活性型ビタミンD3が
筋肉の喪失を予防
前糖尿病と糖尿病は
サルコペニア※
の独立した危険因子です1)。
※ギリシャ語の「筋肉」を表す“サルコ”と、
「喪失」を表す“ペニア”
を組み合わせた言葉で、
筋肉量が減少し、
筋力や身体機能が低下して いる状態のこと
転倒・骨折、寝たきりなどの原因にも、
十分な栄養の摂取や、
体力維持・筋力増加のための運動により、
サルコペニアを予防することが重要。
前糖尿病患者への
活性型ビタミンD3投与が
サルコペニアを予防する。
日本 産業医科大学病院発
血清25-ヒドロキシビタミンD値と
サルコペニア発症率に関して
血清保存ビタミンD値多いと
サルコペニアの発生率が低い
という報告があります2)。
しかし、ビタミンDによる治療が
サルコペニアを予防するかどうかは不明。
そこで研究グループは、
活性型ビタミンD3製剤エルデカルシトール
による治療が
前糖尿病患者のサルコペニアの発症を
抑制するかどうかを評価しました3)。
【方法】
対象は、正常者と糖尿病の中間である
耐糖能異常と判定され、
サルコペニアではない30歳以上の男女1,094例
エルデカルシトール0.75μgを1日1回経口投与群と
プラセボ(偽薬)群に
1対1の割合に無作為に割り付けた。
主要評価項目は、
3年間のサルコペニア発症率。
定義として握力が弱い
(男性28kg未満、女性18kg未満)、
骨格筋指数が低い
(生体電気インピーダンス分析で
男性7.0kg/m2未満、女性5.7kg/m2未満)
副次評価項目は、
3年間の転倒の発生率、
握力と体組成の変化
と設定しています。
【結果】
エルデカルシトール群548例、
プラセボ群546例を解析。
平均年齢60.8歳、女性44.2%、
平均BMI値24.5、
2型糖尿病の家族歴があったのは59.5%
約3年間の追跡期間中に
サルコペニアを発症したのは、
エルデカルシトール群4.6%
vs
プラセボ群8.8%、
エルデカルシトールによる治療は
有意なサルコペニア予防効果を示した
(ハザード比:0.51、p=0.0065)。
転倒の発生は、
エルデカルシトール群24.6%
vs
プラセボ群32.8%
で有意差が認められた
(ハザード比:0.78、p=0.0283)。
BMIと腹囲径の変化は
両群で有意差は認められなかった。
脂肪量指数は統計学的に有意に減少。
エルデカルシトール群-0.15%
vs
プラセボ群vs.0.31%
骨格筋指数は有意に増加
0.45% vs.-1.72%
握力も有意増加した
1.85% vs.0.45%
有害事象の発生率は
両群間で有意差はなかった。
【結論】
活性型ビタミンD3製剤
エルデカルシトールの治療によって、
骨格筋量および筋力を増加させ、
前糖尿病患者のサルコペニアの発症を予防し、
転倒のリスクを大幅に減少させる
可能性を見出した。
【引用文献】
1) Kaga H, et al. J Cachexia Sarcopenia Muscle. 2022;13:2835-2842.
2) Hassan-Smith ZK, et al. PLoS One. 2017;12:e0170665.
3)Kawahara T, et al. Lancet Healthy Longev. 2024 Feb 29. [Epub ahead of print]