は
認知症の前駆症状かも
外来では、認知症に関して
もの忘れ関連の訴えと共に
「意欲、やる気がなくなった」
という訴えがよくあります。
これを患者さん自身は
日常生活の場で「面倒くさい」と述べます。
脳の器質的な病気で
意欲が落ちないものはない。
脳はどの部分がやられようと
必ず意欲低下につながる。
軽度認知障害(MCI)かな?
と思うような人で「面倒くさい」
が口癖になっている人は、
認知症「一直線」だと思える。
SPECTやPETでアミロイド沈着を評価
軽度認知障害MCIや
その前の全臨床期Preclinicalには
海馬の萎縮はまずありません。
海馬に萎縮が起きた時には、
引き戻すことができない認知症のレベルです。
図 脳の中央での縦断面を内側から観察
初期の段階では、知られざる脳部位である
帯状回後部や楔前部などで、
実は最初に脳血流が低下します。
帯状回後部は
長期記憶とワーキングメモリを密接に結び、
また海馬や海馬周辺皮質と相互作用して
学習や記憶に関わ理、
また感覚野や運動野とのやり取りを通して、
空間機能に関連する役割も。
楔前部の機能は、
視空間イメージ、エピソード記憶の再生など
これらの脳機能はいずれもアルツハイマー病
の最初期から障害を受けます。
Single Photon Emission Computed Tomography:
日本語では単一光子放射断層撮影と訳されます。
SPECT すぺくと 検査は、
ごく微量の放射性物質を含む薬を体内に投与し、
その薬剤の分布などから、臓器の働きを見る検査です。
この場合、脳血流を見ます。
Positron Emission Tomography:
陽電子放出断層撮影と訳されます。
PET ぺっと検査は主にがんの転移を見る検査として
知られています。
がんでブドウ糖の取り込みが進んでいるからです。
この場合、取り込みが進んでいるところが
脳血流が豊富な場所です。
なぜADになると脳血流が減少するのか
アミロイドβが毛細血管壁を取り巻く
周皮細胞に働きかけて毛細血管が収縮するため
毛細血管が狭くなって、
毛細血管内部で血栓ができて脳血流は減少する1)。
最近では、
アルツハイマー病ADの前臨床期Preclinicalで、
帯状回後部と楔前部にみられる脳血流低下は
アミロイド沈着に先立って現れ、
認知面では遂行機能の障害が
記憶障害の出現より前にみられるという2)。
遂行機能とやる気(意欲)は、
前頭葉が主に関わる。
「面倒くさい(意欲の欠如)が増えたら、
認知症一直線」と言えるかも。
【引用文献】
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