コーヒーの成分トリゴネリンが

老化に伴う筋肉消耗を防ぐ

 

 

コーヒーに豊富な成分トリゴネリンが

老化に伴う筋肉の減少や筋力の低下

(サルコペニア)

に対して治療効果を担いうる

ことが示されました1-3)。

 

 

サルコペニアは筋肉、筋力、歩く速度の

病的な減少/低下を表す言葉です。

 

 

ミトコンドリア機能不全が原因

 

ミトコンドリアが新しく作り出されなくなること、

ミトコンドリア内での呼吸反応やATP生成が減る

ことなどが筋肉老化に結びつきます。

 

 

サルコペニア患者の筋肉は

そのようなミトコンドリア機能不全に加えて、

 

補酵素の1つ

ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド

(NAD+)

が減少していることが

高齢者119人を調べた

先立つ試験で示されています4)。

 

 

NAD+は代謝に不可欠で、

ビタミンB3から作られます。

 

 

ある研究では

筋肉のミトコンドリア機能不全や

NAD+代謝異常と

全身の変化の関連を明らかにするため

血液成分をくわしく調べています。

 

 

その結果、コーヒーなどの植物に存在し、

ヒトの体内でもNAD+と同様に

 

ビタミンB3からいくらか作られる

『トリゴネリン』が

サルコペニア高齢者の血中には

少ないことが判明しました。

※サルコペニア

老化に伴う筋肉の減少や筋力の低下

 

 

また、トリゴネリンの血清濃度が

より高い人ほど筋肉がより多く、

握力がより強く、

より早く歩けました。

 

 

サルコペニア患者とそうでない健康な人から

採取した筋肉組織(筋管)に

トリゴネリンを加えたところ、

 

サルコペニアかどうかを問わず

NAD+が増加しました。

 

 

 

線虫やマウスにトリゴネリンを与えると

ミトコンドリア活性が向上し、

筋力が維持され、

老化に伴う筋肉消耗を防ぐことが。

 

 

また、トリゴネリンで線虫は

より長生きになり、

 

老化マウスの筋肉は

収縮時の疲労が

少なくて済むように。

 

 

この研究によるとトリゴネリンは

サルコペニアやその他の老化病態に

有効かもしれず、

 

サルコペニアの予防や治療の効果を

臨床試験で検討する価値があるとしています3)。

※サルコペニア

老化に伴う筋肉の減少や筋力の低下

 

 

コーヒーでトリゴネリンは増やせる?

 

コーヒーを飲んでトリゴネリンが増えるなら

コーヒー好きには朗報ですが、

話はそう簡単ではないようです。

 

今回の試験の一環で調べられた高齢者186人の

血清トリゴネリン濃度は

 

カフェインやビタミンB3摂取レベル

と無関係でした。

 

また、トリゴネリン血清濃度と握力の関連は

カフェインやビタミンB3摂取による

影響を受けませんでした。

 

 

試験の被験者がコーヒーをあまり飲まない

中東地域(イラン)であったことが

トリゴネリン血清濃度とカフェイン摂取の関連

が認められなかったことの原因かもしれない

と研究チームは言っています。

 

 

トリゴネリンとコーヒーの関連は

まだ検討の余地があるようですが、

 

お隣の韓国での試験で

コーヒーをよく飲む人にサルコペニアが少ない

ことが示されています5)。

 

トリゴネリンの寄与のほどは定かではありませんが、

コーヒーを1日3杯以上飲む人は

1日1杯未満の人に比べてサルコペニアの有病率が

60%ほど低いという結果が得られています。

※サルコペニア

老化に伴う筋肉の減少や筋力の低下

 

【引用文献】

1)Membrez M, et al. Nat Metab. 2024 Mar 19. [Epub ahead of print]

2)Natural molecule found in coffee and human body increases NAD+ levels, improves muscle function during ageing / Eurekalert

3)Substance in coffee may improve muscle health in older age / Universities of Southampton

4)Migliavacca E, et al. Nat Metab. 2019;10:5808.

5)Chung H, et al. Korean J Fam Med. 2017;38:141-147.

 

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