小林製薬の「紅麹」、青かび混入が原因?

 

 

 

2024年3月22日、

小林製薬は

「紅麹原料(自社製造)の成分分析を行った結果、

 

一部の紅麹原料に当社の意図しない成分

が含まれている可能性が判明した」

と発表しました1)。

 

2024年3月27日時点の報道によると、

小林製薬の紅麹製品を摂取し、

腎疾患等を発症した患者の死亡が2件、

入院症例は106件となっています。

(3月29日現在、死亡が5件に)

 

 

紅麹は、カビ毒の1種である

「シトリニン」による健康障害が知られており、

10年前にはすでにヨーロッパで規制されています2~4)。

 

スイスでは2014年に、

紅麹を成分に含む食品の売買は

「違法」であると注意喚起されています。

 

 

紅麹は現在も着色料や発酵食品などに使用されており、

血清コレステロール値や

血圧を下げる機能が知られています。

 

 

しかし、紅麹が発酵した場合、

カビ毒である「シトリニン」が生成され、

加熱しても

腎障害につながる毒性が消えないため、

これをいかに制御するかが課題でした。

 

 

小林製薬も

過去ヨーロッパで取り沙汰された

紅麹の腎障害については、

当然認識していました。

 

 

 

次世代シークエンサーを使って

紅麹菌3種類の全ゲノム解析を行った結果、

日本で主に使われている

Monascus pilosus(モナスセス・ポロサス)に

カビ毒である「シトリニン」が生成できない

という論文が公開され5)、

 

今回自主回収に踏み切った製品にも

当然シトリニン産生株が用いられています。

 

 

カビ毒シトリニンは検出されなかった

今回、健康被害が懸念される小林製薬の5製品には、

精米を紅麹菌(Monascus pilosus)で発酵させ

滅菌乾燥させた食品が原材料として使用されていました。

 

 

小林製薬「紅麹」シリーズは

機能性表示食品です。

 

機能性関与成分は「米紅麹ポリケチド」

 

 

LDLコレステロールを下げる、とうたいます。

 

問題になったロットにおいても、

カビ毒シトリニン

が検出されませんでした

 

 

そのため科学的には、

製造中になんらかの原因でほかの物質が混入したり、

別のカビが混入増殖する、

 

というようなケースのほか、

紅麹菌自体の性質が変わり、

なんらかの物質を生成した可能性が考えられます。

 

 

3月29日のニュースで

青かび毒が検出された

と報道されました。

 

 

内閣府食品安全委員会なども、

乾燥や抽出、濃縮して毎日食べる

健康食品・サプリメントは

 

容易に多量を摂ってしまいやすく

健康を害するリスクが高まる、

 

として注意喚起していました。

 

 

ところが、

 

「天然だから」

「健康によいとして売っているから」

「医薬品に似ているから」

などのイメージにより、

 

消費者に安全性が高いと勘違いされがちです。

 

 

 

機能性表示食品という制度について、

さまざまな問題が指摘されています。

 

機能性表示食品は、

国による製品審査は行われていません。

 

 

特定保健用食品(トクホ)は、

製品ごとに国の審査があり、

 

安全性について

内閣府食品安全委員会が

食品健康影響評価を行っています。

 

 

一方、機能性表示食品は、

国が機能性や安全性、品質管理について

ガイドラインを示しており、

 

企業はそれに従い検証し

情報を消費者庁に届け出します。

 

 

『企業が自身の責任で機能性表示を行い販売し、

購入者自身が

消費者庁のホームページで確認して

購入摂取するかどうか判断する、

という制度です

 

 

日本の安全性チェックは著しく不足している

 

小林製薬に最初の症例報告があったのが1月11日であり、

2月1日までに計5例の症例の情報が寄せられた、

と同社が記者会見で説明しています。

 

それから3月15日までに

合わせて13人の報告があり

3月22日にやっと発表し消費者庁へも報告。

 

あまりにも遅すぎます。

 

 

機能性表示食品のガイドラインには、

健康被害に関する事項が定められており、

 

「万が一、健康被害が発生した際には、

急速に発生が拡大するおそれが考えられる。

 

そのため、入手した情報が不十分

であったとしても速やかに報告

することが適当である」

 

と記載されています。

 

今回の同社の対応は、

このガイドラインを大きく逸脱してます。

 

 

今、健康被害の訴えが続々、広がっています。

 

報告の2カ月の遅れが、

被害拡大を招き、

政府の対応の遅れが被害を増大させています。

 

 

アメリカでは

サプリ、健康食品を

食品、医薬品とは別に制度化しています。

 

アメリカ食品医薬品局(FDA)の文書は、

少なくとも25年にわたって

広く安全に食べられてきた、

ということを「食経験」としています。

 

さらに、安全な食経験があったとしても、

摂取頻度や期間、

摂取量が多くなったりする場合は、

 

動物への90日間投与試験や生殖・発達毒性、

1年間慢性毒性または2年間発がん性、体内動態など

を調べる試験の実施が求められています。

 

 

当然、OECDのテストガイドライン

に沿うように推奨されています。

 

 

 

EUも、1997年5月15日より前に、

EU域内で食経験がない

食品を新規食品(Novel Food)とみなして、

認可制度としています。

 

 

食べられてきたものでも、

抽出や濃縮などが行われている場合は

新規食品とみなされ、審査が必要。

 

EU域外で食べられてきた食品については、

少なくとも25年の食経験を求めています。

 

 

 

日本はそもそも、

機能性表示食品に限らず

一般の新規食品についても、

 

国の審査がなく、

安全性の確認や販売の開始が

企業の自主的な判断に任されています。

 

 

 

人々が食べ始めてもし問題が生じれば、

食品衛生法違反に問う、

という事後処理型の食品衛生行政です。

 

 

 

新規性が問われ、機能性を追求し、

摂取量が多くなりがちな健康食品である

「機能性表示食品制度」

においても、

 

欧米に比べて安全性の確認は

著しく不足しています。

 

 

 

健康食品・サプリメントを

購入される場合は

”メイドインジャパン”

は、残念ながら信用できない、

ことを肝に銘じることです。

 

【引用文献】

1)小林製薬:紅麹関連製品の使用中止のお願いと自主回収のお知らせ

2)内閣府食品安全委員会:スイス連邦食品安全獣医局(BLV)、紅麹を成分に含む食品の売買は違法と注意喚起

3)内閣府食品安全委員会:フランス食品環境労働衛生安全庁(ANSES)、紅麹を有効成分とするサプリメントを服用する前に必ず医師に相談するよう注意喚起

4)内閣府食品安全委員会:欧州連合(EU)、紅麹由来のサプリメント中のかび毒シトリニンの基準値を設定

5)Higa Y, et al. BMC Genomics. 2020 Oct 1;21(1):679.

 

【参考文献】