日銀による利上げとおかわり匂わせガイダンスによる「利上げショック」により、わが国の株式市場は深押ししたものの、極めて短時間でほぼ全戻ししたので、二番底の可能性を一旦脇に置けば、「コロナショック」と同様に単なる調整に毛が生えた程度の混乱で収束する見通しとなりました。企業業績が壊滅し、世界的に金融機能がマヒする懸念が漂っていた「リーマンショック」と比べれば、足の小指を箪笥の角にぶつけたくらいの可愛いらしい痛みだったという印象です。
本来、相場の経験値はこうした下げ相場でこそ磨かれ、そこでどれだけ残せるかが真の実力だと思います。が、こんなにド短期で戻すとなると、わざわざ狼狽する暇もなければ、まともに考えてリバランスする余裕もなく・・・指を咥えてただただ呆然としていたら、勝手にスルスル戻った(笑)というところかと思います。このような経験にこれといった価値はありません。
「コロナショック」や今回の「利上げショック」にしろ、ド短期で戻ったことから、アベノミクス以降の十数年来は大局的に右肩上がりという株神話は崩れておらず、上りのエスカレーター状態が継続することとなりました。「リーマンショック」の時は下りのエスカレーター状態が何年も続き、株をいじるだけで毎日金が減り、逆走して駆け上がり続けてなんとか現状維持・・・という有様だったので、同じショックでも真逆の状態です(しかも体力は有限のためいずれは力尽き、結局は下方向に引き摺られて終了となります)。
今回気を付けなくてはいけないのは、この「利上げショック」の捉え方を違えると、中長期的には足枷となる間違った経験になってしまうということです。暴落による含み損も単にじっと我慢してれば直に元に戻る・・・相場はそんなに生ぬるいものではありません。今回も時間を殆ど置かずにまた許されたのは、依然として大緩和状態で金がじゃぶじゃぶだからという前提があることを忘れてはいけません。
今回の「利上げショック」でひとつだけ良かったことがあるとすれば、この混乱の火消しのために、大緩和祭りの音楽を止めるまでの時間が少し延長されたことです。それでも日銀は市場から金を抜きたがっていることは明らかであり、緊張感を持って相場に臨むタイミングが少しずつ近付いているように感じます(おわり)。
*写真は伊勢に行った時の五十鈴川で撮ったものです。
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