【4443】Sansan(東証1部) NT
現在値 10,100円/100株 P/E --.- P/B 25.0 5月配当(無配) 株主優待なし
クラウド型名刺管理の法人向けサービス草分け。個人向けビジネスEightも展開。
配当基準日は5月末ですが、無配予想となっています。
Sansanは株主優待制度を導入していません。
業績は以下の通りとなります。
■2018年5月期 売上高 73.2億円、営業利益▲30.6億円 EPS▲168.4円
■2019年5月期 売上高 102億円、営業利益▲8.4億円 EPS▲40.4円
■2020年5月期 売上高 133億円、営業利益 7.5億円 EPS 11.0円
■2021年5月期 売上高 161億円、営業利益 7.3億円 EPS 5.9円
■2022年5月期 売上高 202億円、営業利益 4.5~8.0億円 EPS 7.2~12.8円 ce
□2021年11月中 売上高 92.0億円、営業利益 4.8億円 EPS 102.5円 四e
2021年5月期の売上高は前期比21.1%増の161億円、営業利益は同2.7%減の7.3億円となり、2割増収の一方で減益となりましたが、概ね予算線となりました。法人向けのSansanは同18.7%増、個人向けのEightは48.8%と堅調に推移し、ARRは22.6%増の161億円に成長しました。Sansanは新型肺炎禍で名刺交換機会自体は減少しているものの、営業人員強化により大手メーカーや中小企業の獲得が順調に進んだほか、解約率(OCC)も0.63%と低い水準を維持出来たため、想定通りの事業成長と確保したとみられます。他方、利益面については、人材採用強化と請求書受領サービスのBillOneのTVCM強化で広告宣伝費が30億円程に膨らみ、予算割れの微減益となっています。
進行期である2022年5月期予算はレンジで開示しており、売上高は25.0%~28.0%増の202~207億円、経常利益は▲38.9~8.6%の4.5~8.0億円を予想しており、増収率は加速する一方、連続減益公算が高い状況です。Sansanは契約件数の堅調増と導入初期の一括取込Feeや従量課金が伸長する見込みであり、注力中のBillOneについても足許では契約件数が飛躍的に増加していることから、向こう1年で契約件数を239→1,000件まで積み増す方針です。他方、利益面については、各事業の当面の成長蓋然性が高いことから、種蒔きのため積極的な人材採用とTVCMに代表される広告費を積極的に投下する方針(上限40億円)のため、表記のような減益可能性の高い予算組みとしています。
当社は中期的な売上高成長率を年率3割に定めていましたが、事業規模がスケールしてきたため、足許の成長モメンタムはやや鈍化してきています。今後の成長戦略については、Sansanが名刺管理市場で83%もの支配的シェアを握っている一方、まだ従業者ベースTAMの精々2~3%に留まることから、少なくとも数十倍の開拓余地が残る状況です。また、契約済企業の他部署やグループ会社への利用範囲拡大により効率的なユーザ増が期待されるため、実際のARPAもこの2年で156→162→170千円、へと順調な増加が確認されることから、これら単価効果や低いOCC(0.63%)も相俟って、当面は年率2割を超える成長が可能と考えています。
注力中のBillOneについては、電子インボイスではオービックやPCA、マネーフォワードやラクスらとの競合激化が予想されるものの、当社の場合はセンターでのありとあらゆる種類の請求書を一括で受取する代行というアウトソーシング要素があるユニークなサービスとなっています。然しながら、前述のとおり莫大な宣伝広告費を投じている最中であるほか、目下ターゲットとしている中小企業に格安の導入費用(無料)を売りに営業推進しているため、当面は赤字垂れ流しが予想されます。
他方、最近のトピックとしては本年6月にFringe81(6550、現社名はUnipos)と資本業務提携を実施し、既保有持分(3.07%)にくわえ追加で第三者割当増資を引き受け、同社のA種優先株を19億円分取得しています。従業員評価サービスのUniposは大企業を中心に高い受注残が積み上がっているものの、同社の広告代理事業の不振等によりマーケティング費用がかけられず、成長幅が限定的でしたが、今回の三社割で当社及び同時引受のDBJから総額38億円を調達し、再成長を図る目論見です。なおDBJ割当の優先株19億円分は当社が買取優先権を有しており、業績が回復した折には買取と普通株転換で同社を連結子会社に収めるスキームとなっています。
以上から、当面はSansanを軸に年率25%程度のトップライン成長が予想されるものの、BillOneや連結前のFringe81の貢献はまだまだ先であり、先行投資の増大から利益水準は均衡圏止まりが予想され、初配もかなり先になろうかと思います。
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